「オントロジー・プロジェクト」ヘルダー・ギマリャエス Ontology Project by Helder Guimaraes

ヘルダー・ギマリャエスのオントロジー・プロジェクト

ヘルダー・ギマリャエスの「オントロジー・プロジェクト」という手品商品を紹介いたします。

 

このマジックは今年日本で開催されたヘルダー・ギマリャエス師とデレック・デルガウディオ師のジョイントレクチャーでも演じられていたそうで、彼の最新作となるのでしょう。

 

商品としてのクレジットにはデレック・デルガウディオの名前は入っていませんが、謝辞や前書きに二人のセッションの中からアイデアが生まれたということが書かれています。

 

オントロジー・プロジェクトとは

オントロジー・プロジェクトは、ギャフカード(ギミックカード)のデックと 解説書のセットになっています。

 

ギミックカードはちょっと特殊なもので、一般的にギャフカードとして市販されているDBカードやDFカードを買えば揃うというようなものではありません。

また、特殊なギミックカードをセットにしたデックとしては、アソートメントデックやFAKOデックといった詰め合わせデックがありますが、オントロジー・プロジェクトのデックはそれらとも異なります。

 

まず、オントロジー・プロジェクトのデックは、これ単体でマジックが出来るというデックではありません。

このデックそのものはあくまでギミックカードのみであり、この中から必要なカードを取り出して、ノーマルデックと組み合わせて演技用のセットを自分で作るようになっています。

その点が、インビジブルデックやブレインウェーブデックに代表されるような、単体のトリックデックとは異なる点です。

 

ここで解説されているマジックには、27枚ものギミックカードが必要なものもありますし、1枚しか使わないものも含まれています。

それぞれ全く異なる4つのマジックで使うための特別なギミックカードが合わさって、たまたま1デック分の枚数になっているということです。

 

オントロジー・プロジェクトで出来る手品

それでは、解説されている4つのマジックの概略を紹介しましょう。

バリエーションを数えれば、全部で5つになります。

Deepest Sympathy

ダイ・バーノンの師匠、ネイト・ライプチヒがレパートリーとしたことで有名な「シンパセティック・サーティン」というカードマジックのバリエーションです。

 

新品状態のデックからスペードとクラブのカードをそれぞれ13枚ずつ全部取り出し、スペードのほうはA~Kまで揃った状態で、グラスに挿しておきます。

クラブの13枚は客に渡して自由に切り混ぜてもらい、バラバラに混ざっていることを確認した後で別のグラスに挿します。

グラスに入れたままのスペードの上から一瞬ハンカチで覆って見せると、全てのカードが観客が混ぜたパケットと同じ順番に並んでいるのです。

 

Flicking FingersのDVD”The Movie”で、 Jorg Alexander氏がこの現象の素晴らしい演技を見せていたのが印象に残っています。

グラスを使って立体的に見せることの出来るカードマジックですので、クロースアップからサロン、ステージにまで使えるマジックだと思います。

グラスに入れたままで、デックに手を触れずにカードを変化させるフラッシュ・カード・チェンジの美しさは格別です。

 

Triumphant

ダイ・バーノンの傑作、トライアンフにダブルクライマックスを付加した作品です。

 

見た目はまったく普通のトライアンフと同じような感じで進行し、観客の選んだカード以外が裏向きに揃うという結末まで普通に示されます。

そこでトリックが終わったと観客が思った次の瞬間に、さらに驚くべきクライマックスがあります。

 

スティーブ・ビームのOpening Stabのようなクライマックスです。特殊なギミックカードによって、普通のトライアンフと同じに見えるハンドリングを可能にしています。そういう意味ではマジシャンキラーなトリックかも知れません。

 

この作品、解説書に載っているマジックの中では一番準備が大変だと思います。

セットに含まれているギャフカードを使うだけでなく、自分で少々工作をする必要があります(といっても大したことは無いですが)。

このクライマックスを実現するために、そこまでするか?とも思いますが、そこはやはり「Effect is Everithing」ということなのでしょう。

 

Force of Nature

これのコンセプトは、全くフェアに見え、表を改めることも可能なフォーシングデックということです。

 

解説書では単純な手順が2例示されています。

最初の手順では、まずデックをリフルして自由に1枚のカードを覚えさせてから、観客自身に1枚ずつテーブルに配ってもらい、好きなところでストップしてもらうと、それが選ばれたカードになっています。

もうひとつの手順では、観客自身が1枚ずつテーブルに配って自由に止めたところのカードが、あらかじめ予言されているというものです。

いずれの手順でも、最後はデック全体をスプレッドして同じカードが無いことを確かめることが出来ます。

 

これらの手順はあくまで一例であり、基本的には巧妙なフォーシングデックですから、他の色々な手品に自分で応用できるでしょう。

 

Cart Before the Horse

これはブラザー・ジョン・ハーマンの「サインド・カード」の現象の手品です。

 

あらかじめ2枚のジョーカーの間に表を見せないで1枚のカードを挟んでおきます。その後観客に自由にカードを選んでもらい、サインをしてもらいます。そして2枚のジョーカーの間に挟んでおいたカードを見てみると、それがサインのある観客のカードなのです。

 

ハーマンの原案とは全く異なるメソッドなので、原案を知っているマジシャンでも不思議に思うでしょう。

また、この作品の場合はこれ単独で演じるよりも、何か他のカードマジックのクライマックスとして演じるのが良いです。解説書でもそのように書かれています。

 

オントロジー・プロジェクトのコンセプト

全体を通して感じることは、「エフェクトが全て」ということですね。

 

ヘルダー・ギマリャエスはご存知の通り、カードマジックにおいてはFISMで1位を取った実力者で、とくにその技巧は超一流と認められたマジシャンです。

その彼にして、テクニックだけでは到達できないマジックの領域があるという思いから、ギミックにもテクニックにも制限を設けずに、ただただ見た目のエフェクトを重視して作り上げた作品だと感じました。

 

実際、そのギミックの度合いは半端なものではなく、手順によってはデックの半分以上がギミックカードだったりしますし、それだけではなくさらに自分で加工の必要な別のギミックも併用しているものがあります。

技法的なピュアリズムの見方からすれば、ちょっと眉をひそめたくなるような構成とも言えるでしょう。

 

普通ギミックというのはテクニックの代用となったり、その度合いを軽減する方向性に用いられることが多いのですが、オントロジー・プロジェクトではそういうことはありません。

遠慮なくギミックを使いながら、さらにパーフェクトファローやパームといった、それほど簡単とは言えない技法も併用しています。

 

しかしたまにはこういうマジックも良いでしょう。

どの作品もクロースアップショーのトリに使えるだけの強力でクリーンなマジックだと思います。

解説書の冒頭には、これらの作品をYoutubeなどのネット動画などで演技することを禁じるとの文言があります。

それだけ、彼の自信作でもあるのでしょうね。

 

ギミックを使うマジックにはある種の甘美な背徳感がありますが、オントロジー・プロジェクトの作品はそれを最大限に味わわせてくれるかも知れません。機会があれば是非実演してみようと思います。楽しみです。

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  • @KotouchiS また、件の見せ方自体を"Freeman Display"と呼ぶようでもありますね。 https://t.co/LvGvhyhdKo フリーマンのムーブ自体の正確な形が分からず、メンドーサのノート自体も持っていませんので、詳しいことは分かりませんが……
    about 5日 ago
  • @KotouchiS 調べてみると、確かにフリーマンという情報もありますね。 MagicCafeの下記ページでは、フリーマンの技法だけども、彼は発表しなかったとあります。 https://t.co/AhvfATlMkP
    about 5日 ago
  • @rouis_ymgs @KotouchiS @Seven_Magica ここの動画の冒頭で行われているプロダクションがそうではないでしょうか。 https://t.co/83hzgvDaf7
    about 5日 ago

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