【書籍紹介】「石田天海賞受賞記念 沢浩作品集 」加藤英夫著:石田天海賞委員会配本

沢浩作品集

沢浩氏が1973年に石田天海賞を受賞されたときに出版された、記念作品集です。

 

沢さんは1941年生まれなので、1973年といえば32歳ですね。
もうこの年齢までには、ダイ・バーノンやチャーリー・ミラー相手に真珠物語やワン・ツー・フォーその他のオリジナルマジックを披露され、そのクリエイターとしての名声は世界的になっていたのですから、すごい方です。

 

Geniiその他奇術雑誌に特集記事が組まれたり、加藤英夫氏の「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」に単発の作品が掲載されたりという例はありますが、沢浩氏の作品をまとまった形で集めた書籍は、わたしの知る限りでは2冊です。
ひとつはリチャード・カウフマン著「Sawa’s Library of Magic」で、もうひとつがこの「石田天海賞受賞記念 沢浩作品集」です。
(もちろん、テンヨーから出た「ブルークリスタルの研究」など、冊子程度の印刷物は他にいくつかあります。)

 

さらにもうすぐ、東京堂出版さんから宮中桂煥氏の著で「澤浩の奇術」が出版されるということで、これを加えれば3冊となりますね。
余談ですが、「澤浩の奇術」は発売が約1ヶ月延びて来年1月半ばの予定となっているようです。

 

「沢浩作品集」の掲載作品

さて、掲載作品のあらましを紹介いたしましょう。
手順としての作品は全部で9つ、それに加えて、リンキングリングの部分的な手順が紹介されています。

沢浩作品集 目次

 

作品1 なみだ

これは”Library of Magic”にも”Cry Baby”と題されて掲載されている作品です。
奇術としてのプロットそのものは、「マジシャンvsギャンブラー」のような、サッカートリックタイプの手順です。
しかしこのマジックの最も面白い特徴は、トリックが失敗した(ように見える)ときに、マジシャンが取る行動にあります。
この手順では、失敗に落胆したマジシャンが、その場でいきなり泣き出してしまうのです。
そしてその「涙」を集めて大きな水滴を作り、それを使って最終的にはマジックが成功します。

 

このマジックは面白いのですが、演技の最中に泣くという、ある意味マジシャンを超えた演技が要求されるのが難しいところですね。
それと、最後に出現させる「涙」もなかなか手に入りにくいです。
沢氏はシャンデリアの部品から入手されたとのことですが、なかなかそういう店を回ってもぴったりのモノは見つかりません。
以前、透明アクリルを削って自作しようとしたこともありましたが、途中で挫折しました^^;
魔法都市案内のマジェイアさんは、ベネチアン・グラスの職人に頼んで作ってもらわれたようですね。

 

しかし何とか道具をそろえて、泣く演技も練習して、いつか挑戦してみたいマジックではあります。

 

作品2 トリオ・ロス・ロープス

この作品は”Library of Magic”に同じ題名で載っています。
3本の同じ長さのロープを見せて、空中に放り投げると結ばれてしまい、さらに結び目が消えて1本のロープになってしまいます。

 

プロフェッサーズ・ナイトメアでも3本のロープが1本になる現象の手順がありますが、最終的には本当に1本になるわけではないので、続けて長いロープのマジックには移りにくいです。
しかしトリオ・ロス・ロープスでは最終的に完全な長い1本のロープが残るので、続けて長いロープを使った好きな手順に入れますね。高木重朗氏の”Do as I Do Rope Routine”とか。

 

余談ですが、高木重朗氏の子供向け入門書「マジック入門」に、これと同じような感じのロープマジックが載っていたようななかったような記憶が・・・?
ちょっと本がないので確認は出来ないのですが、高木氏が沢氏の作品を本に載せるというのも、あながちない話ではないですよね。

 

作品3 モーゼ

これも”Library of Magic”掲載作品。
以前コメントの中で、これら2冊の内容があまりかぶっていない、みたいなことを言いましたが、よく見ると結構かぶっていますね^^;

 

予言のカードマジックなのですが、たった1枚の(分割された)カードが、4人の観客が選んだカードを予言している、という現象。
特殊なデザインのカードを用いて、パズルのようにして4枚のカードを表現してゆきます。

 

「沢浩作品集」では解説のみですが、”Library of Magic”にはこれを演じるためのカードが付録として付いています。

 

作品4 ダイスマン

箱に入って見ることができないサイコロの目を透視する、というマジック。
マジシャンが箱を振っている最中に小細工をするような、よくあるマジックではなく、ちょっと他に見たことのないような変わった原理の仕掛けが使われています。

 

この作品では歯科医が使う専門的な材料が使われています。
やはりトランプやコインだけでなく、身の回りにあるあらゆる物が沢さんの発想の源泉である好例なのでしょうね。
もちろん、実際にこの作品に使用するものは、歯科医の材料でないと不可というわけではありません。

 

この作品はテンヨーより「ディズニーワールド」として題材を変えて発売されていたことがあるようです。

 

作品5 すれちがい

シンプルなコインのトランスポジション現象。銀貨と銅貨が入れ替わります。

 

シンプルではありますが、沢氏のオリジナリティが十分に発揮された作品です。
Lappingをそのままチェンジに使うという、ユニークな技法をベースにした小品。

 

なお、ここで使われる技法はDavid Rothの”Digital Copper and Silver”に非常に類似しているように思えますが、両者の関係を示す資料は見つけられませんでした。

 

作品6 ゲリ・ユラー

題名はもちろんユリ・ゲラーをもじったものです。
フォーク曲げならぬ、フォークちぎり。
硬いフォークの頭を手でちぎり、それをさらに元に戻す、という現象です。

 

これは結構有名で、演じている人も何人か見たことがあります。
サナダ・ギミックの解説書?か何かにも、このアイデアのバリエーションが載っていたこともありました。

 

作品7 不法建築

これも”Library of Magic”に、”Bad Construction”と題して掲載されています。

 

現象としては、4枚のカードが別の4枚のカードに変化する、というよくありそうなマジックです。
しかしここで用いられる演出というかストーリーが面白いもので、それが題名の由来です。

 

カードを立てたものを「建築物」に見立てて、カードの数字を、建築物にかける金額であると説明します。
しっかりお金をかけて作ったと思ったビルが、ほんの弱い風が吹いただけでバタバタと倒壊してしまう・・・その理由は?
というような筋書きです。

 

マジックそのものは単純で、お話の面白さがほとんどのマジックですが、すぐ終わる気軽な作品でいいですね。

 

作品8 目の検査

スポンジボールのマジックです。

 

微妙に大きさの異なる2個のスポンジボールを示し、目の検査をしようと言います。
それを使って観客の目をテストし、観客が「小さい」といったほうはバカみたいに大きくなり、「大きい」といったほうは豆粒のように変化し、観客の言った逆の結果となります。

 

ユーモラスで面白いマジックです。
コインマジックでもこの現象を見せるものがありますね。

 

作品9 ワン・ツー・フォー

沢浩氏を有名たらしめた作品のひとつです。

 

題名のとおり、1枚のコインが2枚に、2枚が4枚に増加するのですが、それが金額的に等価な両替になっているのが面白いところです。
最初に示すのが1ドルコイン、それが分裂して50セントコイン(ハーフダラー)2枚に、さらに分裂して25セント(クウォーター)2枚になる、という筋書き。

 

普通コインの分裂現象では、元のコインと同種のコインを分裂させるというのが多いですが、この作品では分裂と同時に変化も起こっているということになります。
ここが、このマジックを技術的に難しくする点ですね。

 

沢氏のこの作品の発表後、世界中のマジシャンがバリエーションを発表しています。
ちょっと思い出しただけでも、ソル・ストーン、ポール・ガートナー、マイケル・ギャローといった人々の作品があります。
その中でも、沢氏のオリジナルはいまだに最もクリーンで、最も難しい手順のひとつだと思います。
なお、沢氏自身も、複数のバリエーションを発表されており、そのひとつはSteavens Magic Emporiumの沢浩氏のDVDで見ることが出来ます。

この作品については、別記事でも取り上げました。ワン・ツー・フォーの記事をご参照ください。

 

Few Parts of “The Linking Ring Fantasy”

リンキングリングの断片的な手順が4種紹介されています。

 

使用するリングの構成上、いわゆるシンフォニー・リングタイプの用具に適する手順です。
現象としては、改めてもらったトリプルリングを分離する方法、5本のバラバラのリングを一気につなぐ方法、リングの階段(ヤコブの梯子などと呼ばれる現象のバリエーション)、そしてバーノンのシンフォニー・オブ・リンキングリングの、造形を見せる部分のバリエーションです。

 

全体的に、シンフォニー・オブ・リンキングリングに適用しやすいものです。
わたし自身も、自ら演じる手順はシンフォニー・オブ・リンキングリングをベースにして、これら沢氏の手法もほとんど取り入れています。

 

紹介されている奇術家

この本には、沢氏が懇意にされた複数の奇術家が、コラム形式で紹介されています。

順番に挙げると、近藤博、神谷正吾、加藤英夫、ジャック武田、松山光伸、安藤仁巳、久野四方治の各氏。

 

ジャック武田氏は動物マジックの第一人者として、わたしが子供の頃はテレビでもよく見ましたが、最近お名前を聞きませんね。
今はどうされているのでしょうか。

 

神谷正吾氏は、沢浩氏を奇術の道に導いた張本人とされており、その演技も沢氏によって絶賛されています。
それにしては、現在のマジック界では神谷氏の名前を聞かない、どうされているのかな?と思っていました。
最近、ネットサーフィン中にひょんなことで、その神谷氏のサイトを発見しました。
(2013年11月11日追記:上記サイトは歯科医院のサイトでしたので、現在は閉鎖されたようです。)

 

もちろんアマチュアではありますが、マジックはしっかり続けられているようですね。
リンク先のサイトには沢浩氏に関することも書かれていました。
今年の8月に、経営されていた歯科医院を閉院されたとのことですが、ご高齢が理由でしょうか。
いつかどこかで機会があれば、お話を伺ったりしたいものです。

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    about 3週間 ago
  • @KotouchiS また、件の見せ方自体を"Freeman Display"と呼ぶようでもありますね。 https://t.co/LvGvhyhdKo フリーマンのムーブ自体の正確な形が分からず、メンドーサのノート自体も持っていませんので、詳しいことは分かりませんが……
    about 1か月 ago
  • @KotouchiS 調べてみると、確かにフリーマンという情報もありますね。 MagicCafeの下記ページでは、フリーマンの技法だけども、彼は発表しなかったとあります。 https://t.co/AhvfATlMkP
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