「テンカイ・ペニーズ」 石田天海 “Tenkai Pennies” Tenkai Ishida 名人石田天海による佳品コイントリック

奇術の歴史上、数多くのマジシャンによる数多くの作品の中で、技法や奇術に考案者の名前が冠されるものがあります。
その理由としては、技法の場合はその人が考案した事実、あるいはその人が多用したことによって有名になった、などの例が見られます。

 

それに対して、手順としてのマジック作品にマジシャンの名前が冠されるというのは、技法に名前が付けられるよりは稀であるように思えます。
この場合は単にその人が考えたということを示すだけの意図ではないでしょう。
そのマジシャンが最も気に入っていた自信作であったり、他の人から見てそのマジシャンのシグネチュア・ピースであったり。
いずれにしても、そのマジシャンの作品の中でも特別な地位を占めるに値すると見られた作品が、その人の名を冠することが多いのではないでしょうか。

 

カードマジックの世界では、例えばヘンリー・クライストのファビュラス・4エース・ルーティン、ドクター・ダレイのラストトリック(これは、”最後の”という点が特別視されているようですが)など。
コインマジックであれば、バートラムズ・ベストなどがそうでしょうか。

 

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介の「テンカイ・ペニーズ」は、マジック手順にマジシャン名が付けられた作品としては、恐らく最もよく知られたもののひとつでしょう。
「テンカイ」とはもちろん、日本の生んだ奇術の世界的巨匠、石田天海師のことです。

 

石田天海師は日本でマジシャンとしてのキャリアを始め、若い頃にアメリカに渡って30年以上のキャリアを経て、欧米の近代マジック史に大きな足跡を残した人です。
ルポールやダイ・バーノンといった巨匠達とも交流し、テンカイ・パームやテンカイ・ペニーズを始めとして、技法やマジック名にも数多く名を残しています。

 

テンカイ・ペニーズとは

それでは、テンカイ・ペニーズの動画を作成しましたので、よろしければご覧ください。

 

>>動画リンク<<

 

奇術としては、手から手へコインが移動するだけの、小品トリックですね。

 

ペニーとはこの場合イングリッシュペニーとは違って、アメリカの1セント銅貨のことです。
このコインは1円玉程度の小さなコインで、使う技法の都合上からもこのぐらいのコインが適しています。
日本円なら100円玉以下ぐらいのサイズが良いでしょう。
まあ、ハーフダラーぐらいでもやってやれないことはないですけどね。
上の動画では25セント銀貨(クウォーター)を使っています。

 

これはいわば手のひらで演じるHan Ping Chienとも言うべきもので、完全に手の中で完結するため、スタンドアップの演技に向いています。
また、どちらかといえば近距離で客とマジシャンが同じ目線で見下ろすようなシチュエーションに適しているので、ショーアップされた場よりはウォークアラウンドやテーブルホッピングなどの演技に良い気がします。

 

なお、本当の原案ではそれぞれのコインを示す際に、伸ばした人差し指1本で押し出してゆくような動作となっているようです。
しかし上の動画では、指先でつまんだ状態で先端にまで持ってゆき、そこで裏返す動作を入れています。
この動きは元々スティーブ・フリーマンのアイデアとされており、デビッド・ロスなど多くのマジシャンの演技に取り入れられています。

 

テンカイ・ペニーズのバリエーション

まずテンカイ・ペニーズはハン・ピン・チェンの代替技法としての性格もあるため、他のコインマジックの一部として取り入れられている例もあります。
一例としては、前回紹介しました沢浩氏の”One Dollar is One Dollar“がありますね。
ラリー・ジェニングスはテンカイ・ペニーズの手法を用いた、コインズ・アクロスやコイン変化の手順を発表しています。
クリス・ケナーにもいくつかこの技法を効果的に使った作品があります。

 

また、テンカイ・ペニーズの手法自体のバリエーションとしては、デビッド・ロスによって発表された”Deep Palm Tenkai Pennies”があります。
この方法は角度にも強くやりやすいため、テンカイ・ペニーズといえばこちらの方法を演じている人のほうが多いような印象があります。
ロスの方法のほうが、原案に比べると大きいコインでも問題なく出来ると思います。

 

近年Youtube動画を通じて世界にブレイクした日本のコインマン、ポン太theスミス氏の作品にも、テンカイ・ペニーズのバリエーションがあります。
ニュー天海ペニーズ」と名づけられたポン太氏の手法は、原案とは異なりワンダラーのような大型のコインで演ずるのに適したもので、Homer Liwagのアイデアが取り入れられています。

 

バリエーションというよりはテンカイ・ペニーズからインスピレーションを得た派生作品とでもいうべきものとして、ハーブ・ザローの”Penny and Nickel Transposition”があります。
Transpositionと言いつつ、実際の現象はテンカイ・ペニーズと同じく移動現象です。
テンカイ・ペニーズと似たハンドリングでありながら、異なる種類のコインを使用して演じられる点が面白い作品です。

 

テンカイ・ペニーズの個人的な思い出

小学生の頃から小学館の入門百科シリーズ「マジック入門」を始めとした児童向け教本でマジックをやっていた私ですが、大人向けの本格的な解説書に初めて触れたのは、確か中学2年ぐらいのときでした。
それが、二川滋夫先生の「奇術入門シリーズ コインマジック」だったのです。

 

この本の中で最初に練習したのが、なぜかテンカイ・ペニーズでした。
この本の最初のマジックでも最後のマジックでもないんですけどね。
なぜでしょうか。
今となってはよく覚えていませんが、恐らくは考案者が日本が生んだ世界的なマジシャンである、みたいなところに惹かれたのかも知れません。

 

そうやって最初に手をつけたものの、中学高校のうちには、ついぞこの奇術をモノにすることは出来ませんでした。
誰か上手い人の演技を直接見る機会でもあれば良かったのかも知れませんけどね。
高校卒業の頃までは、周囲にマジックをやる同レベルの仲間は誰もいませんでしたので・・・

 

いつしか私の中で記憶の片隅に追いやられていたテンカイ・ペニーズでしたが、再びこれに注目したのは沢さんの”A dollar is Always a Dollar”を練習し始めてからだったと思います。
しかし何年練習しても自分で完成したとは思えない、奥の深い奇術ですね。

 

テンカイ・ペニーズの解説資料等

原案を解説した日本語書籍としては、「コインマジック事典」と「奇術入門シリーズ コインマジック」があります。
「コインマジック事典」には、派生作品として言及したザローの”Penny and Nickel Transposition”も載っています。

 

デビッド・ロスの”Deep Palm Tenkai Pennies”は、リチャード・カウフマン著”Expert Coin Magic”に解説されています。

 

映像では、原案の演技・解説についてはダローのDVD”Fooler Dooler vol.3″を挙げておきたいと思います。
また、演技のみですがロス・バートラムのDVD「レジェンダリー・マジック」に収録されているテンカイ・ペニーズは絶品です。
一度ご覧になることをお勧めします。

 

デビッド・ロスの”Deep Palm Tenkai Pennies”は、彼のDVD「エキスパート・コイン・マジック・メイド・イージー」3巻等に収録されています。

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  • 沖縄で結構な地震が!めずらしい…
    about 5日 ago
  • 「電話はかけてこないで」はあちゅうが考える新マナー Yahoo!ニュース https://t.co/CcOALnkhVh #Yahooニュース →電話のくだりは全く同感である。「確実に連絡が取れるように」と言って電話番号を求められることがあるが、私にとってはメールのほうが確実だ。
    about 6日 ago
  • これだけテレビやモニター技術が発達しているが、ベゼル幅ゼロとか折りたたみ可能ディスプレイというのは、まだまだ実現できないものなのかな。
    about 6日 ago

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