「壮麗なロイヤル・フラッシュ」 デレック・ディングル “Regal Royal Flush” Derek Dingle

regalroyalflush

「どこにもあってどこにもないカード」はカード奇術の古典中の古典のひとつです。

 

英語では”Everywhere and Nowhere”といい、上の名称はこれを無理やり日本語に訳したものですが、訳さずにそのままエヴリウェア・アンド・ノーウェアなどと呼ばれることもあります。

 

当サイトの名称である「奇術の詩の子供たち」というのは19世紀カードマジックの巨匠ヨハン・N・ホフジンサーの言葉ですが、このホフジンサーの作品として最も有名なプロットのひとつが、”Everywhere and Nowhere”です。

 

“Everywhere and Nowhere”の原案や、それに近い流れのクラシカルな手順は、現代ではあまり演じられてはいないように思えます。
やはり古典的な他のカードマジック、例えばジェネラル・カードやレディーズ・ルッキングラスなどと同様、そのままでは少し時代の感覚に合わない面もありますし、技術や演技構成的に難しいという理由もあるでしょう。

 

しかし”Everywhere and Nowhere”の基本コンセプトはカード奇術として非常に魅力的なものであることは間違いありません。
構成をコンパクトにしたものや、他の奇術プロットと組み合わせたものなど、ホフジンサーの植えた樹からは数多くの枝や葉が伸び広がっています。

 

今回ご紹介の、デレック・ディングルによる「壮麗なロイヤル・フラッシュ」は、”Everywhere and Nowhere”から広がったカードマジックの、そうした現代的な翻案のひとつです。

 

「壮麗なロイヤル・フラッシュ」”Regal Royal Flush”

それでは、まずはよろしければ動画の演技をご覧ください。

 

>>動画リンク<<

 

作品名にロイヤル・フラッシュと付いていますが、動画の演技ではロイヤルフラッシュは出てきていません。
これは、動画では私が気に入って演じているバリエーション手順を演じたからです。

 

デレック・ディングルの原案では、最後に変化した4枚と、元々選ばれた1枚を合わせて、5枚でスペードのロイヤルストレートフラッシュが完成する、という形になっています。
それで「壮麗なロイヤルフラッシュ」という題名なわけですね。

 

最後に4Aが出現するクライマックス、そしてデックをコピーマシンに見立てて、次々と客のカードの複製を作ってゆくという演出は、アール・ネルソンがテレビで演じていたものです。
古いアメリカのマジック番組で、日本でも吹き替えで放送していた「マジック・マジック」という番組があります。
この番組には若き日のダローやジョン・カーニー、そしてブルース・サーボンやラリー・ジェニングスといった巨匠奇術家も出演していました。
クロースアップだけでなくステーマジックなどもバランスよく配分された、上質なマジック番組でした。

 

アール・ネルソンはクロースアップマジックのテクニックに定評のあるアメリカのマジシャンで、彼がマジック・マジックの番組で演じていたのが上の動画のような演出であったというわけです。
これがどこかに発表されているのかどうかは分かりません。彼の代表的なカードマジック作品集である「Variations」には載っていませんでした。
手順のハンドリング自体はほぼディングルそのままで、演出とクライマックスのカードが異なるだけですから、バリエーションというほどでもないということかも知れません。

 

ロイヤルストレートフラッシュは確かに壮麗ですが、日本ではポーカーがあまり一般的ではありませんし、ロイヤルフラッシュが最強の役であるというのも、まだまだ一般常識とはなっているとは思えません。
最初からポーカーの手順を演じているのならともかく、それまでの流れと関係なくいきなりロイヤルフラッシュを出現させても、クライマックスとしてのカタルシスが得られにくいでしょう。
少なくとも日本で演じるには、アール・ネルソンのように4エースの出現が良いと思っています。

 

“Everywhere and Nowhere”と”Quick Three Way”

“Everywhere and Nowhere”のプロットはなかなか一言では言い表しにくいものです。
題名の語義どおり、「どこにでもある」と「どこにも無い」の2つのフェーズに大きく分かれます。

 

「どこにでもある」すなわち、適当に取り出した複数のカードが全部客のカードであるフェーズ。
そして、「どこにも無い」つまり、つい先ほど全部選んだカードであるように思われた複数のカードが、いずれも関係ない別のカードである、という現象。

 

言ってしまえばカード当てと変化現象を組み合わせたプロットです。
しかし適当に選んだはずのカードが何枚もある、という現象は、単なる変化現象とはまた異なる独特の味わいを生み出します。
ただし、常識的にはあまりにもありえない現象なので、演じ方によっては破綻する危険性も無いではありませんが。

 

ホフジンサーの原案からして基本的にこの構成ですが、これを現代的にパケットトリック的な扱いで構成したのが、エドワード・マーローの”Quick Three Way“です。
“Quick Three Way”はカードマジック事典にも載っていますので、近いうちに当サイトのトピックとして取り上げたいと思っています。

 

扱うカードの枚数は異なりますが、手順構成的には今回紹介の「壮麗なロイヤルフラッシュ」は、この”Quick Three Way”の流れに属する手順と言えるでしょう。
この作品ではデックから1枚ずつカードを取り出してくる段階で、それぞれが全て客のカードであることを見せている点が、この種の他の作品とは異なる特徴です。

 

「壮麗なロイヤル・フラッシュ」を解説した文献等

この作品はリチャード・カウフマン著「デレック・ディングル カードマジック」(原題:Complete Works of Derek Dingle)に解説されています。

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  • @you_you_1 @ShinanoCraft Too Perfect Theoryですかね。これは若干違うようなw
    about 4週間 ago
  • @ShinanoCraft @you_you_1 わたしもその台無しで出来る?って言いたいですw
    about 4週間 ago
  • https://t.co/RKdQJ1Uskq 見てみました。これは確かに全然分からん。最初のほうはまだしも、触れずに一瞬にしてリバースとか、通常の手法では解決法が思いつかないですね。
    about 4週間 ago

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