「エイペックス・エーセス」 フランク・ガルシア “Apex Aces” Frank Garcia

Apex Aces

韻を踏んだような響きが面白い作品名のカードマジック、エイペックス・エーセス。エイベックスではありません、エイペックスです。
このマジックそのものはかなりポピュラーで、演じている人も多いと思うのですが、意外とこの名前が知られていない手品でもあります。バリエーションが多いからという理由もありそうです。

エイペックス”Apex”とは、尖ったもの、円錐や山などの頂点、てっぺんを意味する言葉です。原典の手順ではこの言葉も演出として出てきます。
カードマジック事典」掲載手順です。

なお、便宜上、この作品のクレジットをフランク・ガルシアとして表題を書きましたが、実際にはこれははっきりしないという見方もあります。
フランク・ガルシアは20世紀の奇術に大きな足跡を残した人物ですが、作品のクレジットをはっきりせず、他人の作品を自分名義で発表したりといったこともあった人です。
この作品が発表された「Close-Up Card Magic」はハリー・ロレインの著ですが、そこでは「フランク・ガルシアが彼の手順の発表を許可してくれた」と書かれています。「カードマジック事典」でも同じく、フランク・ガルシア名義で紹介されています。
本記事でも、上記に倣ってフランク・ガルシア名義として紹介することとします。

 

エイペックス・エーセス

では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

>>動画リンク<<

4枚のエースが1枚ずつ消えてゆく方法論は、単純にして効果的、さらに手法的な自由度も高いといった具合で、理想的な古典の風格を備えています。
この動画ではあまり変わったことはせず、出来るだけ原典の解説通りの再現を試みてみました。ただ、3枚目のAが消えた後にデックをファンにして改めるよう指示があるのですが、その部分だけうっかり忘れています^^;

それから、本記事は「カードマジック事典動画」のカテゴリにも入れているわけですが、その点でひとつお断りしておくことがあります。それは、この動画の手順は「カードマジック事典」掲載の手順どおりではないということです。
正確に言えば、「カードマジック事典」掲載の手順は、元々発表された原典手順の前半部分のみで構成したものです。それに対して、私の動画では元々の後半も含めたフル手順の形で演じています。

「カードマジック事典」掲載手順のみならず、この作品を演じているほとんどの人が、この後半部分を切り捨て、あるいは変更して演じている印象です。実際、今回の動画を作るために原典の手順を読んで再現してみたわけですが、これはエイペックス・エーセスとしては今まで全く見たことのない手順でした。

読んで、実演してみた感想ですが、確かにこの後半部分は結構複雑でマニアックで、省きたくなるのも無理からぬことかな、という印象です。
前半部分がすっきりと単純で、マジシャンの仕事も少ないのに対して、後半では色々と細かく気を遣う部分が出てきます。

「カードマジック事典」の解説では、4枚目のAを客の手でデックに置いてもらい、それを真ん中に入れた後スプレッドすると、再び4枚のAが出現する、という流れです。一番シンプルなパターンですね。

それ以外にエイペックス・エーセスのバリエーションとしてよく見かけるのは、コレクター現象として演じるパターンです。それらの手順では、客の選んだ3枚のカードとか、同数の3枚のカードが出現する、というエンディングとなります。
この種の、エイペックス・エーセスに続けてのコレクター現象というのは、後年考案されたパターンというわけではなく、すでに原典の「Close-Up Card Magic」の中で、Jay Oseによるバリエーションとして紹介されています。
コレクターとしての手順があまりに一般化しているので、エイペックス・エーセスではなくコレクターという名称で、この手順を紹介しているDVD等もあるぐらいです。
しかし個人的には、ちゃんとエイペックス・エーセスという作品名で発表されており、原典においてすでにコレクターのバリエーションが紹介されているのですから、この作品はコレクターではなくエイペックス・エーセスと呼ぶのがふさわしいのではないかと思います。
何より、現象のポイントとしては、他のカードを集めてくる要素よりも、Aの消失と出現のほうが主題なわけですから。(もちろん、見せ方によって異なってくるのは言うまでもありません。)

 

話が逸れましたが、再び今回の動画で紹介した、原典手順の後半部分への考察に戻ります。

上で、複雑でマニアックとは書きましたが、その反面、この手順の狙いも理解は出来る気がします。
「カードマジック事典」掲載の手順では、消えたAが再度そのまま出現するわけですが、このとき裏向きデックの中央あたりに、1枚置きに表向きに並んだ状態で出て来ます。
この部分を、4枚のエースの出現現象として、手順構成とかマジシャン的都合などの色眼鏡抜きで純粋に見るならば、1枚置きに並んで出てくるというのは何となくおかしい気がするのです。
4枚固まって出てくるか、さもなくばデック全体に離れた状態、どちらかにしたい。中央あたりに固まっているが、1枚置きに並んでいるというのはどうも気持ちが悪い。
おそらく、原案手順の後半部分は、そのような感覚で構成されたものなのではないでしょうか。

コレクター現象にすれば1枚置きに出てくる理由は付くが、その場合消失現象としての純粋さを損ないかねない。Jay Oseによるコレクター的手順が、メイン手順ではなくバリエーションとして紹介されているのも、そういう判断でしょうか。勝手な想像ですが。

それから、作品の「エイペックス・エーセス」という題名です。
これはただの作品名というだけではなく、手順の冒頭で、「スペードのAはエイペックス(てっぺんの)・エース」である、と言うように指示されています。
そしてこの前振りが、後半のスペードのAによるアンビシャスカード現象につながってくるわけです。

このように考えてくると、フランク・ガルシアがこの手順でやりたかった事というのは、むしろ後半部分の方なのかも知れません。「エイペックス・エーセス」という名前をガルシアが付けたのだとすれば、ですが。
エースが消えてまた出てくる、という現象だけでは、「てっぺんのエース」という名前はそぐわないような気もします。
以上はもちろん、私の想像に過ぎません。

 

エイペックス・エーセスを解説した文献等

エイペックス・エーセスは東京堂出版の「カードマジック事典」に掲載されています。325ページの「消えていくA」という作品がそうです。

また、英語での原典はハリー・ロレイン著「Close-Up Card Magic」に掲載されています。

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コメント

    • 峯崎浩一
    • 2013年 9月 02日

    私は後半のアンビシャスの所で、ひっくり返してデックに入れる部分が嫌ですね。
    それだったら表向きでトップに上がってくるのが普通なので不自然な気がします。
    コレクター現象が一般的なのは、その辺の不満から来てるのではないでしょうか?

    • トップに上がると同時に、リバースするという2重の現象が起こっている、と好意的に捉えることも出来なくはないですが、確かに違和感があるところですね。
      私も、狙いは理解できる気がするとは書きましたが、総合的に見るとやっぱりコレクター的な見せ方のほうが良いのではないかとは思います。
      原案が世間で支持されていないのも、おっしゃるとおりそのあたりが理由でしょうね。

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