「ゴールド・フィンガー」 スコッティ・ヨーク “Gold Finger” Scotty York クライマックス用コインルーティン

goldfinger

往年の名作007シリーズ第3作の表題は「ゴールドフィンガー」で、これは映画の敵役の名前を取ったものでした。
またあるいは、ゴールドフィンガーといえば、郷ひろみのヒットナンバーを思い浮かべる方もおられるかも知れません。
「黄金の指」「ゴールドフィンガー」、いずれにしても、豪華絢爛でかつ、力強くスタイリッシュ、しかしどこかレトロなイメージを喚起する言葉ですね。

今回ご紹介のコインマジック作品は、スコッティ・ヨークの「ゴールド・フィンガー」。
その名の通り、黄金がテーマのコインマジック作品です。

スコッティ・ヨークはバー・マジックの草分けとして長年活躍し、昨年2012年に逝去したアメリカのマジシャンです。
氏の作品の中でもとくに有名な”Scotty’s Light Bulb”は、テンヨーからゴースト・ランプとして商品化されて、現在でも売られています。

 

スコッティ・ヨークの「ゴールドフィンガー」

では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

>>動画リンク<<

一般に金貨と言えば、コインの中でもイメージ的にはメジャーな部類でしょうけども、高価なものであるため、現代では通貨として見かけることはほとんどありません。ある意味で日常性とのつながりを旨とするクロースアップのコインマジックでもそのため、金貨が使用されることは多くありません。

日常性から乖離するゴージャスなイメージが、コインマジックにおいて最も効果的に輝く瞬間、それはやっぱり一連のルーティンのラストを飾るクライマックスでしょう。
ということで、このゴールド・フィンガーは、数あるコインマジック作品の中でも、とくにクライマックスでの使用に適したものです。

ミスター・マジシャンの根本毅氏の意見によれば、コインマジックのクライマックスとして最も効果的な手順が3つあり、このゴールド・フィンガーもそのうちのひとつであるということです。私もこれには納得できます。
ちなみに3つのうちのあと2つは、アラン・ヘイドンのジャンボ・コイン・プロダクションと、根尾昌志氏の五円玉ルーティンとされていました。

上の動画では4枚のコインズ・アクロスを演じた後、ゴールドへの変化現象に入っていますが、ゴールド・フィンガーの手順に当たるのは、アクロスを除いた後半の変化部分です。
つまり、ゴールド・フィンガーとはこれだけで独立したマジックというよりは、他のコインマジックのラストに加えて演じる、クライマックスのための手順と言えるでしょう。
もちろん、いきなり金貨への変化現象を見せる単独の手品として演じることも可能でしょうけども、やはり他の手順と組み合わせて、事前に銀貨の印象を強調しておいたほうが効果的だと思います。
このように、自分の好みのコインマジックと自由に組み合わせて演じられる、融通無碍なところも、ゴールド・フィンガーという作品の魅力のひとつです。

また、もうひとつの注目すべき要素は、パースの金色への変化です。注目すべき要素というよりもむしろ、このパースのチェンジこそが、ゴールド・フィンガーを傑作たらしめている一番の理由ではないでしょうか。
もしもパースの変化が無ければ、ちょっと豪華なスペルバウンドあるいはワイルドコイン現象で終わるところです。
最後にパースまでもが変化することにより、完全な意外性とともに、ユーモラスな結末の効果を生み出します。

 

演出については、動画の演技では尺の問題もあって、あまり長い語りを入れていませんが、ギリシア神話に登場するフリギア王ミダス(マイダス)の逸話を語りながら演じるのも面白いと思います。
黄金の指というアイテムが、この伝説にぴったりです。

フリギア王ミダスの伝説では、ディオニューソス神から何でも望みの報酬を与えると言われたのに対して、彼は「触れるもの全てを黄金に変える力が欲しい」と言いました。その通りの能力を与えられたミダス王は、最初は小石や枝を黄金に変えられるのを見て狂喜していましたが、その後食物や飲み物さえも全て黄金に変わるのに気づき、これが呪われた能力であると悟ったと言う話です。

この神話をモチーフにしたコインマジックとしては、その名も”Touch of Midas”(マイダス王の手触り)というカーディニの傑作がありますが、あの作品はコインの出現現象を、黄金への変化に見立てたプロットです。
それに対して、ゴールドフィンガーのプロットはまさしく、”指で触れた物が黄金に変わる”というものですから、ミダス王の伝説にぴったりという気がします。

 

最後にひとつ補足ですが、上の動画で演じた手順は、スコッティ・ヨークの手順そのままではありません。
私がこの奇術のテキストと用具を入手したのは、ミスター・マジシャンの商品としてですが、その解説書にはスコッティ・ヨークの原案手順と、ミスター・マジシャン店主根本氏の改案手順が併記されています。
私が演じているものは、この根本氏の改案を元に、少し自分なりにやりやすいようにアレンジを加えた手順です。
基本的にはテーブルを前に腰掛けて演じるマジックですが、手順を工夫すればスタンドアップでも演じることは出来ます。

 

スコッティ・ヨークの「ゴールドフィンガー」を解説した文献等

私がこの作品を知り、用具も入手したのは、上にも書きましたように、大阪の奇術家根本毅氏のショップ「ミスターマジシャン」においてです。こちらのお店では、ゴールドフィンガーのための用具を独自に特注製作し、単独の商品として売られていました。
これ以外の日本語文献としては、麦谷真里氏が発行されていた奇術雑誌「マスカレード」の1号に掲載されているようです。(Liliputさんのサイトを参照させていただきました。)

原典の英語文献については、私は未確認なのですが、MagicCafeの投稿にて、1975年発行のノートに収録されているとの記載がありました。
GeniiのMagicPediaのScotty Yorkのページによると、彼のノートで1975年発行のものは2つあるようです。そのうち「Scot York on Coins」にはGold Fingerは含まれていないようなので(こちらのサイトを参照しました)、もう1冊の「The Scot York Lecture Book」にGold Fingerが含まれている可能性が高そうです。麦谷さんのマスカレード1号は1978年なので、時系列的にも整合します。

スコッティ・ヨークの映像資料としては、「Scotty York – The Silver Fox」という3巻組DVDが販売されていますが、これにはゴールド・フィンガーは収録されていません。

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コメント

    • 平山雄一郎
    • 2013年 9月 18日

    始めてこのマジックを見ました。
    商品は以前に根本さんから買って持っていましたが、使ったことはありませんでした。
    こんな現象なのですね。
    いつも参考になります。
    私の持っている黄金の指と形が違うのだけが気になりました。
    また昔の道具を取り出したくなりました。

    • 私も今年に入って一度だけ、マジックバーでこのマジックの実演を見ましたが、それまでは他の人が演じているのを見たことはありませんでした。
      根本さんの一押し具合から、勝手にこれがスコッティ・ヨークの代表作のようにイメージしていましたが、DVDにも収録されていませんし、実際はそこまでメジャーなマジックでもないのかも知れません。少なくとも近年においては。

      お持ちの商品の指は、もう少しリアルな造形のものでしょうか?
      私の持っているこれは、金色のサ○○ップといった感じですので、マジックの雰囲気からすれば、もう少しリアルなもののほうが良いでしょうね。

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