「ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロス」 マイク・ギャロー “New Wave Coins Across” Michael Gallo

New Wave Coins Across

ギャロー・ピッチで有名なルー・ギャローと、その息子マイク・ギャローは、親子2代で世界的に著名なクロースアップ・マジシャンです。
マイク・ギャローは、世界のコインマジシャンが集うニューヨーク・コインマジック・セミナーの常連で、コインマジックの分野では現在世界トップの一人でしょう。

今回ご紹介するのは、マイク・ギャローによるコインズ・アクロスの作品、「ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロス」。
何がニュー・ウェーブ(新しい波)なのか。おそらくはこの作品に採用された原理による命名ではないでしょうか。
一見、古典的なコインズ・アクロスのような形で手順が始まりますが、後半を見れば、知識あるマジシャンほど、「あれっ?」と思う構成です。
ニュー・ウェーブの名の通り、ここで用いられている原理は、あまり他に類を見ないものです。

 

マイク・ギャローの「ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロス」

動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

>>動画リンク<<

この動画で演じた手順のうち、基本的に後半の1枚ずつのアクロス部分が、ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロスの手順です。しかしこの手順の効果を高めるためには、まずオーソドックスな3枚ずつのコインズ・アクロスを演じるのが望ましいです。ギャロー本人もそのように演じています。
この前半部分は、いわゆるハン・ピン・チェンを用いたオーソドックスなもので、少し前に紹介したダイ・バーノンのチャイニーズ・クラシックと同様の手順を、テーブルを介さずに演じるものです。

一般的にコインズ・アクロスの手順では、コインの実際の状態が、相手の認識の一歩先をゆく、いわゆるワン・アヘッドの原理で演じられるものが多いです。場合によっては2枚先行するツー・アヘッドの手順もあります。
このワン・アヘッド原理のひとつの弱点としては、現象が起こる前に、コインがあるべき状態の一歩先を行っているため、直前に手の中のコインをオープンに示しにくいということがあります。

それに対してニュー・ウェーブ・コインズ・アクロスでは、いわばワン・ビハインドとも言うべき原理に基づいています。
つまり通常のコインズ・アクロスとは逆に、マジカルジェスチャーによって現象が「起こった」瞬間には、まだ実際のコインの状態は変化していないのです。そのため、移動前のコインの状態を非常にオープンに示すことが出来るという利点があります。

しかしもちろん、マジックにおいて全てにおいて優れた形というものは成立しにくいものでもあります。この作品でも、移動前はきわめてオープンにコインを示すことが出来るものの、移動した後の証明が、普通のコインズ・アクロスに比べれば少し弱い点がトレードオフという見方も出来そうです。

なお、この動画の演技では意図的にハン・ピン・チェンとギャロー・ピッチを織り交ぜて使用していますが、これらの技法は基本的に同じ特性を持っている(ギャロー・ピッチはハン・ピン・チェンのバリエーション)ので、もちろんどちらかだけで構成することも出来ます。が、あえて個人的な見方を言うならば、ハン・ピン・チェンはテーブルを前に着席した状態での演技に、そしてギャロー・ピッチはテーブルの前に立った状態等、テーブルが低い位置にある状態での演技に向いていると思います。

チャイニーズ・クラシックと同じく、ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロスも、ハン・ピン・チェンの原理を最大限に生かしきった傑作のひとつと言えるでしょう。

 

マイク・ギャローの「ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロス」を解説した文献等

私がこの作品を最初に知ったのは、マイケル・アマーのレクチャーノート「Encore 2」です。これは公式なものかどうか分かりませんが、日本語訳して販売されていました。
また1990年発行のアマー作品集「The Magic of Michael Ammar」にも「Encore 2」と同じ内容が収録されています。

映像では、同時期にVIDEONICSから出ていたアマーのレクチャービデオ「World Class Close-Up」でも、この作品が取り上げられていました。個人的見解では、このビデオはギャロー・ピッチの教材として、現在でも最高のもののひとつだと思います。なお「World Class Close-Up」は後に「Early Ammar」、またさらに後には「Magic of Michael Ammar」というシリーズの1巻としてDVD化されています。
また原案者であるマイク・ギャロー本人の演技・解説は、「Remembering The Magic of Lou Gallo」というDVDに収録されています。

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コメント

    • ざきぽむ
    • 2013年 9月 16日

    すでにご存知かもしれませんが、ユーチューブにこんな動画があったので・・・
    http://youtu.be/pIOx-4De4PU?t=6m30s
    http://youtu.be/X3Pa8BUDq3I

    あのスライディーニが。フル手順ではありませんが、(おそらく)ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロスとチャイニーズ・クラシックを演じています。しかもワンダラーで!

    そのあとの有名なワンコインルーティンもさすがです。
    コインが貫通するときの音の演出もニクいです(‘∀`)

    • ざきぽむさん、ありがとうございます。
      スライディーニの十八番ルーティンですね。
      これはチャイニーズ・クラシックと同様の手順ですが、ニュー・ウェーブ・コインズ・アクロスではないですね。ニュー・ウェーブは、余分なコインを減らして、1枚ずつの移動を見せる部分の手順だけですので。

      チャイニーズ・クラシックに関しては、ダイ・バーノンがスライディーニにこの手順を教えたところ、スライディーニが「こんなに素晴らしい手順を人に教えてはいけない」と言った、という逸話を聞いたことがあります。
      この動画の手順にも、おそらくバーノンの影響があるのでしょうね。

    • 森田悠一
    • 2015年 8月 11日

    初めて見ました。この後半の部分の発想は面白いですね。ハンピンチェンタイプとの違いも面白いですが,ウイングドシルバーと比較するとまさに逆転の発想の見本のようで,目から鱗でした。

    • 森田悠一
    • 2015年 8月 11日

    初めて見て驚きました。通常のチャイニーズ・クラシックと比べても面白いですが,ウイングドシルバーと比べるとまさに逆転の発想の見本のようですね。面白いミステリーを読んだときのような快感です。

    • 森田さん、ご無沙汰しております。
      この手順では原理を前面に押し出す形で、手順全体が同一原理で組み立てられていますが、通常の手順の一部に採用するなどしてみれば、面白いものができるかも知れませんね。

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