“The Single Flight of the Aces” Cy Endfield サイ・エンドフィールドによるスローモーション・フォア・エーセス

エース・アセンブリはカードマジックの中でも一大ジャンルを占めています。中でもダイ・バーノンの「スローモーション・フォア・エーセス」は古典的名作として、その後の多くの作品やプロットの源流となっています。

「スローモーション・フォア・エーセス」という名称はバーノンの作品で付けられたもので、エースが一度に集まるクラシック・アセンブリに対して、一枚ずつゆっくり集まる様子を見せることから来ています。

今回紹介のサイ・エンドフィールドの作品は、バーノン作品からの派生ではなく、同時代に別々に考案されたものです。プロットはバーノンの作品と同じスローモーションアセンブリですが、もっと直球な名称が付けられています。
その名も直球の「エースの一枚ずつの移動」”The Single Flight of the Aces”。
ただしこれは作者自身が命名したものか、作品集の著者であるLewis Gansonが便宜的に命名したものかは分かりません。

 

サイ・エンドフィールドの”The Single Flight of the Aces”

では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

>>動画リンク<<

いくつか見るべき点があります。

まず、ブラウエのシークレット・アディションの使い方が挙げられます。
シークレット・アディションは今日のエース・アセンブリでは最も普通化した手法のひとつです。
一般的なこのプロセスは、パケットからデックのトップに1枚ずつひっくり返して見せてゆくやり方で、Ed marloのSimplex Aces以降に有名になった手法です。

サイ・エンドフィールドの作品は上記マーロー作品とほぼ同時代のものですが 現在一般化しているのとは少し異なり、一旦デックを置いてパケットの形でエースを改めるやり方が取り入れられています。スピード感は少し損なわれますが、説得力があり現在でも用いられる手法です。

 

それから、4つのパケットのレイアウトが四角形になっているのも、エース・アセンブリの中ではどちらかといえば珍しい配置です。
現在のエース・アセンブリで一般的な配置は、いわゆるTフォーメーションです。この配置が使われ始めたのは、バーノンのスローモーション4エーセスやマーローのシンプレックス・エーセスあたりからです。サイ・エンドフィールドのこの手順が考案された頃は、Tフォーメーションはまだ広まってはいなかったということでしょうか。
なお余談ですが、エース・アセンブリのカードの配置については、近いうちに独立した記事を書いてみたいと思っています。

 

サイ・エンドフィールドの作品同士での比較でいえば、専門家のためのエース”Aces for Connoisseurs”との関連が見られます。あちらの作品では独特のサイドグライドによるムーブが全体に亘って使われていました。
今回のスローモーションエーセスでも、最初の改めと、各エースの消失を見せる部分で同様のサイドグライド的操作が繰り返されます。しかしここでは消失部分前半の動作はいわばダミーであり、アードネスの言う「動作の一貫性」の演出です。この繰り返しにより、3枚目の消失の効果を高めることが意図されているのでしょう。

また、手順構成の考え方として、ツー・アヘッド”Two ahead”から始まる点にも注目してみましょう。ここで言うのは、最初のセットアップ時のエースの位置のことです。あからさまなネタばらしにならぬよう、少々分かりにくい表現であることはご容赦ください。

古典的なクラシックエーセスは、手品が始まったと思われたときにはもう集まっているので、いわばスリー・アヘッド。スローモーションアセンブリのプロット※を真面目に見せようとするならば、このアヘッドの数をなるべく減らすのが理想ではあるわけです。中にはバーノンのAces for Exelsisなど、ゼロ・アヘッドの手順もありますが、特殊な手順で難易度も高くなります。スリー・アヘッドでもスローモーション風に演じることは出来ますが、あくまで「風」でしかない。

そのあたりのトレードオフバランスから見て、スローモーションとしての説得力をある程度保ちつつ、演技の負担を減らすには、ツーアヘッドが無難というところでしょう。
バーノンの代表作の一つであるスローモーション・フォア・エーセスやダーウィン・オーチスのヒッチコック・エーセス、ピーター・ケーンのジャズ・エーセスなど、スローモーションプロットを含む名作の多くが、この骨格を持っています。

サイ・エンドフィールドの”The Single Flight of the Aces”も上述のような骨格を踏襲していますが(いや踏襲というか、この手順もその後の同種の構成の範のひとつとなっているのかも)、ラスト1枚の移動部分についてはそれなりに実演負荷が高いですね。もちろん負荷と同時に練習と実演の喜びを与えてくれる要素でもありますが。

※プロットの特徴については、スローモーション・フォア・エーセスの記事をご参照ください。

サイ・エンドフィールドの”The Single Flight of the Aces”を解説した文献等

この作品はルイス・ギャンソン著「Cy Endfield’s Entertaining Card Magic」に掲載されています。
元々の本は3部作で1955-58年にかけて出版されたものですが、近年3冊を1冊にまとめた合本も出ており、廉価なe-book(電子データ)の形態でも販売されているようです。

日本語では、高木重朗氏の訳による「サイ・エンドフィールドのカードマジック」が金沢文庫から出ていますが、絶版になってから長く、なかなか入手は困難だと思います。

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コメント

    • 峯崎浩一
    • 2015年 4月 23日

    すみません。粗探しという訳ではありませんが、気になる箇所が一つあります。
    動画の2:00辺りからエース3枚の改め部分、3枚のエースとスペードQが、次の改めでダイヤの9に変わってます。これでは5枚持ってるのではないかと推測されます。
    インデックスが丸見えの部分なので目立ちますし・・何か解決策が欲しいですね。

    • おお……言われてみればなるほどです。気づいていませんでした。
      例えばメイトカードを使えば多少解決に近づきますが、余計なセットに気を遣う必要が出てきますね。
      すぐ出来て現実的なのは、3枚のエースを見せる段で左手を返してフェイスを見せない形でしょうか。
      あるいは、前の段のダブルを3枚目から2枚目に変更すれば、矛盾は一応無くなりそうです。
      いずれにしても重要なご指摘ありがとうございます。

    • 匿名
    • 2015年 4月 27日

    記事に関係ない事で申し訳ないのですが、ここのサイトのTOPページが見られなくなっているのを直してもらえないでしょうか?

    • ご指摘感謝いたします。ご不便をおかけして申し訳ありません。
      調べたところ、恐らくプラグイン関係の不具合で、スマートフォンで閲覧するとエラー画面が出る状態になっていました。
      先ほど修正を施し、私のスマホからは閲覧できる状態になっております。
      もしコメント主様のほうで、未だ正常に表示されないといったことがありましたら、再度お知らせいただければ幸いです。
      今後ともよろしくお願いします。

    • d-magical
    • 2015年 11月 29日

    お元気ですか?
    更新がしばらくないので心配しております。

    • コメントありがとうございます!
      最近仕事のほうで責任ある立場になったため多忙で、なおかつほぼ出張のため時間が取れないでおります。
      このサイトはやめたつもりはありませんので、また時間ができたときに更新したいと思っています。
      年内に出来ればあと1回くらいは…
      よろしくお願いします。

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    about 4週間 ago
  • @you_you_1 @ShinanoCraft Too Perfect Theoryですかね。これは若干違うようなw
    about 2か月 ago
  • @ShinanoCraft @you_you_1 わたしもその台無しで出来る?って言いたいですw
    about 2か月 ago

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