21カード・トリックは、セルフワーキングトリック(テクニックを使わずに自動的にできる手品)の中でも、よく知られてバリエーションも多いマジックです。
簡単なマジックではありますが、きちんと覚えてスムーズに演じればじゅうぶん不思議に見えるマジックですし、基本的な原理さえ理解すれば、見せ方や現象には多くの可能性がある手品です。
実際、プロマジシャンでもこれを応用したマジックを取り入れている人はいます。
例えばデビッド・カッパーフィールドのショーで長年演じられている「Moon Interactive」というマジックは、この21カード・トリックの原理を応用したものです。(手順そのものはかなり異なりますが)
それほどの可能性をもつ傑作ですから、ご存じなかった方は是非覚えて演じてみてください。
21カード・トリックの現象
今回はやり方の解説(種明かし)もいたしますので、まず最初に現象(演技動画)をご覧いただきましょう。
21カードトリックの基本的な現象としては、21枚のカードの中からお客様に好きな1枚を覚えてもらい、3つの山に配る操作を3回行った後、そのカードを見事当てるというものです。
山を3回配るという操作によって、選ばれたカードを特定するプロセスは終わっていますから、その後の実際の「当て方」のプレゼンテーションは数多くバリエーションが考えられます。
今回はその中でも私が考えた、サンドイッチ風味の方法を紹介しました。
また、通常は3つの山を配る操作を3回行うのですが、どうもこの部分を普通に行うと間延びすると言いますか、お客さんから見て3回配り直すことの合理性が見出しにくい印象があります。
そこで今回ご紹介するやり方では、1回目に配る操作はカードを選んでもらう前に行い、さらにジョーカーが1回失敗するというような演出を加えることによって、漫然と3回配っている印象を緩和するように工夫してみました。
21カード・トリックのやり方
まず21枚のカードを使いますので、それ以外のカードはよけておきます。
表向きに、左から右に1枚ずつ、3つの列を作るように配ってゆきます。(図1)
右から左でも構いませんが、右利きならば左から右に配るほうが良いと思います。
全てのカードを配り終わったら、3つの列の中からどれか1列を選んでもらいます。
普通に引いて覚えてもらって返してもらってもいいのですが、単に心の中で覚えてもらったほうが、手がかりがないように見えると思います。(図2)
覚えてもらったカードのある山を真ん中にして、3つの山を重ねます。
図では、ダイヤの4が見えている山にお客様のカードがあるということです。(図3)
パケットを裏向きにして、再び1枚ずつ3つの山を配ります。
このとき、ひとつの山を配り終えてから次の山に移るのではなく、必ず3つの山を1枚ずつ順番に配ってください。(図4)
ひとつずつ山を取り上げて、お客様に表を見せるように広げて、その中に選んだカードがあるか無いかを尋ねます。
お客様のカードが”ある”と言われた山を真ん中にして、3つの山を重ねます。(図6)
この、「3つの山を配って、カードがあるか無いか尋ねる操作」をあと1回繰り返します。
これが終わった時点で、「ある」と言われた山の真ん中のカードが、お客様の選んだカードとなります。
さて、7枚のカードのうち真ん中のカードを単に取り出して見せれば当たりとなるのですが、ここではジョーカーを使ったサンドイッチの手品として見せます。
お客様のカードが含まれた7枚のカード全体を、表向きのジョーカーで挟みます。
一番上と一番下にそれぞれ表向きのジョーカーを置くわけですね。(図7)
ここで、「アンダー・ダウン」と呼ばれる操作を行います。
これは、動画のように1枚目を下に回し、その次のカードをテーブルに置く。
その次はまた下に、次はテーブルに、という具合に交互に繰り返してゆくものです。
最後の1枚まで繰り返すと、表向きジョーカーが1枚のカードを挟んだ(サンドイッチした)状態になります。(図8)
もちろん、これがお客様の選ばれたカードです。
ここで出てきた、「アンダー・ダウン」についてですが、最初にテーブルに配るほうから始めれば、「ダウン・アンダー」と呼ばれるやり方になります。
アンダー・ダウンにしてもダウン・アンダーにしても、数理的カードマジックにはよく出てくる方法ですので、操作の名前も含めて覚えておいてください。
ラストの見せ方の別法
上記のサンドイッチ的な当て方は私が考えたものですが(すでにあったらすみません)、この最後の部分は色々な見せ方が考えられます。
ここでもうひとつ、ネット上でよく見かけるやり方も紹介しておきましょう。
3回配って、最後の7枚のうち真ん中がお客様のカードである状態からの説明です。
7枚を一枚ずつ、テーブルに前後交互に重ねて配ります。(図9)
図9で、下に突き出ている3枚のうち真ん中がお客様のカードです。
突き出た状態のままで全体を表向きに持ち、手前に突き出たカード(3枚)を押し込みます。(図10)
すると、2枚のカードが前方に押し出されてきます。
前後を逆にひっくり返します。(図11)
再び図10と同じように、手前に突き出たカード(2枚)を押し込みます。(図12)
そうすると、前方に1枚のカードが突き出ます。
これがお客様の選んだカードです。(図13)
手の中で押すのではなく、テーブル上に立てて下から押し込んでも構いません。
21カード・トリックの原理
最後に、このマジックの原理というか、成立する仕組みを解説いたします。
数学的な説明ではなく、単にカードの行方を追うだけの解説なので、数学的な背景をお求めの方には不足かもしれません^^;
3つの山を3回配る操作を行えば、選ばれたカードが必ず真ん中に来るのですが、分かりやすいよう選ばれたカードがある可能性のあるグループを表向きにして解説します。
まず、最初に3つの山に配った時点で、「ある」と言われた山を表向きにします。(図14)
お客様のカードが「ある」山を真ん中にして重ねてから、次の山を配りますので、2回目に配った状態では右図のようになります。(図15)
ここで、仮に真ん中の山に選ばれたカードが「ある」としますと、この時点で3枚に絞られることとなります。
左右の山にある表向きカードは、お客様のカードである可能性は無くなったので、裏向きに戻します。(図16)
これを、再びお客様のカードが「ある」山を真ん中にして重ねて、さらにもう一度3つの山を配ります。
この段階で、可能性のある3枚は3つの山にバラバラに分散しており、それぞれの山の真ん中に位置しています。(図17)
ですから、ここで「ある」と言われた山が特定されれば、その山の真ん中がお客様のカードということになるわけです。
この原理から分かるように、別に使うカードは21枚でなくても構いませんが、この手品の名称としては21カードトリックというのが定着しているので、ここでは21枚で演じるものとして紹介しました。
3の倍数なら、12枚~27枚まで同じ操作で出来ます。
9枚以下なら2回配るだけで出来ます。
また、配る山を2つとか4つにするならば、また手順も変わってきます。興味のある方は研究してみると面白いかも知れません。
21カードトリックの関連文献
直接この手品の関連文献というわけではないですが、記事の冒頭に出てきた、デビッド・カッパーフィールドの「Moon Interactive」が解説されている書籍を紹介いたします。
麦谷眞里氏の「クラシックマジック入門事典」という本に、「ムーン・カードの応用」として、上記カッパーフィールドのマジックの原理や演出などについての解説があります。
この本は、ちょっと入門とは呼べないような内容も含まれていますが、売りネタの解説も含めて、他の本では見られないような貴重な情報が詰まっていますので、ムーンカードの解説以外でもおすすめな本です。
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