ここではカードマジックにおけるハ行の用語を紹介します。
人名・奇術の作品名や書名などは扱わないものとしますが、ジャンル名となっているような古典的な奇術名については扱うものとします。
基本とは言えない技法についても、もれなく扱うと膨大な数となるので、著者の主観にてある程度重要と思われる技法に絞って紹介します。
また、カードマジックだけでなく奇術全般に当てはまる専門用語は、カードマジックの項目に含めて記載します。
ハで始まる言葉
バイスクル
U.S.プレイングカード社によるカードのブランド。カードマジックにおいてスタンダードの地位を占めているブランド。
パス
デックの上下を密かに入れ替える技法の総称。最も一般的なパスはクラシック・パスだが、他にも多くの種類がある。シフトと同じ。
バック
カードの裏面。数字やスートの印刷されている面とは反対の、いわゆる裏模様の印刷された面のこと。
バック・パーム
伸ばした指先の裏側(甲側)でカードを保持するパーム。フロントパームと裏表逆になる位置。
バック・パームとフロントパームを連続して行う技法を、バック・アンド・フロント・パームと呼び、これはミリオンカードなどのステージでのカードマニピュレーションでは非常によく使われる技法。
バックル
デックやパケットをディーリングポジションに持った状態で、ボトムカードを湾曲させて、その上に空間を作る方法。
バックル・カウント
パケットの一部を隠したまま、実際の枚数よりも少なく数えるカウント技法。プッシュオフカウントと同じ用途で使用できるが、この技法ではその名の通りバックルを使う。
バニッシュ
物を消したように見せる技法の総称。
ハロー・カット
ハリー・ロレイン考案のフォールスカット。スリップカットの変形。
ハート
4種類のスート(マーク)のうちのひとつ。通常は赤い色で印刷されている。
バートラム・チェンジ
ロス・バートラム考案による1枚のカードのチェンジ技法。非常に視覚的。
バーノン・トランスファー
パケットからパケットへ、密かにカードを移動させる技法。動作とミスディレクションの効果により、完全なパームを必要としない巧妙な方法となっている。ダイ・バーノンの考案。
バーノン・ストリップ・アディション
デックからアウトジョグしたカードを抜き取るときに、密かに別のカードを付け加える技法。ダイ・バーノンの考案。
バーノン・ウェッジ
バーノンのV字ブレークとも呼ばれる、ブレーク技法の一種。
ハーフ・パス
デックやパケットの下のカードを密かにひっくり返す技法。
パーフェクト・ファロー
ファローシャッフルを行う際に、デックを正確に半分に分けて、なおかつトップからボトムまで完全に1枚おきに組み合わさった状態を言う。
ハーマン・カウント
パケットの一部を隠したままで全体を改めたように見せるカウント。パケットの半分程度の枚数を隠したままに出来る。ブラザー・ジョン・ハーマンの考案。
ハーマン・パス
パスの一種で、クラシックパスと逆の操作による技法。これの派生形としてターンノーバー・パスやインビジブル・パスがある。
パーム
カードを手に隠し持つ技法の総称。カードのみならず、コインやボールその他、どんな物体を隠し持つ場合でもパームと呼ばれる。
パーム・チェンジ
1枚の(ように見せた)カードを右手から左手に持ち替える動作の中でパームを使ってチェンジする技法。
ヒで始まる言葉
ピーク
カードのフェイスを密かに盗み見る技法。グリンプスと同じ。
ビドル・グリップ
デックの手前エンドに親指、客側エンドに中指他を当てて持つグリップ。
ビドル・ムーブを行うときに使われる持ち方なのでこの名で呼ばれる。エンド・グリップと同じ。
ビドル・ムーブ
デックやパケットを右手に持った状態で、1枚ずつ左手に数え取る動作の中で、一部のカードを密かに加えたり取り除いたり、またはスイッチする技法。エルマー・ビドル考案による。
ピンキー・カウント
デックやパケットをディーリングポジションに持った状態で、小指を用いてトップから任意の枚数を数える技法。ブレークを作るときに用いられる。
ピンキー・ブレーク
デックやパケットを、ディーリングポジションに持った手の小指で保持するブレーク。
ピンキー・プルダウン
プルダウンを小指で行うやり方。
ヒンズー・シャッフル
日本で最も一般的に行われるシャッフル。
デックの長辺を右手の指先で持ち、トップからパケットを順に左手に取って行くシャッフル。
ピンチ・グリップ
パケットの右下サイドあたりを、親指を上、人差し指と中指を下にしてつまんで持つグリップ。カウント系技法でよく使われる。
ヒンバー・ワレット
カードや紙幣などをすり替えることが出来る、ギミックワレット(財布)。リチャード・ヒンバーの考案。
フで始まる言葉
ファロー・シャッフル
カードを1枚おきに組み合わせて混ぜるシャッフル。
フェイス
カードの表面。数字やスートの印刷されている面のこと。
フォア・オブ・ア・カインド
同じ数字の4枚(ハート・クラブ・スペード・ダイヤ)のカードのこと。ちなみに英語ではポーカーのフォー・カードのことをこのように呼ぶ。
フォーシング・デック
フォースをするためのデック。
フォース
観客が自由意志に選んだように見せかけて、実際には演者の意図したカードを取らせる技法の総称。
フォールス・カット
デックやパケットをいくつかに分けて、それの順番を入れ替えたように見せながら、実際には順番が変わっていないという技法の総称。偽のカット。
フォールス・シャッフル
デックやパケットを切り混ぜたように見せながら、実際には混ざっていないという技法の総称。偽のシャッフル。
デックやパケットの一部のみを保持する方法もあるし、全体が全く混ざらない技法もある。
フォールス・ターンノーバー
カードをひっくり返したように見せて、実際にはひっくり返していないという技法。
フォールス・ディール
デックのトップから普通に配っているように見せかけて、実際には別の場所から配る技法の総称。
プッシュオフ
カードを押し出すこと。押し出す枚数により、ダブルプッシュオフやマルチプル・プッシュオフなどと呼ぶ。
プッシュオフ・カウント
パケットの一部を隠したまま、実際の枚数よりも少なく数えるカウント技法。バックルカウントと同じ用途で使用できる。
ブラウエ・アディション
パケットの下に密かに余分なカードを付け加える技法。フレデリック・ブラウエの考案。シークレット・アディションと同じ。
フラシュトレーション・カウント
パケット全体が同じカード(裏でも表でも)であるように見せるカウント。単体ではやや説得力の弱い技法である。ブラザー・ジョン・ハーマンの考案。
フラット・パーム
ギャンブラーズ・フラット・パームとも言う。
デックをテーブルに置いた状態からパームすることが出来るパーム位置。
ブラフ・パス
客のカードを真ん中に入れたように見せて、実際には2枚目に入れる技法。ティルトと同じ働きの技法だが、ティルトとはまた違った大胆さのある技法。
フラリッシュ
カードを曲芸のように器用に扱う技を見せるパフォーマンスの総称。
近年Dan&DaveやThery11などのネットのマジック界でよく見る”Cardistry”という言葉も、「芸術的」という意味も含まれているものの、基本的には同じ概念と思われる。
ブランク・カード
フェイスが真っ白(印刷されていない)なカードのこと。
ブリーザー・クリンプ
クリンプの中でも、見破られにくい特殊なクリンプ。
ブリッジ
カードやパケットを軽く反らせてクセを付けて目印とする技法。
プル
引きネタ。カードあるいは他の品物を、袖や上着の裾に密かに引き込むギミック。
プルダウン
ボトムカード、あるいはボトムの数枚のカードを左手で押し下げる技法。ブレークを作る場合や、カウントに用いられる。
ブレーン・ウェーブ・デック
観客の選んだカードだけが表向きで現れ、さらにその1枚のみが他と異なる裏色である、というカードマジック。
20世紀初頭にダイ・バーノンによって考案されたとされ、今日でもメジャーなギミックデックのひとつ。
フロント・パーム
伸ばした指先の内側(掌側)でカードを保持するパーム。バックパームと裏表逆になる位置。
ヘで始まる言葉
ヘイモウ・フォールス・シャッフル
少ない枚数のパケットに適したフォールス・シャッフルの一種。
ヘインシュタイン・シャッフル
手の中で行うリフルシャッフルのスタイルを模した、フォールス・シャッフル。カール・ヘインの考案。
ペイント・ブラッシュ・チェンジ
デックやパケットの表面のカードを、別の1枚のカードで軽くなでると変化する技法。
カードを刷毛で掃うような動作であることから名づけられたと思われる。
ベンディックス・ボムシェル
ヒンバー・ワレットの発展形ワレットで、カードのすり替えだけでなく、カード・トゥ・ワレットの現象を繰り返して見せることが出来る。デイブ・ベンディックスの考案。
ホで始まる言葉
ボトム
一組のデックを裏を上にして持った状態で一番下のこと。
ボトム・コントロール
任意のカードを知られないようにボトムに持ってゆくこと。
ボトム・チェンジ
一組のボトムカードと、反対の手に持ったカードをすり替える技法。トップチェンジのボトムバージョンだが、歴史はこっちのほうが古い。
ボトム・ディール
普通に一番上から配るように見せかけて、一組のボトムカードを配るフォールス・ディール。元々はギャンブリング・テクニックのひとつ。
ボトム・パーム
ボトムから1枚または複数枚のカードをパームする技法。
ホールドアウト
カードやパケットを密かに袖や衣服の中に隠したり、再び補給したりといった秘密操作を自在に行うためのギミック(装置)。
元々はカードゲームのイカサマで用いられたギミックだが、マジックにも使われるようになった。
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