カードマジック

Jerry's Nugget Deck

【デックレビュー】ジェリーズ・ナゲット・デック Jerry’s Nugget Deck

ジェリーズ・ナゲット・デック”Jerry’s Nugget Deck”。
もうこのデックに関してはあちこちで語られていて、今さらという感じもいたしますが、道具箱の中から出てきたのでついついちょっと触っていたら、若干新鮮な感想も抱いたので紹介してみたいと思います。

 

Jerry’s Nuggetというのはアメリカ・ラスベガスにあるカジノの名前で、このトランプはそのカジノでの販売用に製造されたカードです。
このトランプの裏デザインは、カジノの看板をそのまま上下に配したものですね。(→Jerry’s Nuggetの看板:英語版Wikipedia

 

現在では高額なデックの代表格のように見なされています。
ヤフオクとか、海外版ヤフオクのebayなどでは200ドル程度の値が付いていることも多いようです。
わたしが持っているのは赤と青の2個だけですが、これを買ったときは確か2個で2000円しないくらいでした。(確か1995年前後ぐらい?)
2005年ぐらいの時点ではすでにレアデック扱いだったとは思いますが、今ほど高額ではなかったと思います。一気に値上がりしたのはそれから後でしょうか。
おそらく、Dan&Daveがブレークして、DVDなどの中でこのデックを使用していましたので、現在の人気は彼らの影響によるところが大きいのでしょう。

 

Jerry’s Nuggetの中身

それではデックの中身を見てみましょう。

 

赤と青のJerry’s Nugget Deckを並べたところです。
分かりにくいかもしれませんが、向かって左の青デックがフラップの内側、バイスクルで言えばカードの裏模様の印刷された側(最近のバイスクルは違いますが・・・)です。
そして、向かって右側の赤デックはその反対側、フラップの背面ですね。バイスクルでいえば、「BICYCLE PLAYING CARDS」というロゴが描かれているほうの面です。

 

何が言いたいかというと、つまりケースの表も裏も同じデザインということですね。
両方とも、カードの裏模様と同じです。

ケース側面には大きく「Jerry’s Nugget」の文字が。
底面(と上面)には、「NORTH LAS VEGAS NEVADA」と書かれています。

 

シンプルですね。
U.S.Playing Card Companyの製造ですが、製造社名の記載はありません。
また製造年が古いですから、現在のデックのようなバーコード等もありません。

 

赤デックと青デックのバック面を対比。
Jerry’s Nugget Deckの一番の魅力は、このベタ塗りの発色の良さでしょうね。
昔はこのバックデザイン、大して良いと思えませんでしたが、最近あらためて触っていて、その魅力を再発見しつつあります・・・

 

Jerry’s Nugget Deckとバイスクルを並べたところ。
あまり意識していなかったことですが、ホワイトボーダー(白枠)の幅が、バイスクルに比べると大分細いですね。
バイスクルを見慣れた目からすると、Jerry’s Nuggetのこのバランスはなかなかシャープでおしゃれに見えてきます。

 

ジョーカー2枚とスペードのA。
ジョーカーは、バックと同じくカジノの看板ですね。
スペードのエースは、バイスクルなどよりもシンプルで控えめなデザインですね。

 

ちなみにこのスペードのエースの下に書かれている番号とそのインクの色で、デックの真贋や製造年代が分かるのだとか。
わたしの持ってるのはM4924と書かれており、インクは微妙に青っぽいです。
これが青くなくて黒だったら偽物かも知れない、みたいに書かれているサイトがあったりして、ほっとしたりしなかったり^^;

 

その他カードのフェイスです。
バイスクルと基本的に同じのようですが、現在売られているバイスクルよりは少し赤スートの色が明るいですね。写真では分かりにくいと思いますが。
20年ほど前のバイスクルは、赤スートが同じような色合いのデックもあったように思います。その時代ごとの標準色みたいなのがあったりするのかも知れません。

 

ちなみに上の写真で、左から順に「現在のバイスクル」、「Jerry’s Nugget」、「20年ほど前のバイスクル」を並べてみました。
う~ん、光の加減もあって分かりにくいですね^^;
実物を見ると、Jerry’s Nuggetと昔のバイスクルの色合いが近いと思えるのですが。

 

Jerry’s Nugget Deckの品質

Jerry’s Nuggetの品質としては、ペタペタとして手に吸い付くような感触が挙げられます。
これについては、私自身久しぶりにこのカードを触って強く感じました。

 

このほとんどベタ塗りに近いバックデザインも、この感触を生み出す一因なのでしょう。
もちろんスプレッドしたときなどには、カード1枚1枚はきちんと分離するのですが、この吸い付く感触のおかげで、パケットに分けたときの1体感が、普通のデックとはかなり異なります。
これが、このデックが特にフラリッシュに向いていると言われる所以でしょう。
逆にこの点において、私としてはこのデックがあまりマジックには向いていないように思われます。

 

ペタペタ感の要因はバックデザイン以外に、エンボス加工の種類にもあると思います。
上の写真のように、裏面のエンボス加工は現在のバイスクルなどでも一般的な格子の布目状のテクスチャーですね。

 

しかしフェイス面のエンボスは、上の写真のように縦方向のテクスチャーが勝ったものとなっています。
これについても、20年以上前のバイスクルはこれと同じ仕様でしたから、これはこの時代の標準仕様のひとつだったのでしょう。
この頃のバイスクルは、今のものと比べるとかなりペタペタした手触りですね。

 

この頃の標準でもあったエンボスの仕様と、Jerry’s Nugget独特のベタ塗りデザインが合わさって、あのような質感のデックが誕生したということでしょう。
現在の生産方法とは仕様が異なるので、もう再生産は出来ないと聞きます。

 

それと、これは今回久しぶりに触っていて改めて感じたことですが、このデックは裁断もかなり奇跡的に高品質ですね。
表面のつるぺた感と、この裁断とがあいまって、テーブルリフルシャッフルなどをしていると、高品質なプラスチックカードを触っているような気持ちにさえなってきました。

なのでファローシャッフルがかなりやりやすいです。
いや、ちょっと古いせいもあってか反りがあるので、その点では多少やりにくいのですが。
裁断という観点では、ファローシャッフルに最適といってもいいデックだと思いました。

 

パケットのきれいな分離が特徴のデックですが、スプレッドしてもそれなりに良い具合に広がってくれます。
写真の赤デックは開封しただけでほぼ未使用、青デックは赤よりは多少使っています。

 

マットの上ではなく硬い机の上でスプレッドしてみたところ。
赤デックのほうはまあまあですが、多少使い込んだ青デックは少々難がありますね。

 

終わりに

わたしがマジックショップなどに出入りして本格的にマジックをやるようになった頃には、Jerry’s Nuggetはもう一般の雑貨店などでは見かけなくなっていましたが、その数年前ごろには百貨店など普通の店で普通の値段で売られていたそうです。
まあ一般の店では見かけなくなっていたものの、それでもその頃ならマジックショップで2個2000円未満程度では買うことが出来ました。

 

Dan&Daveが使ったあたりから、このデックはフラリッシャーを中心に半ば神格化されている印象です。
200ドル前後もする値段もさることながら、このデックを持っていること、購入したということそのものが、一種のステイタスシンボルにもなっていますね。

 

マジックというよりもフラリッシュをほぼ専門的に行うCardistryなどと呼ばれる分野は、ここ10年以内ぐらいに勃興した新しいジャンルだと思いますが、Jerry’s Nuggetを評価したのは彼らだけではありません。
古くはエドワード・マーローやダイ・バーノンも使用したと聞きますし、ブルース・サーボンがテレビでこのデックを使用しているのを見たこともあります。
また、近年の値上がりのきっかけのひとつはバック・ツインズによるものでしょうけども、それより少し前にフランスのマジシャン、ドゥミニク・ドゥビビエ氏が数万個単位で買占められたことも、希少価値を高めた要因のひとつだとのことです。
フラリッシャーだけでなく、マジシャンにも一定数の支持者はいるデックなのですね。

 

わたし個人の感想としては、吸い付くような感触の特異性は十分に認めますが、平均的にマジックに向いているとは思えないというのが正直なところです。
フラリッシュに向いているだろうというのは想像できますが、私自身はフラリッシュはほぼやらないに等しいので、その面で的確な判断は出来ません。

 

デザインもシンプルでいいのですが、20数年前に初めてこのデックを見たときの第一印象は「ちょっとダサい」に近いようなもので、決して気に入ったとは言えません。
同じNuggetでも、Golden Nugget Deckは大好きでしたが・・・
最近はちょっと見直してきて、悪くはないとは思えるようになってきましたが、それでもまだデザインを手放しで褒めるというほどではないですね。

 

まあ良くも悪くも個性的で、使う人を選ぶデックなのかな、と思います。
ハマる人はもう熱愛といえるほどハマるが、合わない人にはとことん合わないのかも知れません。

 

私自身は・・・まあ100ドルや200ドルも出して今から買おうとまでは思えません。
コレクションアイテムとか、ステータスシンボルとして買うのならば、もちろん話は別ですけどね。

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コメント

  • コメント (5)

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    • 峯崎浩一
    • 2012年 12月 18日 7:39pm

    Golden Nugget Deck は未開封の物を3つ持ってます。
    機会あれば開封したいのですが・・もったいなくて仕舞ったままです。(^^;)

      • Shanla Type2
      • 2012年 12月 18日 8:32pm

      Golden Nuggetもすごく高いですよねえ。
      わたしは昔1個持ってたはずですが、今はないですね。
      Jerry’sにしてもGoldenにしても、いくら好きでも普通に使うのは無理な値段です^^;

    • マナカ
    • 2016年 8月 14日 10:31pm

    凄いです!最近めちゃめちゃとっても欲しくて
    憧れのデックです。興奮させてもらいました、ありがとうございます。

    • 匿名
    • 2019年 3月 24日 11:18am

    本物ですか?

    • コメントありがとうございます。
      本物かどうか確定的には分かりません。
      しかし、少なくとも今のように人気が出て価格も高騰するより前の時期に購入したものです。(1990年代)
      その頃より少し前には普通にデパートでも売っていたそうなので、あの時期に模造品が販売されていた可能性は小さいと思います。

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