カップ・アンド・ボールに必要なもの: 用具の紹介と選び方のポイント

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カップ・アンド・ボールをレパートリーに入れている人は、少なくともアマチュアマジシャンの中ではそれほど多くないように見えます。
その理由のひとつとしては、この奇術のための用具が、クロースアップマジックとしては大掛かりな部類に入るということがありそうです。
例えばカードマジックであればデック1組、コインマジックであれば小さなパースに数枚のコインを入れておけば、基本的には事足ります。
それに比べるとカップ・アンド・ボールの用具一式は、いかにも仰々しく嵩張るものと思われても仕方なさそうです。

また、一般に使われるカップ・アンド・ボールの用具が、いかにも怪しく本格的なマジック専用の道具といった雰囲気をまとっているのも理由のひとつでしょうか。
バイスクルやハーフダラーは日本人にとって日用品とは言えませんが、少なくともトランプやコインといったカテゴリーとしては普通に受け入れられるでしょう。
しかしカップ・アンド・ボールのカップは日常品であるコップや茶碗とはあまりにもかけ離れた感覚があります。

しかし逆に、私のようにカップ・アンド・ボールが好きな者としては、この仰々しさや非日常性、堅牢性といった用具の性格こそが、むしろこの奇術を愛する第一の理由かも知れません。
もちろん様々な現象が表現できるカップ・アンド・ボールというマジックそのものも好きではありますが、それよりはやっぱり、用具の醸し出す雰囲気のほうが、このマジックに惹かれる第一の要素と感じています。

今回はカップ・アンド・ボールのマジックそのものよりも、用具のほうにスポットを当てた記事を書いてみます。
カップ・アンド・ボールのマジックそのものについては、ダイ・バーノンのカップ・アンド・ボールの記事を併せてご覧ください。
私もこれまでのマジック歴の中で、それなりに色々な種類の用具を集めてきましたので、そのコレクション紹介も兼ねた内容となります。

 

カップ・アンド・ボールの用具概観

まず前提として、一般にカップ・アンド・ボールに必要な用具は以下の通りです。

カップ

これが無ければ始まりません。今日一般的によく使われるのは、金属製の専用カップですが、マジックそのものはマグカップや紙コップなど、ほとんどどんなカップででも出来ます。
また、専用カップにも金属製以外に、プラスチック製や木製などのものもあります。

ボール

これも大前提の用具です。一般的には専用カップと共に販売されている、小さなニットボールが使われることが多いです。
が、ボールについてもカップと同じく、直径1~2cm程度のボール状のものであれば、ほとんど何でも使えます。
即席のカップ・アンド・ボール手順では、お札やナプキンを丸めたものが使われることもよくあります。

ウォンド

これは必須とまでは言えませんが、カップ・アンド・ボールの手順で使用されることが多い用具です。

その他

上記以外に出来ればあったほうが良いものとして、ファイナルロード用の大きめの品物(果物など)、カップを収納する袋、クロースアップマット等が挙げられます。

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それでは以下、私の持つ各用具を紹介しつつ、私なりに考えるカップ・アンド・ボール用具の選び方などのポイントについて、詳細な紹介を加えてゆきます。

 

カップ

基本的にカップ・アンド・ボールは、片手で自然に持てる程度の容器であればどんなカップででも演じられるマジックです。私も昔、BBQの場で即席に紙コップと河原の小石、割り箸を使って演じたこともあります。

しかし、最初に書いたように、個人的にはカップ・アンド・ボールの最大の魅力は、独特の用具が醸し出す、いかにも奇術然とした空気感にあると思っています。

ここでは8種類のカップを紹介していますが、これ以外にもアルミ製や木製など、あといくつか持っています。
私はとくに奇術用具のコレクターではありませんが、気になるものをその都度集めていたらこの数になってしまいました。

ポール・フォックス・カップ

20世紀中ごろに活躍したアメリカのマジック用具製作者、Paul Foxのデザインによるカップです。実際にはこれはポール・フォックスのオリジナルではなく、レプリカ製品です。

Paul Fox Cupは、ダイ・バーノンを初めとする同時代の多くのカップ・アンド・ボール愛好家に支持され、およそ半世紀を経た現在でも、プロアマ問わず多くのマジシャンに愛用され続けています。

silverfoxcupこのカップは口径(内径)約64mm、高さは約72mmです。
上の写真に使用したレンズは少し広角ですので、この角度からの撮影では上下のゆがみが多少あります。形状については、横倒しのものと立てたものを併せて見てください。

縦横のサイズ比、底面の円の全体に対する割合、側面の曲面の美しさ、それから真ん中のリング状モールドが2本あること、このモールドによる上下分割の比率など、見慣れているせいもあるかも知れませんが、なかなか理想的な形に思えます。

このカップは底面が若干小さめにデザインされているせいか、手に取ってみると以外に小さく感じます。しかしこれでも、最も小振りのレモンであれば入るのです。
微妙な差異ではありますが、カップが実際の容量よりも小さめに見えるという特徴は、カップ・アンド・ボール手順のクライマックスの効果を高める要因となるでしょう。

カップの底面は直径約40mmで、通常サイズのニットボールが3個、安定して乗せられるギリギリの大きさとなっています。手順のうえで底面にボールが3個乗るというのはある程度重要なポイントです。
また、底のへこみ具合がほどほどであるのも個人的には良い点です。これが平たすぎるとボールが安定して乗りません。また逆にへこみが深すぎると、ある種の技法がやりにくくなる場合があります。

この製品は表面がクロームメッキ仕上げとなっており、これは酸化によるくすみが起こりにくいので、簡単なメンテナンスで美麗なカップを維持したい人には向いていると思います。

 

上の製品はクロームメッキでしたが、次に紹介するものは真鍮製の製品です。
brassfoxcup最初に紹介したクロームメッキのものは、商品としてはっきりとPaul Foxレプリカを謳っていましたが、こちらの真鍮製カップはそういった謳い文句は無かったように記憶しています。
しかし全体のプロポーションから見て、Paul Fox Cupのレプリカ、あるいは少なくともそれをベースとしたデザインなのは明らかでしょう。
一応見て分かる差異としては、底面周りのエッジが、クロームメッキのものと比べると多少丸っこいというところですね。

この写真のカップはそれほど使い込んでいないのである程度綺麗ですが、真鍮製カップは使用しているうちに表面が酸化してくすみ、金属光沢が鈍くなってきます。
これは必ずしも欠点ではなく、使い込むことによって出てくる用具としての味わいを気に入って使用する人も多いです。

 

 

“Gold Cup” ジョンソン・プロダクツ製カップ

各種ギミックコインの製造で世界的に有名な、ジョンソン・プロダクツによるカップです。
ゴールドカップというのはこのカップの商品名であって、素材がゴールドというわけではありません。実際には真鍮で出来ています。
確か値段が200ドル超ぐらいでしたからね。本物の金ならそんな値段で出来るわけがありません。

johnsoncup

このカップも基本的には、先ほどのPaul Fox Cupをベースにしていると思われます。
口の内径、底の直径、高さとも、ほとんどPaul Fox Cupと同じです。高さについては数ミリこちらのほうが高いです。

側面のプロポーションもほぼ同じですが、トップに近い部分の輪郭が若干、直線に近い印象になっていますね。そして底面周囲のエッジもしっかりと角が出ていますので、カップ全体に多少鋭角的な印象が感じられます。

側面のリムは、Paul Foxより1本増えて3本。さらに1本ずつのリムが細くなっており、全体を引き締めるような要素となっている感じです。
これを多少うるさく感じるか、ゴージャスなものとして受け入れるかは、好みの問題でしょうね。
基本的にPaul Fox Cupと同様のプロポーションなので、形状から来る性能については同じようなものと考えて良いと思います。

ひとつだけ大きく違うのは、先ほどのPaul Foxレプリカが板材の打ち出しによる成型であるのに対して、こちらゴールドカップは無垢の真鍮削り出しだという点です。そしてここが、価格の差となって現われています。

やはり打ち出し成型に比べると削り出し成型のものは肉厚で、重量があります。
基本的には肉厚で重いほうが耐久性もあり、ある程度カップが重くないとやりにくい技法もあるので、こちらのほうがその点では良いのかなとは思います。
ただ、個人的には通常の手順の中ではあまり重いカップは使いにくい感覚があります。
その点で、このゴールドカップは現在のところ、私の使用頻度1位にはなっていません。

 

Uday製 ブラス・カップ

これは昔ヤフオクで、「イタリア製である」との説明書きと共に売られていたものです。後から調べて、どうやらUdayというメーカーのものらしいと分かりました。
結構安めに思えたので買ってみました。確か3000~4000円ぐらいだったと思います。(もちろん3個セットで)

brassudaycupこれも全体的なプロポーションはPaul Fox Cupに似ています。
口の内径が約65.5mm、高さは70mmです。若干内径が大きいせいか、クライマックスの品物が多少入りやすいような気もしています。

底の部分もPaul Fox Cupとほぼ同じ大きさですが、側面頂部の輪郭を含めて、全体的に丸っこいですね。
さきほどのJohnson Gold CupがPaul Fox Cupを若干シャープにしたデザインとするならば、このUday製はそれを多少面取りして丸めた形状とでも言うべきでしょうか。
側面のリムは多少広く、底面に向かって斜めに尖ったような形状となっています。これは、重ねたときに引っかかりを良くするためか、あるいは見た目のためか、もしくはその両方か。

実際のところ、このカップは今のところは私の愛用ナンバーワンのカップとなっています。
Paul Foxレプリカとほぼ同じ外形ですが、おそらく肉が薄いので、その分若干容量が大きくなっている感じです。そして同じ理由によって、カップ自体が軽い。私は軽めのカップを好むと書きましたが、まずこれがこのUdayカップを愛用する理由の第一でしょう。

軽くて肉が薄いということはしかし、強度に欠けるということでもあります。
手に持った感じとしては、ぐっと思い切り力を込めればひん曲がってしまいそうなぐらいの華奢さはあります。しかし、そう無茶な使い方や事故をしない限りは大丈夫で、もう10年以上現役で使っているカップです。

 

テンヨー製カップ

日本を代表する手品用品メーカー、テンヨーで製造・販売されていたカップです。
思えば、これが私が初めて購入した本格的なカップ・アンド・ボールの道具でした。

tenyocup

これは写真をご覧になれば分かるかも知れませんが、Paul Fox Cupに比べると随分と背が高いカップです。
口径は約65mmと、すでに紹介したものと同様ですが、高さは約82mmあります。
高さだけですが大きい分、やはり容量には余裕はあります。クライマックス用の品物を選ぶ際にも、上述のものよりストレスが少ないでしょう。

Paul Foxタイプと並べて見ると、背が高くとんがり帽子のような印象さえ抱きますが(もっとも、さらに背の高いJohnny Paulカップなどもあります)、このカップ自体は綺麗なプロポーションです。

 

ただし個人的にはこのカップの不満が2点あります。

ひとつは、底面の大きさと形状です。
大きさについては若干小さいかなという程度ですが(約39mm)、底のくぼみがかなり深いのです。
これは1個のボールを乗せるときの安定性を重視した結果だとは思いますが、スライドムーブなどの特定の技法が非常にやりにくく、また3個のボールを乗せたときの安定性にも少し欠けます。

もうひとつの不満は、側面リムの位置です。
これはカップ全体のプロポーションが細長くなったことの結果だと思いますが、リムから口までの距離が少し長くなっています。
1個で見れば大した違いはないですが、3つ重ねたときの全体のプロポーションとしては、このテンヨーカップのほうは随分と細長く、バランスが悪く感じてしまうのです。
下の写真は、真ん中のカップが、テンヨーカップを3つスタックした状態です。

3cup

その他、表面のクロームメッキ仕上げや肉の厚み等、全体的な品質はさすがテンヨー、それなりの良さがあると思います。
が、余談ですがセットに付属のマジックウォンドは、プラ製のあまりにチープなものでしたね。

 

Riser Mini Cup

これはJames P. Riserという、奇術用品を中心としたハンドメイドを手がけられている職人さんの、個人サイトで購入したものです。

risercup

少し小さなカップですが、ハンドメイド品なので、一般に売っている通常サイズのカップよりは遥かに高かった記憶があります。

カップのプロポーション、手で握ったときのフィット感、それから上の写真にも写っている小ボールとの大きさのバランスなど、モノとしての存在感は抜群です。このあたりは、さすがにハンドメイド品というところでしょう。

ただ、口径51mm、高さ54mmというミニサイズでは、ラストにレモンなどを出現させることはまず無理で、個人的にはあまり使用機会はありません。小ぶりなプロポーションは、テーブルホッピングなどのスケール感に最適という感覚はあるんですけどね。レモン出現にこだわらず、例えばゴルフボール等を用いれば、効果的に使えるかも知れません。

それから、このカップは円形の銅板を少しずつ叩いて磨いて成型されたもので、特に表面処理みたいなことはなされていません。そのせいか、私の持っている他の真鍮製カップよりも酸化してくすみやすい感じです。上の写真ではずいぶんとくすんでいますよね。
本当は、定期的に金属磨きで磨いてやるなどのメンテナンスをすれば、綺麗に保てるのかも知れませんが。
もっとも、常にピカピカが良いとは限らず、年季の入った古びた味もまた、カップ・アンド・ボールという奇術には似合うとは言えそうです。

 

ヒンズー・カップ

ヒンズー・カップとかインディアン・カップなどと呼ばれる形状のカップです。
カップ・アンド・ボールといえば一般的には西洋のストリートから発展したマジックですが、同様の奇術は世界各地にあります。日本では和妻の演目である「お椀と玉」がそれに当たります。そして中国やインドにも独自のスタイルのカップ・アンド・ボールが伝統芸として伝えられています。

そのインドの伝統的なカップ・アンド・ボールで用いられるカップが、このヒンズー・カップです。

hinducup

ヒンズー・カップの演目はインドのストリート・パフォーマンスとして伝統的に演じられているもので、地面に敷物を敷いて、あぐらをかいて座った状態で演じるスタイルです。観客は周りから見下ろすような形になります。

日本のお椀と玉に「お椀返し」の技法があるように、このヒンズー・カップにも、演技スタイルに適した独特の技法が存在します。上の写真に見られるような、ちょっと変わったワイングラスみたいな形状のカップの柄の部分は、その技法に適した形となっています。

ヒンズー・カップでは西欧のカップ・アンド・ボールとは異なる独特の技法や雰囲気があり、欧米のマジシャンにも結構好まれている印象です。インドは英国植民地として歴史的に欧米との距離が近かったこともありますが、直接的にはイギリスのマジシャン、エディ・ジョセフや、アメリカのチャーリー・ミラーによる研究・紹介が、ヒンズー・カップが欧米である程度認知された大きな理由でしょう。

そういうわけで、ヒンズー・カップの用具は欧米の奇術用品メーカーからも色々と販売されています。
上の写真の用具はアメリカのマジックショップで購入したもので、ご覧のとおりカップとデザインを合わせたウォンドが付属しています。両方とも木製です。
ちょっとオリエンタルな雰囲気が面白いかなと思って買ってみましたが、現在のところまだヒンズー・カップの手順としては使用したことがありません。一応Eddie JosephによるIndian Cup解説書は入手済みなのですけどね。そのうちやってみたいと思います。

 

ミニカップ

カップの最後にご紹介するのは、ミニカップです。
先ほどご紹介したRiser Mini Cupも小さなカップでしたが、あちらはまだ通常のカップの範疇に入る大きさでした。
こちらの製品は本当にミニチュアと言ってよい大きさで、口径約31mm、高さも約34mmしかありません。付属のボールは黒く、正露丸みたいな感じです。

minicupこの道具で例えば、ダイ・バーノンの手順のような本格的カップ・アンド・ボールの手順を演じることは、相当に困難です。テンヨーの悟空の玉のような基本的手順なら問題ないですが。そういったカップ・アンド・ボールの手順よりはむしろ、スリー・シェル・ゲームの手順に向いている用具かも知れません。

ただ、正直な感想を言うと、スリー・シェル・ゲームを演じるならいわゆるクルミのシェルなどのほうが使いやすいわけで、やっぱりこれはコレクション・アイテムかも知れませんね。購入の動機としては、積極的に手順に使おうと思ったわけではなく、なんとなく珍しそうだと感じたからというだけです。

参考までに、この動画の演技はMini Cupを用いての、悟空の玉のような手順ですが、こんな感じでゆったりと演じれば、確かに雰囲気が出て面白いかも知れませんね。
この動画のカップは私の紹介しているものと似ていますが、動画のカップは重ねたときにしっかりとかぶっていませんね。私の持っているものは、普通サイズのカップと同じくしっかりとスタック出来ます。似ていますけど、別の製品なのでしょう。

なお、左側に写っている赤い袋はこの製品に付属していたものではなく、余っていたレザーの端切れを使って適当に自作したものです。見た目はそう悪くないですが、袋も紐もレザー製というのは、実際には摩擦で締めにくくて失敗。

 

ボール

カップ・アンド・ボールには基本的に小石程度の大きさの物であれば何でも使えると書きましたが、現代のオーソドックスなカップ・アンド・ボールでは、下の写真のようなニットボールが使われることが多いです。カップ・アンド・ボールのセットに付属しているボールも大抵はこのタイプです。

balls2カップ・アンド・ボールでは伝統的に、コルクを削りだした玉が使われており、見栄えよくするために彩色して使用されることもありました。
現代ではコルクの芯を毛糸のニットで覆っており、見栄えと、ぶつかったときの音の問題を改善しています。しかしこれによって、無垢のコルクでは可能であった技法が困難になったという面もあり、その点はトレードオフと言えます。

いずれにしても現代のカップ・アンド・ボールでポピュラーなのは、上の写真のようなニットボールです。
大きさは、写真の右に写っている小さいサイズのものが直径約22mm。左側の大きいものは、直径約26mmです。
どちらのサイズが良いかは好みにもよりますが、個人的には大きいほうが演技も見栄えがして良いと思っています。現象の見栄えだけでなく、通常のPaul Fox Cupなどの大きさのカップに乗せたときの、大きさのバランスからも、26mmのボールのほうが個人的には好みです。

hikaku

カップ・アンド・ボールのセットにはボールが付属していることもあります、上で言う小さいボールが付属していることも多いです。ちなみにテンヨーのカップに付属していたのは、小サイズの白いボールでした。

 

ニットボール以外で使われるボールとしては、即席の紙玉など以外に、スポンジボールやスーパーボールなどもあります。スポンジボールを使うと、ニットボールでは出来ない独特の技法を使うことが出来るので、また表現の幅が異なってきます。
アメリカのマジシャンには、ミニチュアの野球ボールを使う人も多いです。これだとクライマックスも野球ボールを出現させることが出来、統一感が出ます。
また、ポール・ガートナーの鉄球を使った手順も有名です。

 

ウォンド

現代ではウォンドを用いないカップ・アンド・ボールの手順も多いのですが、やっぱり伝統的なイメージから、カップ・アンド・ボールとウォンドの関係は深いです。
カップ・アンド・ボールのセットにウォンドが付属していることもありますが、ボールよりは付属されている割合が低いと思えます。そういう場合は自分でウォンドのみを別に買い求めたり作ったりということになるわけです。カップ・アンド・ボールに限らず、結構広範なマジックで使用される道具ですから、マジックを本格的にやるなら持っておいて損はないでしょう。

wand

ウォンドは単なるおまじないの用具や雰囲気づくりというだけでなく、カップ・アンド・ボールにおいての実用上のしっかりした目的があります。
ただ、やっぱりウォンドを使うとどうしてもちょっと構えた演技というか、ある意味で古めかしい雰囲気を作ってしまうのも事実です。
この点が、人によってはウォンドを好まず、また同時に別の人は好む理由にもなりそうです。

ウォンドも製品によって微妙に様々な長さや太さ、重さがありますが、私の好みは長さ35cm、太さ9mm程度のものです。そしてあまり重量がありすぎないものが良いと思います。
個人的には、上の写真に写っている下かた2本目の、Mercury Wandがベストです。

ウォンド自体については、以前書いたマジックウォンドの記事も併せてご参照ください。

 

その他の用具

上に挙げたカップ、ボール、ウォンドが、カップ・アンド・ボールの基本的な用具ですが、さらに手順によって必要なもの、あったほうが便利なものについて紹介します。

 

ロード用の品物

これはあったほうが良いというより、大抵の手順では必要なものです。
カップ・アンド・ボールの奇術ではクライマックスに、それまで使用していたものとは全く違う、大サイズの品物を出現させて終わることが多いです。
これはいわばこけおどしに近い要素も確かにあり、賛否両論のあるものではありますが、実際にカップ・アンド・ボールを演じるマジシャンは、大抵はこのパターンのエンディングを用いています。

カップに入る大きさで、観客の意表を付くものなら何でも良いのですが、よく使われるのはレモンやジャガイモといったものです。
これは、カップやボールという人工物に対して、自然物という対比が効果的だからということもありそうです。

lemonまあ別に、単なるレモン程度のもの、わざわざ写真で紹介するまでもないのですけどね。
この写真ではレモンが3個にライムが1個写っていますが、カップ3個を用いる通常の手順であれば、ラストはこのように4個は出現させるのが望ましいと思います。これはダイ・バーノンが言っていることだったと記憶しています。

この理由としては、3個であれば何とかして、カップに最初から押し込んで隠していた可能性がありそうにも思えるが、4個が出現すればその疑いが完全に払拭されるからです。
個人的には、その4個目は他3個とは異なる物体にするのが、バランス的に良いように思っています。もちろん4個全部異なる物を使っても構いません。ただ、カップに入る大きさで4種類の異なる果物や野菜を探してくるのは大変ですが・・・

同じ自然物でも、レモンよりもジャガイモを使うことを好む人も居ます。ミスター・マジシャンの根本氏によれば、スマートなカップ・アンド・ボールという奇術の雰囲気に対して、いわばダサい感じがするジャガイモが、滑稽な効果を生むということです。
確かに、レモンのほうがスマート、ジャガイモはちょっと高級感がないというのはうなずける気がします。

ちなみにこのレモンその他の品物ですが、これは絶対に本物を使うのが良いです。
もちろん模造品であっても、押しつぶしたりできない品物であれば、演じる側としては実質的には同じことなのです。しかし、一般の観客は驚きのポイントとして、レモンが本物であるかどうかということを意外なほど気にします。

こういう自然物ではなく、もっと用具として気軽に扱ったり保管したり出来ることを重視する人は、小さいニットボールと同じ素材で出来たジャンボサイズのボールを用いる人も多いです。ミニチュアの野球ボールやテニスボール等を用いる演技であれば、そのまま大サイズの野球ボールを出現させることは理にかなった構成です。
ポール・ガートナーのSteel Cups and Ballsでも、ラストは巨大な鉄球を出現させて終わっています。

 

カップを収納する袋

カップを入れて持ち運ぶことの出来る袋です。
カップの商品によってはカップと玉だけの商品内容のものも多いですが、専用の袋が付属している商品も結構あります。
私の持っているカップ・アンド・ボール用の袋は、以下のものです。(これ以外にもありますが、だいたいどれも似たようなものなので割愛。)

cupbag

右から2番目の袋は自作、そのほかは既製品です。
一番右のものは、上で紹介したUdayのカップに付いていたもので、ジッパー付きのペンケースのようなものですね。
左から2番目のものは、同じく上で最初に紹介したクロームメッキのPaul Fox Cupに付属していたものです。これは合皮製でしっかりした造りで、それなりの高級感があります。

チョップ・カップの袋なども含めて、一般にカップ・アンド・ボールの袋といえば上の写真でいう左3つのような、巾着袋タイプのものです。
ただの収納袋としての用途ではなく、この袋が手順に関わってくることもよくあります。袋が準主役のような位置を占める傑作手順としては、トミー・ワンダーのカップ・アンド・ボールなどがよく知られています。

私の演じている手順でも、この袋を利用した技法を行う箇所がありますので、実際に使っているのはほとんど全ての機会において、写真の右から2番目の自作袋です。その技法を行うには、袋の大きさや紐のゆるみ具合が関係してくるので、既製品の袋ではなかなかうまくいかないんですよね。

一番右のUdayカップの袋は、単なる収納や持ち運びには全く問題ないですが、もちろん上述のような袋を利用した技法には使えませんし、ただの袋としても、演技の場で出してくるにはイマイチ雰囲気に合わないという感じはしますね。

こういったカップ・アンド・ボール用の袋というのは、あまり単体では売っていないと思われます。
購入したカップに袋が付いていなかったり、付いていても気に入らない、用途に適さないなどの不満があるならば、自作するのが一番良いのではないでしょうか。

この袋自体は何の変哲もない巾着袋ですが、機会があればこれの作り方なども当サイトで扱ってみようかなと考えています。

 

クロースアップ・マット

クロースアップ・マットはマジックを演じられるときに下に敷く敷物で、表面の布地と、クッション材、滑り止めなどを層にして合わせた小さめの絨毯のような製品です。
カップ・アンド・ボールに限らずクロースアップマジックのテーブル上で演じられるマジックでは一般的なもので、マジックの雰囲気作りに非常に有効です。
雰囲気づくりだけでなく、コインマジックのマトリクスのように、まずマットがないと不可能なマジックもあります。

カップ・アンド・ボールではマットは必須とまでは言えませんが、あったほうが雰囲気が出ますし、やりやすさにも差が出ます。例えばカップを横倒しにした状態だと、硬いテーブルの上では予期せずゴロゴロと転がってしまう恐れがありますが、マットの上ならそれほど心配はありません。

ここではクロースアップマットの具体的な商品を紹介することはしませんが、カップ・アンド・ボールに用いる場合のポイントをひとつだけ書いておきます。

それは、ボールとマットの色の対比についてです。
以下の写真をご覧になって、どう感じられるでしょうか。

ballsandcloseupmatこの写真ぐらいの距離だとそれほど問題ないように思われるかも知れませんが、赤系のマットに赤いボール、これは少し距離が離れるとボールの視認性(見やすさ)が悪くなります。上の写真ではマットはえんじ系の色調ですが、市販品にはもっと鮮やかに真っ赤なマットもあります。そういうマットを用いればさらに見にくいでしょう。

基本的にカップ・アンド・ボールは、ボールを見てもらってナンボの奇術です。
ですから使用するマットは、ボールに対して明度や色相の差が大きいものを使用するべきです。赤いボールに対しては補色である緑系統のマットが望ましいでしょうし、赤系のマットを使うなら明度差の大きい、白いボール等を使えばよいでしょう。マットが黒であれば、普通の色のボールとは明度差が大きいので、大抵の場合は大丈夫です。
補色の関係というだけなら、赤いマットに緑のボールでも良いのかと思われるかも知れません。これも悪くはないでしょうけども、赤は膨張色、緑は退行色なので、やはり逆のパターンに比べるとボールが目立ちにくくなります。
このような関係は、スポンジボールのマジックなどにも当てはまります。

まあ必ずしもそこまで理屈っぽく考えることはありませんが、要するにボールが目立つような色を使うべきなのは間違いありません。

 

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コメント

    • おしゃまんべ
    • 2013年 8月 23日

    はじめまして、コメントを書かせてもらいます。
    カップ&ボールの記事を読ませてもらい、大変学ぶことが多い内容でした。
    ボクもカップ&ボールが大好きでよくレパートリーにいれています。しかしカップ&ボールがあんなにも奥が深いこととは知りませんでした。そしてカップ&ボールのクライマックスにレモンやじゃがいもなどの自然物を出すことでインパクトが上がることなど感心しました。ボクは、大きめのスーパーボールをいつも出して演技しています。
    次回からはそのようなことも踏まえてやってみたいと思います。長文失礼しました。

    • ありがとうございます。
      用具について気のおもむくままに書いたので、ちょっと長すぎて退屈な文章ではないかと反省していました。
      そのような感想は嬉しいです。

      最後の品物ですが、もちろんスーパーボール等でも、それはそれで良さはあると思います。
      ただ、それしか使わないことに決めてしまうのではなく、色々考えて挑戦してみると良いですね。
      自然物の出現といえば、究極は生きたヒヨコの出現でしょうけども、さすがにそれは敷居が高いですね。

    • 峯崎浩一
    • 2013年 8月 25日

    スタンダップで演じるなら、ロードする物を隠しておく
    大き目のポケットが付いたジャケットも必要かと思います。
    特に4個も出現させるとなると嵩張りますからね。

    ところで Johnny Ace Palmer はどうやってヒヨコを
    隠しているのでしょう? (^-^;

    • そうですね。
      私の場合は、多少余裕のある普通のズボンで、上着で軽くかぶるぐらいの状態でやりますけど、ポケットを加工する人も居ますね。
      ストリートだと、Gazzoみたいに腰カバンをセルバント的に活用する人も多いです。

      Johnny Ace Palmerは確か座って演技してますから、膝のあたりに何とかしてセットしてるんじゃないですかね。
      私は観たことないですが、彼の3巻組だったかのレクチャービデオも出ていました。あれにならそのへんも解説してあるのかも。

      ちなみに、手元にある「Magic and Methods of Ross Bertram」にもヒヨコを出すカップ&ボール手順が載っていました。
      その手順ではスタンドアップの演技で、ヒヨコをそのままズボンのポケットにセットする、と書いてありました^^;

    • 前田慶次
    • 2016年 2月 27日

    カップ&ボールの記事読ませていただきました。自分も昔から奇術、マジックには興味があり、カップ&ボールもそのひとつですが、材質や色、重さや質感などによって、演技そのものが変わってくると聞いた事があります。初心者でも使いやすく、そこまで高価でなく、入門的な感じで購入するならどんなカップ&ボールを購入したら良いでしょうか?
    ご意見、アドバイスなどいただけたら幸です。

    • 前田さん、コメントありがとうございます。
      専用のカップの中では、記事でも挙げたUday製のものが、比較的安価で品質もよくお勧めです。
      日本でも買えるようですが、最近の円安のせいか、少し前よりは高くなっていますね。
      http://magicfan.shop21.makeshop.jp/shopdetail/011000000059/011/O/page1/brandname/

      またUday製に限らず、真鍮やニッケルよりはカッパーのほうが安い傾向がありますので、値段を重視されるのならカッパー製も良いと思います。

      カップ&ボールそのものは、別に専用のカップではなく、普通のマグカップや紙コップなどでも出来るものですので、まずはそういう即席に出来る手順を練習してみるのも良いです。
      そうやって、ある程度自分の納得いくレパートリーになりそうな手ごたえがあれば、本格的な道具に移行しても良いかと。

      参考になりましたら幸いです。

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