近年はとくに、日本でも専門的なマジック関係の書籍が充実してきましたが、それでもやっぱり、まだまだ英語圏のマジック書籍の情報量には及ぶべくもありません。
マジックを本格的に研究し、オリジナル作品を作ったりするとなると、自分の扱うテーマについてどのような先例があるのか、参考となる技法は無いか、など、洋書の原本にあたる必要が出てきます。
すでに和訳されたものだけを拠り所としていたのでは、やはり限られた情報にしか触れられないのは事実です。
そこで洋書を漁歩的に読み漁る必要が出てくるわけですが、大量の洋書を所有し、日常的に英文に触れている研究家ならばともかく、大量の洋書文献の中から自分の求める情報を探し出すのは困難です。
ネット社会はその点便利なもので、一昔ならば考えられなかったほど情報検索の効率は上がっています。
MagicCafeで質問する、などの他力本願的な方法も有効ですが、今回は上記のような用途におすすめのサイトを紹介します。
Denis Behr氏のマジック本アーカイブ
今回ご紹介するのは、ドイツのマジシャンであるDenis Behr氏のサイトに設置されている、マジック関連書籍のデータベースです。
Denis Behr氏は、”Handcrafted Card Magic”などの書籍も出版している、実力派のクロースアップマジシャンです。
Denis Behr氏のサイト自体も、氏自身による演技動画など、魅力的なコンテンツがたくさんありますが、その中でもSearchable Magic Book Contentsと題されたマジック書籍データベースはとても役に立つ内容で、近頃よく利用させてもらっています。
このサイトには、2012年5月時点で319点に上るマジック関係の出版物の情報がデータベース化されています。
登録されている情報は、書籍名、著者、出版社、出版年、ページ数、そして掲載マジックの作品名と作者名、作品の簡単なプロット、掲載ページが含まれています。
マジシャン名での検索
とくに掲載されている各マジック作品の情報が貴重です。
例えば、ギャロー・ピッチで有名なLou Galloの作品にどんなものがあるか知りたいとします。
検索窓に”gallo”と入力すると、候補となる人名が出てきますので、その中から”Lou Gallo”を選択して検索します。
すると、以下のように10件の検索結果が出てきました。
“Collected Almanac”や、”Best of Friends”にそれなりの数が掲載されていることが分かりますね。
もちろん、書名のところをクリックすれば、その本のページに飛んで、目次全体を見ることが出来ます。
日本人マジシャンも、海外で知られている人の情報は入っています。
例えば前田知洋さんを検索してみましょう。
“maeda”と入力すると、”Tomo Maeda”の名前が出てきました。
検索結果は以下のようになりました。
6件ですね。
“Five Times Japan”と”New Magic of Japan”の2冊の情報が出ています。
Genii Magazineにも前田さんの発表作品はありますが、それは登録されていないようですね。
マジック作品名での検索
マジシャンの名前でではなく、マジックの作品名で調べるのも有効です。
例えば、ラリー・ジェニングスのオープン・トラベラーのバリエーションを知りたいとしましょう。
検索窓に”open traveler”と入力して検索しますと、以下のような結果になりました。
作品名だけでなく、作品のコメント文からも結果を拾ってくるので、関連作品を広く調べるのに重宝しそうです。
掲載書籍について
319点とは多いようですが、世の中にある奇術文献の全体数から見ればまったく少数だとは思います。
実際、雑誌関係は弱いようですね。
さきほど私は”Pallbearer’s Review”という雑誌の情報を探していたのですが、これは残念ながら載っていませんでした。
GeniiやMagicといった現行の奇術雑誌も登録されていないようです。
それでもやっぱり、近年発行されたものを中心として、有名な本として思いつくような本は大多数が掲載されている印象ですし、調べ物の参考としては充分に役立つ内容でしょう。
単に自分の蔵書を羅列して掲載するだけでなく、こうやって検索可能なデータベース化して公開してくれていることに、感謝しています。
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