このマジックは比較的よく知られています。
「エースの体操」という直訳風の題名よりも、英語のカタカナ表記である「ジムナスティック・エーセス」という呼称のほうが、日本人マジシャンにとってもなじみが深いかも知れません。
ポール・ルポールの作品の中でも、今日最も広く知られている作品ではないでしょうか。
ルポールの名が付くものとしては、いわゆる「ルポールの財布」と呼ばれる用具はありますが、少なくとも今日演じられているものは、ルポールの作品とはほとんど呼べませんので。
デックの中に混ぜ込んだ4枚のエースを1枚ずつ出現させる、という、比較的単純でよくあるパターンの現象ですが、唯一無二と言ってもよいユニークな原理が用いられており、ほとんどこの原理というか現象の面白さだけで成り立っているような作品です。
カードマジック事典の掲載作品です。
ルポールによるジムナスティック・エーセス
では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。
お断りしておかなければならないのは、この動画の4枚目のエースの扱いに関しては、ルポールの原案通りではありません。
ルポールの手順では、4枚とも同じように出現させて終わる形となっています。
このように、軽く「コレクティング・ア・ミステーク」(いったん間違えたカードを、正しいカードに変化させて見せる現象)的な扱いで見せるのは、昔ジョン・カーニーがテレビの演技で行っていたものを参考にしてみました。大昔の良質なマジック番組、「マジック・マジック」です。
一般にルポールの作品の良さは、シンプル&ダイレクトであり、このような小手先の演出を加えるのは良しとしない向きもあるかも知れません。が、個人的にはまあこのぐらいの演出は現代的で良いのではないかと思います。
似たようなパターンで、マッチング・ザ・カードみたいに、最初に出した3枚のほうがラストのカードに合わせて変化する、というプロットもありますが、このジムナスティック・エーセスでそれを達成するのはなかなか困難ですね。
この演出はさておき、パーシャル・ファロー(ファロー・シャッフルで一部のみ噛み合わせた状態)から、このように1枚ずつカードを取り出すことが出来るというのは面白い原理です。
しかしこの原理を応用したほかの傑作が、ちょっと思い当たらないというのは、原理の発見とともにマジックとしても完成されてしまったということでしょうか。いえ、ルポールがこの原理を発見したのかどうかについては未確認ですが。
ただ、このファローからの出現方法ですが、デックから1枚ずつカードを飛ばす他の方法と比べると、若干コントロールが難しいのは確かだと思います。飛ばす方向とか距離とか、裏表の向きとか。
このあたりも、なかなか他の手順に組み込みにくい理由なのかも知れません。
「エースの体操」ジムナスティック・エーセスを解説した文献等
この作品は元々、ポール・ルポール著「Card Magic of LePaul」に解説されました。
この本は高木重朗氏の翻訳により、東京堂出版より「ルポールのカードマジック」として出版されています。現在は絶版なので、入手は多少困難となっています。
また、この手順は「カードマジック事典」にも掲載されています。
手順のアウトラインを知るにはこの本の解説で十分かと思います。
私は昔、これと弾丸カードをつなげて演じてました。
もう一度フェローをかけ、今度は違う方法をお見せすると言って
リフルで相手に一枚覚えてもらい、先に出したスペードAを弾丸に見立て
相手のカードを飛び出させて当てるって感じです。結構受けました。
弾丸カードはカードマジック入門事典に載ってます。
>峯崎さん
確かに、弾丸カードもパーシャルファローですし、続けて演じるのは良いアイデアですね。
先に出したエースをそのまま使えるというのも素晴らしいと思います。
アイデアのシェア、ありがとうございます。