【基本用具】マジックウォンド:実用と雰囲気づくりを兼ねたマジシャンのアクセサリー

マジックウォンド

ウォンドとは短い杖のような棒で、かつて西洋の上流社交界で闊歩する紳士達の必需品でもありました。

近代奇術の開祖とも言えるフランスの奇術師ロベール・ウーダンは、それまではいかにもおどろおどろしい魔術的な雰囲気で演じられてきた舞台マジックの世界に、当時の社交界の一流紳士の身だしなみを取り入れて改革しました。

それがいわゆる、燕尾服にシルクハットをかぶって、手にはステッキを持ちながらトランプを操るというような、今日のステレオタイプ的なマジシャン像の原型ともなっていると思われます。

 

そんな西洋社交界のファッションアイテムであったウォンドは、奇術師にとっては単なるファッション以上の意味を持つに至りました。
今日のクロースアップマジシャンで燕尾服やシルクハットをまじめに着用する人はいないと思いますが、マジックウォンドは現在でもマジシャンの必須アイテムとして生き残っています。

 

雑誌やネットで著名マジシャンの死亡を報道するとき、ブロークン・ウォンド”Broken Wand”と表現されることがあります。
直訳すれば「折れたウォンド(杖)」ということで、これはマジシャンそのものをウォンドに見立てた表現ですね。
そのくらい、マジシャンを象徴するアイテムとして認知されているということでしょう。

 

マジックウォンドがどのようなものであるかについては、一番上に私が所持するマジックウォンドを並べた写真がありますので、そちらをご覧ください。
基本的には、長さ30~40cm前後ぐらいの、片手で持てる棒状の用具です。

 

マジックウォンドの用途

マジックウォンド、あるいはマジシャンズ・ウォンドの用途としては、実用目的と装飾目的のふたつの面があります。

 

装飾目的のほうは見てのとおりです。

シルクハットやステッキほどは仰々しくなく、気軽にマジシャンらしさを演出するアイテムとして、マジックウォンドはよく使われます。

 

例えば映画「ハリー・ポッター」シリーズをご覧になった方は記憶されていると思いますが、主人公達が魔法使いになるための必須アイテムとして、魔法道具屋で小さな杖を購入する場面がありますよね。
あれがまさにマジックウォンドです。
魔法使いがウォンドを振るって魔法を繰り出すように、奇術師もマジックウォンドを用いて不思議を起こすのだ、という演出を用いることは多いです。

 

実用目的としては、主にクロースアップマジックにおいてですが、秘密技法をカバーする理由づけのために使われることがあります。
典型的なのは、コインやボールなどをパームした手にウォンドを持つことによって、物を隠していることが不自然にならないようにする使い方です。
何も持っていない手を単に閉じていると不自然ですが、ウォンドを持っていれば、手が軽く握られていても不自然には見えないということですね。
その他、ウォンドを取りにいく動作のために、右手のボールを左手に預けるなど、動作そのものの消極的な理由付けに活用されることも多いです。

 

クロースアップマジックにおいてウォンドがよく使われるのはカップ&ボールやコインマジックなどで、カードマジックで使われることはめったにないですね。
やはりフェイクパスやパームをカバーするという意味あいが大きいので、必然的にカードマジックでは使用機会が少なくなるのでしょう。

 

ステージマジックの分野では、補助的にではなくウォンドをメイン素材に使う演技も存在します。
カードマニピュレーションほどメジャーではないですが、ウォンドをたくみに操り出現・消失・増加・変化などを見せるウォンドマニピュレーションは、ステージマジックで一定の分野を築いています。
日本ではとくに学生マジックにおいて盛んに演じられていますね。
かつては川田浩一さん、近年では加藤陽さんなどが、ウォンドマニピュレーションの名手として知られています。

 

その他、シルクのハンカチを消すためのウォンド、卵からカードを出現させるためのウォンド、客が持った瞬間にバラバラになるウォンドなど、特定のマジックやギャグのために特別に製作されたギミックウォンドも多数存在します。

 

私のウォンド紹介

ここでは私の持つウォンドを紹介します。
先に述べたステージのアクトに用いられるような色変わりや増加のためのウォンド、またジョークに用いられるブロークンウォンドや、光や音を出すウォンドなども存在しますが、私の持つものはすべて基本的にただの”棒”です。

 

magicwandマジックウォンド

道具箱の中から出してきたウォンドを8本ほど、適当に並べてみました。

市販品と自作品が混じっています。
以下、それぞれ簡単に紹介してみます。

 

magicwandマジックウォンド

この写真の上のものは、自作品です。
クロースアップマジックの名手ロス・バートラムの生前の映像で、スネークウォンドと呼ばれる蛇の頭が付いたウォンドを使ったカップ&ボールの演技がありました。
このスネークウォンド、ロス・バートラムタイプのカップ&ボールセットの一部として販売されていたこともあったようなのですが、今でも売っているのかどうかは分かりません。

 

でもその映像に魅了されて、ぜひこのウォンドがほしいと思ったんですね。
オリジナルのスネークウォンドは、ちゃんと目や口の付いた蛇の頭が先端に付いていましたが、私のものはここは丸く抽象的な形としています。
その点で、古い魔法使いの杖の小型版のようなイメージも意識しています。

 

作り方をざっと説明すると、このウォンドの全体的な形状は、ゆるやかで立体的な螺旋を描いた棒ですので、まずこの螺旋の最大直径を包含するような太い木の棒(直径25mmぐらい?)を用意します。
そしてその太い棒の周囲をらせんを描くような形で少しずつ削り落としてゆき、最終的には直径9mmぐらいのゆるやかにうねる棒の形状を削り出す、ということですね。
最終的にはもちろんサンドペーパーで研磨して、塗料とニスを塗っています。

 

この作業、彫刻刀や小刀、やすりなどを使ってすべて手作業で削り出していったので、実労でおそらく4時間以上はかかったのではないでしょうか。
このウォンドはマジック関連の知人に結構好評で、買えるなら買いたいと言ってくれた人さえいました。
しかしやはりすべて手作業ということを考えると、割りに合う値段を付けると高くなりすぎますね・・・
きちんとした木工機械などを揃えて省力化すれば、売れる値段でも作れるかも知れませんが。

 

さて写真の下のウォンドは、Magicwarehouseで買った木製のヒンズーカップ(インド式のカップ&ボール)のセットに付属していたものです。
カップと合わせたデザインのウォンドで、ちょっとアジアンテイストの模様がほどこされています。
なお、これは象嵌などの高級な作りではなく、単に木製のウォンドに塗装で模様が描かれただけのものです。

 

自作のスネークウォンドは、作ってから数年間はかなり愛用していました。
ヒンズーのウォンドのほうは、まったく使ってないですね・・・
ヒンズーカップそのものも、今のところ1回も使ってないですし^^;
このヒンズーカップに関しても、そのうち機会があれば紹介したいと思います。

 

magicwandマジックウォンド

はい、この2枚目の写真に写っているのは、どちらも既製品です。

 

まず上のウォンドですが、これはマイケル・アマーが販売しているマーキュリー・ウォンドという製品です。
見た目はシンプルな黒いウォンドの端部が銀白色となっているもので、まあマジックウォンドの典型的なデザインですね。
作りもシンプルそのもので、これはこの長さのアルミ無垢の棒に、ゴムのような黒い筒状のカバーがかぶっているだけなのです。
異種材料のカバーがかかっているだけで接着されていないので、温度の高い環境ではカバーがゆるんでずれやすくなることもあります。
まあ、使用に差し支えるほどではありません。

 

なんか安い造りを批判したような書き方になってしまいましたが、このウォンドは非常に使いやすいです。
長さと重さ、そして太さのバランスが最高で、さすがカップ&ボールの名手であるマイケル・アマーのプロデュースだけのことはあると思っています。
とくにカップ&ボールで使われるバーノン・ウォンド・スピンを行うには最適のウォンドですね。
あの技法、ウォンドが軽くても重くてもやりにくいんですよ。
無個性とも言えるシンプルなデザインなのもいいです。

 

写真の下に写っているウォンドは、詳しくは忘れましたがおそらくMagic Makers Inc.の製品だと思います。
真鍮製のカップ&ボールとセットになっている商品を購入しました。

 

このウォンドは、造りはかなり高級な感じです。
先端の金属部分、軸の木製部分ともに、塗装などではなくそれぞれ金属と木材で作られています。
いや、木のほうは合成材料かも知れませんけどね。
そして中央の真鍮リングの部分がネジ式になっており、ここから2本に分割できるようになっているのです。

magicwandマジックウォンド

上の写真のように、かなり精巧に出来ています。
まあ分割したからどうだっていう人もいるでしょうけども、これはカップ&ボールのセットと一緒に持ち歩くためですね。
やはりマジックウォンドというものは、そのままだとどうしたってカップ3個を重ねた状態よりも長いので、一緒に袋には入れにくいわけです。

 

このウォンド、つくりは高級でいいのですが、わたしにとっては少し使いにくいです。
ちょっと重過ぎるんですよね。
もちろんこれで練習すれば出来ないことはないのですが、例えば上のマーキュリーウォンドと同じ感覚でウォンドスピンをやろうとすると、勢い余って落としてしまいます。
実際、わたしは演技中にウォンドスピンのところで落としてしまって、高級なテーブルを傷つけそうになったことがありました^^;
出来ないことはないと書きましたが、慣れてもやっぱりウォンドスピンはやりにくい感じです。
そういうわけで、個人的にはお蔵入りに近いウォンドです・・・

 

magicwandマジックウォンド

さてウォンド紹介も後半になりました^^

 

上の2本はどちらも自作です。
両方とも同じような考えで製作したもので、要はウォンドの先端部と軸部分を別素材で作って、それを金属のリングで連結するというものです。

 

上のウォンドは見てのとおり、軸に木材、先端部分には透明アクリル棒を使用しています。
下のウォンドは写真では分かりにくいかも知れませんが、軸と先端に異なる木材を使用しています。
軸の木質は忘れましたが、先端は確かエボニー(黒檀)です。

 

この造りによるウォンド、コンセプトは悪くなかったかも知れませんが、まあ手作業の限界といいますか、ちょっと強度に問題があります。
やっぱり金属リング部分の中で異種素材を接着しているので、あまり先端を強くたたいたりすると折れたり曲がったりするんですよね。
両方木材のほうは、内部に芯材を通せばもしかしたら改善されるのかも知れませんが、アクリルのほうは透明なのでその手は使えませんね。
もしかしたらさらに強力な接着剤を使用すればなんとかなるのかも知れませんが、そこまでは試みずに終わっています。
でもまあ、見た目はそう悪くもないのでは・・・?^^;

 

magicwandマジックウォンド

さて、最後の2本ですが、これも両方とも自作(?です。

 

まず上のほうですが、これは単なる木製の棒を、塗装でウォンドっぽく塗り分けただけのものです。
一応リング部分にはメタル系アクリル塗料を、軸部分にはむらを付けて塗装した上から透明色でグラッシのように色づけして、オニキスやマーブルのような石質系の質感を出そうとしてみたものですが。
まあ長い年月が経ってるので、若干朽ちてはいますね^^;とくにシルバーのあたりなどが。
このようにごく簡単で安い造りのものではありますが、それだけに丈夫で使いやすく、作った当時はそれなりに頻繁に使用していました。

 

下のものは、自作というのもはばかられる、単なる透明アクリルの棒です。
一つ前の写真の上のウォンドの、端部の素材に使ったあまりの棒ということなのですが、これが意外とシンプルで使いやすく・・・
まあ少々軽すぎる感じではありますけどね。
こんなような透明のウォンドが市販されていた記憶もあるので、安く済ませたい場合はこういうものもアリではないかと思う次第です。
たぶんこれなら200~300円ぐらいで済むでしょう。

 

最後に

以上、最後は自分の工作紹介みたいになってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。

 

カップ&ボールやシリンダー&コインズなど、ウォンドを使うマジックで魅力的なものはたくさんありますし、そうでなくてもマジックに雰囲気を与えるアイテムとして非常に有効ですので、みなさんも是非自分に合ったマジックウォンドを見つけてみてください。

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コメント

    • ryo
    • 2013年 8月 26日

    マーキュリー・ウォンドはどこで手にいれましたか?

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  • 沖縄で結構な地震が!めずらしい…
    about 1日 ago
  • 「電話はかけてこないで」はあちゅうが考える新マナー Yahoo!ニュース https://t.co/CcOALnkhVh #Yahooニュース →電話のくだりは全く同感である。「確実に連絡が取れるように」と言って電話番号を求められることがあるが、私にとってはメールのほうが確実だ。
    about 2日 ago
  • これだけテレビやモニター技術が発達しているが、ベゼル幅ゼロとか折りたたみ可能ディスプレイというのは、まだまだ実現できないものなのかな。
    about 2日 ago

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