「ハンギング・コイン」デビッド・ロス “Hanging Coins Plus” by David Roth デビッド・ロス初期代表作のひとつ

hangingcoinhead

現代コインマジックの名手デビッド・ロスの代表作のひとつ、ハンギング・コインです。

 

ウイングド・シルバー、チンカ・チンクなどとともに、初期のデビッド・ロスを有名たらしめた作品のひとつです。
それまでのコインマジックになかった画期的な方法論を用いており、当時のマジシャンに驚きをもって迎えられました。

 

1960年代ごろのニューヨークで、まだ無名だったデビッド・ロスからハンギング・コインとウイングド・シルバーを見せてもらったある日本人奇術家は、「全く新しい考え方の技法を用いられると、コインマジックというものは手がかりさえもつかめない、全くの魔法のように見えることを実感した。」と述べています。

 

ハンギング・コインの内容

ハンギング・コインは、直訳すると「吊るすコイン」ということで、コインを透明状態にしてから、空中に吊るす、という若干わかりにくいコンセプトによるプロットです。
このプロット自体はジョン・ラムゼイの発案によるものです。

 

では今回も私の演技動画を作成しておりますので、よろしければごらんください。

>>動画リンク<<

ハンギング・コインの一番の特徴は、手のひらの内側を見せながらコインの消失を明確に示せるところでしょう。
また、このようなハンドリングでありながらLappingやSleevingなどの処理テクニックが一切含まれないことも、この作品を際立たせているところです。

 

このような特徴はすべて、デビッド・ロスが考案したEdge Gripという技法によるものです。
ある意味で、ハンギング・コインとはEdge Gripのために作られた手順とも言えます。
ウイングド・シルバーの記事でも触れましたが、ウイングドシルバーがShuttle Passのために作られた手順だとするならば、Edge Gripに関して同じことが言えるのがハンギング・コインというわけですね。

 

このEdge Gripはコインマジックのバイブルとされる名著、Boboの”Modern Coin Magic”に掲載の”Much from Little”という小品のアイデアを元としています。
この”Much From Little”自体も名作で、現在でも初心者向けの本などによく載っている効果的なコインマジックです。
しかしデビッド・ロスによるスマートなアレンジのおかげで、Edge Gripは現代のコインマンにとってなくてはならない、応用性の広い技法となりました。

 

デビッド・ロスによるオリジナルのハンギング・コインでは、4枚のうち3枚が消失して、最後の1枚は残したままで3枚を再度出現させて終わります。
確かにEdge Gripの特性を考えるとそれが最も無理のないスマートなやり方かも知れませんが、やはり現象だけを客観的に見ると、最後1枚も消したくなるものです。
今回の手順ではそういう考えで、私なりに4枚目も消すようにアレンジしたやり方としています。
このあたりのハンドリングには、六人部慶彦氏のシリンダー&コインの方法を参考とさせていただきました。

 

このように4枚目も消すアプローチとしては、カナダのマジシャン、ギャリー・カーツによる手順も見たことがあります。
いずれにしても、4枚目を消す方向性を採用すると、技術的に難しくかつ、見た目も怪しくなるというジレンマはあります。
しかしそれをどうにかして解決する努力をするのも、コインマンとしては楽しくも大変なところですね。

 

コインを再度出現させる部分について

実はハンギング・コインとして発表された手順では、消えた3枚のコインを一気に出現させる方法だけが含まれており、動画のように1枚ずつ出現させるやり方は、”Flash Production”と題した別手順として発表されています。

 

もちろん”Flash Production”においても、最後4枚目は消えないで持ったままの状態から開始する前提となっていますので、上のわたしの動画では”Flash Production”を参考としつつも、独自のハンドリングで演じています。
一部のプロダクション手法の都合上から、ソフトコイン状態のコンディションのバーバー・ハーフダラー(ウォーキング・リバティの1世代前のハーフダラー)を使用しています。

 

ハンギング・コインの源流

ハンギング・コインにはいくつかの源流といえる奇術があります。

 

ひとつはもちろん、すでに述べたように”Modern Coin Magic”掲載の”Much From Little”ですね。
これは技法面での源流作品です。

 

もうひとつ、現象面での源流ですが、これは少し触れたようにジョン・ラムゼイ”John Ramsay”の”Three Coins in the Hat”と思われます。
これは”Ramsay Legend”という本に解説されたもので、3枚のコインと1個の帽子を使います。
帽子をテーブルに置いた状態で、コインを空中に”ぶら下げ”てゆき、それが帽子から出現したりといった現象を見せる、何段にもなる手順です。コインマジックとしては大作の部類に入る作品です。
この作品では、「コインが空中で消える」という現象について、「空中にある見えないフックに引っ掛ける」という表現を明確に用いています。
もちろんこの頃にはEdge Gripなどはまだないので、”Three Coins in the Hat”ではなかなか高度な演技力が要求されます。

 

余談ですが、今日の感覚で演じるならば、”Three Coins in the Hat”に”Hanging Coins”の手法を用いてももちろんよいと思います。
しかしクラシックの良さを発掘したい嗜好からすると、やはりオリジナルの方法を試してみたいと思ってしまいますね。
“Three Coins in the Hat”についても、そのうち機会があれば当サイトで紹介したいと思います。

 

ハンギング・コインを解説した書籍

ハンギング・コインはリチャード・カウフマン著「Coin Magic」やデビッド・ロスの作品集「Expert Coin Magic」に解説されています。

 

日本語の文献としては、「Coin Magic」を訳した「世界のコインマジック」が出版されています。
1と2が出ていますが、ハンギング・コインは1に掲載されています。
この本には再出現手順であるフラッシュ・プロダクションも併せて解説されています。

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コメント

    • あいぴー
    • 2015年 3月 09日

    Shanlaさんの約10年前の実演動画も保存して拝見しております。非常にスマートで、洗練された実演で、とても素晴らしいと思って拝見しています。また、この奇術は私にとって、大変衝撃的な影響を受け、とても好きな奇術のひとつです。マイケル・アマーもテレビで演じていたのも思い出しました。これからもどんどん実演動画をアップして下さい。よろしくお願いします。

    • あの頃はホームページの容量が小さく、動画を載せられるマックスが5本ぐらいだったので、どれを載せてどれを削るか悩んでいたのが懐かしいです。
      それでもまだYoutubeも無い頃、ネットでマジック動画を見られること自体が珍しく、それなりに評価されていましたね。
      あいぴーさんからそのように気にって頂けるのは嬉しい限りです。よろしくお願いします。

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