コインマジック

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「リバーシ」 マーク・レフラー “Reversi” Mark Lefler カード2枚のリバース・コイン・アセンブリの先駆け

コインマジックに限らずカードマジックでも、移動系の現象において「戻る」というクライマックスは、現代において人気のあるテーマです。

カードであればエース・アセンブリ、あるいはリセットなどもそうかも知れません。
コインマジックならばコイン・アセンブリ、コインズ・アクロス、コインズ・スルー・ザ・テーブルなどにおいて、戻る現象すなわちリバース・プロットが取り入れられています。

今回ご紹介の、マーク・レフラー作「リバーシ」は、コイン・アセンブリにリバース現象を取り入れた奇術です。
しかも、リバース・コイン・アセンブリの中ではパイオニアと言える手順なのです。

大まかに言って、リバース・コイン・アセンブリの分野における先駆的手順は2つ存在します。
ひとつが今回の「リバーシ」で、もうひとつはポール・ガートナーの「リバース・マトリクス」です。

この2つの違いは、コイン・アセンブリとマトリクスの違いがそのまま当てはまる感じです。
この違いについてはコイン・マトリクスの記事で述べていますので、よろしければそちらもご参照ください。今日のところは、マトリクスはカードを4枚用いる手順のことを指すことと、コイン・アセンブリのほうがより広い概念であることをおさらいしておきます。

つまり大まかに言って、カード2枚を用いる手順は、コイン・アセンブリではあってもマトリクスではない。
そしてカード4枚を用いる手順は、マトリクスであり、同時にコイン・アセンブリにも包含される。

そして、今回の「リバーシ」はカード2枚を用いるコイン・アセンブリに、リバース現象を加えた最初の(少なくとも最初に有名になった)手順だというわけです。
ただしリバース・アセンブリ現象全体としては、ポール・ガートナーの「リバース・マトリクス」のほうが時期的に先と思われます。

 

マーク・レフラーの「リバーシ」

それでは、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

この作品はかつて20年ほど前?に日本奇術界でも流行したことがあったようなので、ご存知の方も多いと思います。
リバース・コイン・アセンブリの中でも代表的なクラシック作品のひとつです。

とくに、ノーエキストラ、ノーギミックで、純粋に4枚のコインと2枚のカードさえあれば演じられる手順なので、他のコイン・アセンブリ等とも組み合わせやすいです。
そのあたりも人気のひとつでしょう。

マーク・レフラーの、もうひとつよく知られた代表作に、ジョン・ケネディのトランスロケーションにリバース現象を付け加えた、その名もリバーサル・エンディングという作品があります。
氏の名前はこれら以外ではほとんど聞かないのですが、バックファイア(元に戻る)現象を好んだ人なのでしょうか。
この手順に限って言えば、手法的にはポール・ガートナーのリバース・マトリクスの影響も見られます。

 

コイン・アセンブリのリバース現象を細分化すると、以下の2つに分けられると思います。

A.3枚目まで全部が集まったのを確認した後、リバースする。
B.3枚目まで消失し、その後集合地点を見ると1枚しかなく、リバースしていることが示される。

実際にはノーエキストラ、ノーギミックの手順でAを実現するのはなかなか困難で、大抵はBのパターンを採ることとなります。このマーク・レフラーのリバーシもBパターンです。

この場合、3枚目の消失を中途半端に流して演じてしまうと、手順全体が混乱して見えてしまう原因になるのではないかと思います。
コインが消えたのか消えてないのか良く分からないうちに、何となく最初に戻っていた、みたいな印象になりかねません。
また、最後まで集まるはずが、中途半端なところで振り出しに戻った、というような、一種の欲求不満を抱かせてしまう可能性もあるでしょう。

個人的にはそういう混乱を避けて、リバース現象をしっかりと観客の心に落とし込むためには、まず3枚目の消失をしっかり印象付けて、そこで一拍置くことが大切だと思っています。
とくにこの「リバーシ」では、この3枚目の部分の表現が難しい気がしています。

あともうひとつのポイントとしては、最後に4枚が戻ったことを示す際のタイミングの問題があります。
つまり、一気に元に戻った4枚を見せるのか、あるいは4枚あるべき集合地点に1枚しかないことを見せてから、一拍置いてから残りの3枚を見せるのか。
私は後者のほうが好きです。
術者は全て分かっていました、翻弄されたのは観客だけ、みたいな表現ではなく、術者も多少現象に戸惑う役を演じたいわけですね。

4枚集まりました!と意気揚々と見せたところに、1枚しかない。あれ?と刹那の困惑がある。そうして一拍置いた後に、実は戻っていました、という流れ。
フレッド・カップスとかカーディニみたいに、完全に術者が振り回されるという演技ではありませんが、多少の戸惑いみたいなものを演出したほうが、スマートですし、見ているほうのストレスも少ない気がしています。

 

マーク・レフラーの「リバーシ」を解説した文献等

この作品はリチャード・カウフマン発行の奇術雑誌「Richard’s Almanac」の合本「Collected Almanac」に収録されています。
日本語では、大阪のマジックショップ、ミスターマジシャンの根本氏の手になる小冊子「マーク・レフラーの奇術」というものが出ていました。
日本でこの奇術が一時期流行した、というのはこの小冊子の影響でしょうか。未確認ですが。

また、東京堂出版から出ているカズ・カタヤマ氏著「ゆうきとものクロースアップマジック」には、ゆうきとも氏によるリバーシのバリエーションである、”オセロ”という作品が収録されています。
本には言及されていませんが、もちろんこのネーミングは、世界的ゲームの「リバーシ」と同じ用具を用いて遊ぶゲームの「オセロ」、という関連から名づけられたものでしょう。

【2014年1月4日追記】
読者の方から、リバーシの初出文献についての情報をいただきました。
1983年の「The New York Magic Symposium Collection 2」に掲載されているとのことです。
その後「Collected Almanac」の記事を確認しましたところ、当初はリバーシは「Richard’s Almanac」への掲載が予定されていたそうです。事情により、雑誌の方ではなく上記のシンポジウムコレクションへの収録となったようです。

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