“Overture” Phil Goldstein マックス・メイヴェンによる、Twisting the Acesのための序曲

overture

ダイ・バーノンによる傑作ツイスティング・ジ・エーセスは、発表後半世紀を経た現在、文字通りのカードマジックの古典作品のひとつと見なされています。
古典といっても過去のものとして博物館入りしているなどということは全くなく、現在でも多くのマジシャンに愛され演じ続けられています。

しかし、シンプル・イズ・ベストを地で行くような作品であるだけに、状況によってはこれひとつだけで終わるのは、若干物足りなさを感じる場面があるのも事実です。
さりとて、デックを持ち出してのエース・アセンブリとか、絵札を加えてのリセットなどを演じるのは重たすぎる。場所の都合もあるでしょう。
ツイスティング・ジ・エーセスと同じく4枚のエースのみを使って、軽く何か見せられないか。それも、ツイスティング・ジ・エーセス自体と現象が被らず、同じくらいにシンプルなプロットで。

フィル・ゴールドステイン(Phil Goldstein)による”Overture”(序曲)は、そんなニーズに当てはめるために創作されたマジックです。

フィル・ゴールドステイン氏はマックス・メイヴェンの芸名でメンタリストとして活躍されており、この分野ではリチャード・オスタリンド等と並んで世界最高峰の一人です。
しかしそれと並行して、メンタルマジックに属さない普通のカードマジックのクリエイターとしても、世界屈指の才人です。

そんな才人による、ツイスティング・ジ・エーセスのための「序曲」を紹介します。

 

Phil Goldsteinの”Overture”

では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

>>動画リンク<<

現象としては、外側のエースと内側のエースの交換です。
これは言ってみれば、デックで演じるDr. Jacob Daleyの”Cavorting Aces”を、4枚のエースのみのプロットに当てはめた、と見なせなくもありません。
ただし、”Overture”では位置の交換に加えて、「裏と表」という位相関係も同時に交換されます。この要素はパケットトリックならではの構成であるとともに、”Cavorting Aces”のような単純で古典的な方法論では達成できないプロットです。

ツイスティング・ジ・エーセスはある意味でElmsley Countの練習曲のような作品である、とは以前の紹介記事で述べました。
今回の”Overture”も、それに類する見方が出来そうです。
こちらはElmsley Countに加えてJordan Countまで含まれており、両手順を続けて演じれば、練習曲としての効果はばっちりですね。

入れ替えのためのおまじないの操作は、この原案どおりの動きだけでなく、色々とバリエーションが考えられます。
一例として、Twirl ChangeとかShapeshifterなどであれば問題なく使えそうです。たとえばBill GoodwinのKing Brandという作品は、”Overture”を発展させたようなプロットですが、そういった手法が取り入れられています。

なお、”King Brand”が直接”Overture”のバリエーションとして作られた作品なのかどうかは確認できていません。
しかしGoodwin氏の繊細な動きとあいまって、非常に美しい手順ですね。現象としてはほとんど同じといってよい部分があり、”Overture”を練習するうえでの参考にもなるのではないでしょうか。

 

Phil Goldsteinの”Overture”を解説した文献等

この作品は、Phil Goldsteinのカードマジック作品集「FOCUS」(Philip T. Goldstein著, 1990)に掲載されました。
Phil GoldsteinはMax Maven(日本ではマックス名人とも呼ばれました)のステージネームで、メンタリストとして活躍していますが、「FOCUS」はメンタリズムではない普通のカードマジックの作品集です。
この本には以前紹介した、「赤の中の青」(Picasso Aces)も収録されています。

“Overture”はこの本の一番最初の作品として解説されています。
すでに述べたように、この作品はDai Vernonの”Tiwisting the Aces”の前に、導入として演じることを想定して「序曲」と名づけられたわけです。
その作品が、氏の作品集「FOCUS」の冒頭に配されているというのは、これからめくるめくカードマジックの世界に入ってゆくための「序曲」という意味合いも持たされているのでしょうか。ただの想像ですが。

「FOCUS」は邦訳版が「パケット・トリック」という題名で東京堂出版から刊行されています。
必ずしもパケットトリックに限らない、Phil Goldsteinの傑作カードマジックを集めた名著のひとつです。

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コメント

    • BOKKO
    • 2015年 1月 29日

    はじめてコメントします。

    まず序曲の手品、そして雰囲気がとても素晴らしいです!
    わたしはまだ始めたばかりでカウントを中心に練習をしているので
    この鮮やかな手さばき?動きに魅了されました。

    動画を見終わった後の解説の文章にも、とても引き込まれ、
    私はこの先Shanlaさんのような、素晴らしいマジシャンになれるか、不安にもなりました(笑汗

    また是非、カウントを使った素晴らしい手品を教えてください。

    • ありがとうございます。
      カウントはその名前のままだと「数える」ということになりますが、実際の演技では「数える」以外の見せ方のほうが多いと思います。
      この「序曲」でもカウントの使用目的は、4枚あることを確認しているわけではなく、2枚の間に挟まれた表向きのカードを見せているわけですね。
      そういった使用目的、演技の意図によって、リズムや見せ方、セリフなどを工夫するのが、カウントを上手く使いこなすコツかと思います。
      今後ともよろしくお願いします。

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  • @you_you_1 @ShinanoCraft Too Perfect Theoryですかね。これは若干違うようなw
    about 4週間 ago
  • @ShinanoCraft @you_you_1 わたしもその台無しで出来る?って言いたいですw
    about 4週間 ago
  • https://t.co/RKdQJ1Uskq 見てみました。これは確かに全然分からん。最初のほうはまだしも、触れずに一瞬にしてリバースとか、通常の手法では解決法が思いつかないですね。
    about 4週間 ago

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