フォア・エース・アセンブリには数多くの分岐したバリエーションがありますが、リン・シールズ”Lin Seals”考案によるアルティメット・エーセス”Ultimate Aces”はその中でも変り種のテーマです。
スローモーション・エーセスやプログレシブ・エーセスなど、多くのエースアセンブリのバリエーションはその移動パターンに変化を付けるという思考によるものです。
それに対してアルティメット・エーセスのテーマは、エースのみを他のカードに対する裏色違いを用いて行うというものです。
アルティメット・エーセスはエース・アセンブリの中ではそれほど人気がある分野でもないように思います。個人的には、今回の”Picasso Aces”をはじめ数手順しか知りません。
ただ、移動パターンとは異なる方向からのアプローチであるため、双方のテーマをミックスすることによって、色々なバリエーションが広がる可能性があります。
今回ご紹介の「赤の中の青」”Picasso Aces”は、マックス・メイヴェン(フィル・ゴールドステイン)らしい頭の良い簡潔な構成で、このテーマとしては私のお気に入りのひとつです。
“Picasso Aces”の手順
まずはよろしければ動画をご覧ください。
冒頭に書きました、テーマのミックスという見方で分類するならば、この作品はスローモーション・フォア・エーセスとアルティメット・エーセスのミックスということになりますね。
エースだけバックの色が違うカードを使うというのは単純なアイデアのようですが、これによる消失の視覚的な印象は意外なほど強いものです。
「赤の中の青」というのは邦訳版で付けられた名前で、実際に解説文でもデックが赤裏でエースに青裏を用いる、となっています。
しかし個人的な感覚では、これは逆に青裏デックに赤裏エースのほうが効果が際立つような気がします。
青(もしくは上の動画のように黒など)は退行色で、赤は膨張色ですから、このほうがエースが目立ちますし、消失の効果も高まるのではないでしょうか。
色違いバックのカードを用いることには、消失が視覚的に際立つ以外に、実際的なハンドリング面での利点もありますね。
つまり、エースのみが異なる裏色であるとあらかじめ認知されていることにより、フェイスを見せずに途中の消失・出現が表現できるという点です。
この種の方法論は、異なる裏色のカードを用いるオイル・アンド・ウォーターの手順でも散見されます。
原題として付けられている”Picasso Aces”のピカソとはもちろん、キュービズム絵画を代表する画家、パブロ・ピカソのことでしょう。
おそらくですが、赤と青のカードを使用するということで、カラフルな原色の対比という作品のイメージから、ピカソの名前が借用されたのでしょうか。
マジックの特徴から連想されるアーティスト名を借用するという命名パターンは、ヒッチコック・エーセスなどと共通するものがありますね。
例えば、わけのわからない理解不能な現象のエース・アセンブリを作ったら、ダリ・エーセスと命名してみるとか・・・いかがでしょうか^^
「赤の中の青」”Picasso Aces”の掲載書籍等
この作品は元々フィル・ゴールドステイン著”FOCUS”に掲載されました。
氏はマックス・メイヴェンという名前でメンタリストとしても活躍されていますが、この本は氏自身の通常のカードマジックに絞った作品集です。
「新幹線」など売りネタも含まれている名著ですが、数年前に東京堂出版より邦訳版が出ています。
邦訳版は「パケット・トリック」と題されており、著者はフィル・ゴールドステインではなくマックス・メイヴェン名義となっています。
おそらく日本では昔から花王名人劇場等でマックス名人の名前で親しまれているので、メンタリズムの解説書ではないものの、こちらの名前のほうがアピールするという判断でしょう。
カラフルな原色の対比(Comparison)でいうなら
ピカソよりもカンディンスキーの方がマッチするような・・ (^^;
アーティスト名を借用するという命名のアイディアは良いですね。
伸びるクィーンでモディリアーニ・クィーンとか(笑)
ああ、確かにカンディンスキーはまさしく原色のコンポジションですね。
あえて誰もが思いつくアーティスト名ということで、ピカソにされたのかも知れませんね。
モディリアーニ・クイーン、そのまんま使えそうですねw
他には・・・爆発をテーマにしてオカモトタロー・エーセスとか(笑