沢浩氏のコインマジック作品、サワズ・バンク・ルーティンをご紹介します。
バンク・ルーティンという名前のとおり、銀行預金をテーマとしたストーリーのあるコインマジック手順です。
ただし、サワズ・バンク・ルーティン(Sawa’s Bank Routine)という名前は沢さんが名づけた正式名かどうかは分からず、もしかすると、マイケル・スキナーによって適当に付けられた題名かも知れません。
と言いますのも、この作品はリチャード・カウフマンの「Sawa’s Library of Magic」に解説されているのですが、カウフマンによる正式な収録作品として解説されているわけではなく、マイケル・スキナーによる前書き(Introduction)の中で文章のみで、さらりと書かれているものなのです。
沢さんとスキナー氏が飛行機のフライトを共にした際、機内で沢さんからいくつかのマジックを教わったそうで、その中のひとつが、このサワズ・バンク・ルーティンだったとのことです。
サワズ・バンク・ルーティンとは
沢浩氏のコインマジック作品には、面白いストーリーと、納得のオチが付いた手順が数多くあります。
そしてそのストーリーは、単に普通の手品にストーリーを付け加えたというものではなく、物語と奇術現象が分かちがたく結びついているのが特徴と言えるでしょう。
このサワズ・バンク・ルーティンは、そういった沢作品の中でも、比較的ノーマルな道具立てで詩的な現象を表現している傑作だと思います。
銀行預金をテーマとしたコインマジックですが、一見単純なようで、その現象は少し分類のしがたいものです。
デビッド・ロスのワイルド・コインに似ていますが、同時にコインのプロダクション現象も含まれています。
ラストのコインの変化は、きちんとストーリーのオチになっているのが面白いところです。
またこの作品は、デビッド・ロスのStars of Magic シリーズ第9巻、LIVE IN PHILADELPHIAにも収録されています。
このDVDでは、「Sawa’s Bank Night」という題名になっています。
デビッド・ロスはこの作品以外にも、”A Dollar is Always a Dollar”のバリエーションを作るなど、少なからず沢浩氏に影響を受けたマジックを発表しています。
サワズ・バンク・ルーティンの演技動画
それでは、私が作成したサワズ・バンク・ルーティンの演技動画をご覧下さい。
沢浩さんの原案では、とくに手順の最初の部分においてバーノンのキャッスル・チェンジの技法を用いるなど、少々難しいハンドリングとなっています。
ここが私にはちょっとやりにくく思えたので、自分にとってのやり易さを優先したシンプルなハンドリングに変えています。
デビッド・ロスの「Sawa’s Bank Night」は私は後から見たのですが、私のやっていたハンドリングと同じような感じのものでした。
なお、動画の中では銅貨を1セントと言っていますが、ここで使っているのはイギリスの1ペニー銅貨であり、アメリカの1セント硬貨ではありません。
アメリカの1セント銅貨は、1円玉よりも小さいぐらいのコインで、とても扱いにくく見えにくいので・・・
セリフについては、日本でのストーリーとして似つかわしいように、ハーフダラーを500円、イングリッシュペニーを10円だと仮定して演じることもあります。
本物の500円玉と10円玉でもやってやれないことは無いですが、やはりあまり自然には見えないかなと思います。
単に小さいからやりにくいというだけではなく、われわれが日常使っている10円玉などのコインでシャトルパス等の技法を行うこと自体に、若干の違和感があると言いますか・・・
まあ10円玉や100円玉でそういう技法をやっていたこともありますけどね。
最近の私の考えでは、状況が許せばハーフダラーやイングリッシュペニーを使うほうが、一般的なコインマジックの演技には日本円コインよりも適切であると思っています。
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