カードマジック

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「エレベーター・カード」 ビル・サイモン ”Elevator Card” Bill Simon マーローの”Penetration”の正統的継承

エレベーターカードは、アンビシャスカードと同系統のマジックです。
どちらも特定のカードが、デックの中で上に上がってくる(または下に下がる)という現象を見せる奇術です。

 

アンビシャスカードはとくに近年のテレビやYoutubeなどでの露出を通じて、カードマジックの中でもかなりメジャーなテーマとなっている感があります。
それに対して、エレベーターカードはそこまででもない印象です。
やはり、扱う枚数が複数枚数であるということで、アンビシャスカードほどはシンプルではないのが原因でしょうか。

 

しかしアンビシャスカードとは違って、主題となるカードが複数であるからこそ、採用できるメソッドといいますか、原理もあります。
実際のところ、エレベーターカードを特徴づけているのはこの点でしょう。
また、現象が単純すぎないゆえに、ストーリー的な演出を付けやすいのも利点といえば利点でしょうか。このあたりは好みにもよりますが。

 

今回ご紹介の、ビル・サイモンによるエレベーター・カードは「カードマジック事典」掲載作品です。

 

ビル・サイモンのエレベーターカード

ビル・サイモンによる手順、その名も”Elevator Card”は、つい最近紹介しました、エドワード・マーローの”Penetration”のバリエーションです。
それも、変に現象やメソッドをいじくりまわしていない、いわば正統派の改案手順と言えそうです。

 

また、”Elevator Card”という名前がこのプロットに付けられたことで知られた最初の作品でもあります。
この名称が、プロットにまことにしっくりと合致する名前であったため、マーローによる”penetration”ではなく”Elevator Card”がプロットを代表する名称として定着しました。

 

では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。

 

 

ビル・サイモンの作品といえば、以前”Call to the Colors“という作品を紹介しました。
今回の”Elevator Card”も、同じ著書である「Effective Card Magic」(後にCard Magic for Amateurs and Professionalsと改題して再版)に掲載されました。
そのことを思えば、この本はまことにエポックメイキングな名著ですね。

 

この作品が、マーローの原案と異なっている特徴といえば、まず最初の上下移動が2回ずつ繰り返される点が挙げられます。
そして、その後3つの山から3枚を一度に上げてみせるということで、クライマックスとして十分豪華なものとなっています。

 

2回ずつ上下移動する点については、原案のいささかシンプル過ぎる構成を補うものであるとともに、間違いなくそのカードが移動したということを強調していると思います。
このマジックでは、最初に3枚を裏向きに並べた状態から開始するために、ややもすれば、どれが何のカードだったか分からなくなってしまう恐れがあります。
それを補うために、多くのマジシャンが工夫を凝らしていますが、ビル・サイモン手順の2回繰り返すというのも、効果的な工夫のひとつでしょう。
ただ、この手順でそのために用いられている方法自体は、若干強引な気もしないでもありません。

 

3つの山に分けて一度に上げる、という終わり方はいいですね。
原案のシンプルに予定調和的に終了する感じも悪くないですが、実際にエレベーターのプロットを演じる場合には、やっぱり何がしかのクライマックスを取り入れたくなります。
“Penetration”よりも”Elevator Card”のほうが、ショーアップされた見せ方に適するとも言えそうです。

 

ビル・サイモンのエレベーター・カードを解説した文献等

この作品は東京堂出版の「カードマジック事典」に掲載されています。
「エレベーター・カード②」という項目がそうです。

そのほかに、同じ東京堂出版から出ている、気賀康夫氏の「ステップアップ・カードマジック」にも掲載されています。

 

原典としては、すでに挙げましたように、ビル・サイモン自身の著になる「Effective Card Magic」があり、これを改題した「Card Magic for Amateurs and Professionals」が現在でも安価で入手可能です。

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