カードマジック

Diamond Cut Diamond

「ダイヤモンド・カット・ダイヤモンド」アレックス・エルムズレイ “Diamond Cut Diamond” by Alex Elmsley

 

イギリスの天才的奇術創作家アレックス・エルムズレイ”Alex Elmsley”の名前は、マジック愛好家の皆さんならばよくご存知だと思います。
とくにパケットトリックの大バックボーンを形成している感のある技法、エルムズレイ・カウントの名前だけでも、氏の名前は奇術史の中で輝いています。

 

エルムズレイのカードマジック作品としては、Point of Departureが抜きん出て有名な印象はありますが、今回ご紹介のDiamond Cut Diamondもそれに次ぐレベルでよく知られた作品です。
ダイレクトで効果的なこのマジックは、エドワード・マーローやフランク・ガルシア、マーチン・ナッシュといった著名マジシャンによって注目され、改案が作られています。

 

Diamond Cut Diamondとは「しのぎを削る」みたいな意味の熟語ですが、とくにこの作品の内容との関連はなさそうです。
最近連載中の漫画で、「DCD Diamond Cut Diamond」というエスパーをテーマとしたコミックスがあるみたいですが、これももちろん関係ありません。

 

このマジック(のエルムズレイによる原案)には、A~10までのダイヤのカードを使うので、単にダイヤモンドという言葉とかけあわせて付けられた題名でしょう。
英語ではトランプのダイヤのことを、Diamondと言います。

 

Diamond Cut Diamondの現象

Diamond Cut Diamondの現象を簡単に説明します。

 

まずA~10までの10枚のダイヤのカードを抜き出し、数字の順番に並べます。その後残りの1組の中から観客に1枚のカードを覚えてもらいます。
さらに、観客に1~10までの間で好きな数字を指定してもらいます。例えば7が選ばれたとしましょう。

 

次に先ほどの10枚のダイヤのカードを1組の上に置き、1枚ずつ表向きにテーブルに配ってゆきますが、指定された7枚目のカードだけは裏向きのまま配ります。
相手が覚えたカードを聞いてから、おまじないをかけて7枚目の裏向きカードをめくると、それが選ばれたカードとなっています。
最後は、ダイヤの7を別の場所から出現させることも出来ます。

 

この作品が発表された”Collected Works of Alex Elmsley vol.2″を読むと、エルムズレイによればこの作品の原型は古くからある単純なマジックだということです。
つまり、いわゆるCard at Any Number(ACAANではなく、あくまでCAAN)とか、ストップトリックと呼ばれる類の現象です。

 

元々は単に希望の枚数目から選ばれたカードが出てくる、という比較的単純なトリックであったものが、あらかじめ順番にそろった10枚のダイヤのカード、という要素を加えることによってがらりと異なる印象のマジックとなっています。
単なるナンバートリックではなく、カードの変化あるいは交換という要素が絡んでくるわけですね。
加えて、テーブル上にフェイスアップでA~10のカードを並べることで、視覚的にも派手な印象を与える見ごたえのある手品となっていると思います。

 

技術的なことに少し触れると、この作品はセカンドディールという技法に全面的に依存したマジックです。
ストップトリックや普通のCAANにセカンドディールを用いるのはかなりダイレクトな使い方で、見方によっては危険なものです。
しかし10枚のダイヤのカードという要素はここでも効果的に働き、セカンドディールの危うさをカバーする役目を果たしているように思えます。

 

ギャンブルデモではなくマジックにセカンドディールを効果的に用いた作品というのはそう多くありませんが、その中でもダイヤモンド・カット・ダイヤモンドは、この技法の特性をうまく生かした作品ですね。
また、セカンドディールの練習用としても使いやすいマジックだと思います。

 

ダイヤモンド・カット・ダイヤモンドの改案

先に述べたとおり、エルムズレイのDiamond Cut Diamondは色々なマジシャンによって演じられ、改案されています。
わたしの把握しているところでは、フランク・ガルシアの”Just A Second”、マーチン・ナッシュの”Second Intrusion”、Simon Lovellの”Elmsley Cut Elmsley”などがあります。

 

いつもは現象の紹介部分で、自分の演技動画を貼り付けていますが、今回エルムズレイの手順動画は作成しませんでした。
なぜかというと、わたしはこの奇術に関しては昔からマーチン・ナッシュによる改案の”Second Intrusion”のほうを演じていたからです。
以下にそちらの動画を貼り付けます。

 

この作品は、Stephen Minchの著になるMartin A. Nashの三部作の2冊目、”Any Second Now”に掲載されたものです。
ナッシュの手順は基本的な骨格および方法論では、エルムズレイのダイヤモンド・カット・ダイヤモンドと変わりません。
一番大きな相違点は、最初に10枚のカードを見せた後、デックの中に混ぜ込むという部分でしょう。
つまり、「バラバラに入れて混ぜたはずの10枚のカードが、一瞬でデックのトップから順番に揃って出てくる」という現象が、さらに追加されているということになりますね。

 

ナッシュは”カードテクニックの達人である”という演出を用いていたプロカーディシャンでした。(いや、演出だけでなく実際にエキスパートでしたけども)
カードマジックの表現方法として、”魔法を見せた”のか”技術で達成した”のかの違いは大きいですが、ナッシュはあきらかに後者です。
Second Intrusionも、Diamond Cut Diamondと比べればそういう思想で組み立てられている感じがしますね。

 

なお、上の動画ではラストの1枚の出現に多少込み入った手段を用いていますが、ナッシュの実際の手順ではもっと大胆で簡単な方法を採っています。
生で実演する分には全く問題ないのですが、動画ではちょっと・・・という面があったので、多少変えてみました。

 

 

次にご紹介する改案はちょっと変わっています。
夭折した日本のクロースアップマジックの達人、片倉雄一氏による手順ですが、これはおそらく未発表のものです。

 

動画のページの説明文にも書いていますとおり、筆者の知人のサイトである「不思議徒然草」さんの記事を元にして組み立て再現した手順です。

 

片倉氏のご両親が管理されていた遺品があり、わたしもその一部を分けていただいたのですが、その中に未発表のアイデアノートみたいなものがあったとのことです。
そのノートの中で片倉氏は、ダイヤモンドカットダイヤモンドの改悪、として上の手順を記されていました。

 

演じてみると、これはこれでシンプルで悪くないという気もしますね。
改悪とした理由は書かれていなかったようなので推測するしかないですが、わたしが思うにはやはり、元々が1枚のカード当ての奇術であったところを、2枚のカードの交換という現象に変えてしまったところが、何となく気に入られなかったのかなという気もしています。
あとはメ○○カンターンノーバーを使うというあたりも、その理由の一部なのかな・・・?

 

現象とビジュアル面では確かに、10枚配った列の中で1枚のカード当てをする、という構図に比べると、2枚の交換という現象はあっさり見えてしまうのと、交換するという目的に対して10枚配り並べることの必然性が表現しにくいような・・・?気もしないでもないです。

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