「アルティメット・スリー・カード・モンテ」 マイケル・スキナー “Ultimate Three Card Monte” Michael Skinner

ultimate three card monte

奇術の世界には、「究極の」という意味を持つ英単語”Ultimate”をその名に冠したマジック作品がいくつかあります。「究極」と名づける意味合いは人それぞれですが、少なくとも作者本人の自信のほどを示す形容詞であることは確かでしょう。

今回ご紹介するマイケル・スキナーのアルティメット・スリー・カード・モンテ”Ultimate Three Card Monte”は、アルティメットを冠するマジックの中でも、ダローのアルディメット・アンビションと並んで特に有名なものでしょう。プロアマ問わず多くのマジシャンに愛され、奇術の歴史に輝く傑作のひとつです。

マイケル・スキナーはダイ・バーノンの高弟の一人で、ラスベガスのカジノで長年活躍した、プロフェッショナル・クロースアップ・マジシャンです。特にスライハンドの切れ味、クロースアップ演技の所作を如何に美しく見せるかということにかけては、当代随一の存在でした。1998年に、まだ50代の若さで亡くなったのが惜しまれます。氏の作品について、当サイトでは以前にセンチメンタル・エーセスを紹介しています。

 

マイケル・スキナーの「アルティメット・スリー・カード・モンテ」

では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧下さい。

 

理想的な構成です。
明快で簡潔、疑う余地のない不思議さがあり、適度な遊びや、意外なクライマックスがある。一般客向けに演じるスリーカードモンテとしては、最上の手順と言ってよいと思います。
また演じる側の都合で言えば、演技が完了した時点でリセットされているのも嬉しい点です。テーブルホッピングに最適です。

 

かつて私のサイトで、私にとってのスリーカードモンテのベスト3は、Ultimate Three Card Monte、Escorial Three Card Monte、Side Walk Shuffleの3つである、と述べたことがあります。これはどちらかと言うと、ギャフカードのスリーカードモンテの中でのベストということですが。この好みは今でも変わっていません。

古典的なスリーカードモンテは、どちらかと言うとマジックというよりは、イカサマの技術を見せる演目だという印象があります。
それに比べれば、Ultimate Three Card Monteは多少マジック寄りです。スリーカードモンテのデモンストレーションの体裁で演じてはいるものの、その手続きは極めてフェアに見えます。技術でごまかされたというよりは、魔法のようにカードが入れ替わった、という印象のほうが強く残りそうです。
ただし、その種のあまりにフェア過ぎる見た目を緩和して、多少なりともギャンブリング・デモンストレーションの印象に近づけるために、途中で何度か意図的に「怪しい動作」が入れてあります。この点は解説書では”Too Perfect Theory”に基づくものであるとの補足があります。完全な魔法としてのマジックにはしたくない、あくまでイカサマ技法実演の文脈で見せたいという、スキナーの意図でしょうか。そのあたりは、Escorial Three Card Monteなどとは違うところです。

 

ところでスリー・カード・モンテは、見せ方が意外と難しい演目です。
基本的にマジックでは、観客に対してあまりに挑戦的になることは禁物です。そもそもマジシャンは演技中には観客より優位に立つという面がありますし、マジシャンが思って無くても、観客がそう感じていることは多いです。マジックが嫌いな人にその理由を尋ねると、マジシャンが持つその種の優位性が嫌いだ、みたいな答えが返ってくることも多いです。

スリー・カード・モンテはその点、当て物としての見せ方をそのままダイレクトに提供してしまうと、観客に対して挑戦的になりがちです。もちろん実際にお金を賭けさせたり巻き上げたりはしませんが、毎回マジシャンから選択を迫られて、その度に間違いであることが示される、というのは、人によっては結構ストレスになりそうです。

実際に選択をさせるとしてもまずは、演者の態度が重要。観客に選択させる場合でも、間違えたことを小ばかにしたり笑いものにするような言い方をするのは、禁物でしょう。

もうひとつは、あくまでデモンストレーションと割り切って、観客には傍観者に徹してもらうことです。選択の場面でも、「ここでこれを選んだとすれば」のような仮定のセリフを言うだけで、実際に相手に選択はさせない。私は基本的にはこちらの見せ方を採っています。
まあ全体の中で1回ぐらい、軽い感じで相手に選んでもらうのはいいですけど。選択や質問の連続は見ているほうにとっても疲れます。

この見せ方はスリー・カード・モンテにおいては、演出上だけでなく、ハンドリング上の安全策でもあります。
手順構成としては、これ以上ないくらいにフェアにして、常識的に見ればここを選ぶしかない、ぐらいの状況は作っているわけです。しかし実際に観客に選択をさせると、全くの気まぐれでぜんぜん違うカードを選ばないとも限りません。
いきなり手を伸ばして違うカードをめくってくるような乱暴な相手は少ないでしょうけども、全然違うカードを指された場合に、どうセリフを返すか、ぐらいは考えておく必要があります。そこで気の利いたことが言えないぐらいなら、はじめから具体的な選択をさせないほうが良い、ということにもなりそうです。

 

アルティメット・スリー・カード・モンテの原案

アルティメット・スリー・カード・モンテは現在一般にマイケル・スキナーの代表作の一つとして知られています。しかしこの作品は彼による完全なオリジナルではなく、原案となった作品が存在します。
商品の解説書の冒頭には、この手順は元々ルイス・ギャンソン著「Dai Vernon’s Ultimate Secrets of Card Magic」に掲載された、Eddie Taytelbaumの”Find the Ace”という作品が元である、と書かれています。Eddie Taytelbaum(読みはテイテルバウム、でいいのでしょうか)はオランダのプロマジシャンで、同じオランダ人のフレッド・カップスやリンクとともに、上記の本のオランダ・マジシャンの章に作品が収録されています。

私は最初、このEddie Taytelbaumの原案手順をできるだけ忠実に動画にして、両者の違いを読み解く、というようなことをやろうと思っていました。しかし解説を読み込んで、止めました。というのも、手順の基本的な構成がほとんど同じだからです。異なるのは細かいハンドリングの要素が大部分なので、この手順をあえて動画にする意味は乏しいように思えました。

細かいハンドリングの相違点とは、主にカードの示し方の部分です。”Ultimate Three Card Monte”では基本的にカードのコーナーを右手で持ちますが、”Find the Ace”では左手で握るように持ったり、両手の指を使って持ったりなど、場面によって微妙に変えています。

上記の微妙なハンドリングの違い以外で、Eddie Taytelbaumの”Find the Ace”に対して”Ultimate Three Card Monte”で変更された点を列挙してみます。

・クラブのAの代わりにハートのAを使用した
・わざと一部に”怪しい”動きを入れた
・3段目では1枚は完全に除外した格好にし、2択にしたという印象を強く与える

このぐらいでしょうか。1枚だけ赤いエースを使用したのは明確な改良です。全部黒いカードを使うのとは明らかに印象が異なると思います。
それから、3段目の見せ方が、原案とは一番印象の異なるところでしょうか。原案では、1枚は除くと言いながらテーブルの真ん中に置いています。他の2枚はその左右に置き、真ん中の1枚を跨いで入れ替えを行うのです。つまり、外見上は第2段目とほぼ同じなのですね。最初の1枚を、観客の意識枠から外していない。
小さなことですが、この除外する1枚のカードが観客の意識フレームから外れるか外れないかでは、その後のクライマックスの効果がかなり違う気がしています。

 

Eddie Taytelbaumの”Find the Ace”と”Ultimate Three Card Monte”の相違点は上記のような感じで、手順の中身だけを見れば、バリエーション程度のものである気もします。それを思えば、現在この手順は専らマイケル・スキナーの名とともに語られ、Eddie Taytelbaumの名が言及されることがほとんど無いように見えるのは、ちょっとどうなのかな、という感も無くはないです。

しかし、客観的に見ても、”Ultimate Three Card Monte”は”Find the Ace”を明確に改良しており、上位互換手順となっているように思えます。元々Eddie Taytelbaumが愛用していた傑作手順ですが、マイケル・スキナーはそれをさらに汎用性の高い印象的な手順にしました。それを四半世紀に亘ってラスベガスのゴールデンナゲット・カジノのレストランで演じ続け、自身の名声をこの手順とともに高めました。そして今や、この作品は押しも押されもせぬクラシックとなっています。
その功績はマイケル・スキナーのものであることは間違いありません。

 

アルティメット・スリー・カード・モンテの関連資料等

マイケル・スキナーのアルティメット・スリー・カード・モンテは1990年に、L&L Publishingより単品のディーラーズ・アイテムとして売り出されています。私の知る範囲では、この単品の商品以外に、書籍やレクチャーノートなど文献に収録されたものは見たことがありません。

原案となったEddie Taytelbaumの”Find the Ace”については、すでに述べたようにLewis Ganson著「Dai Vernon’s Ultimate Secrets of Card Magic」(1967)に収録されています。

また映像では、「The Legendary Repertoire of Michael Skinner Vol.3」というDVDで、解説はありませんが本人の演技を見ることができます。ホームビデオを元にしたもので映像の質は低いですが、スキナーの若い頃のキレのある演技を見られる資料として貴重です。

本人以外の映像としては、ビル・マローンのDVD「On The Loose Vol.1」に、彼のバージョンが収録されています。

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コメント

    • ピエロ
    • 2014年 11月 13日

    いきなりすいません!
    アルティメットスリーカードモンテを見てぼくもやりたいと思ったのですが、教えて頂くことはできませんか?

    • >ピエロさん
      コメントありがとうございます。
      最近ネットに繋げない環境が続き、返信が遅れてしまいました。すみません。

      サイト上やメールなどで直接タネややり方を教えるということは、申し訳ありませんが、私としては遠慮させていただいています。
      直接お会いできる間柄ならばある程度は問題ありませんけども。

      とくにこのマジックは、記事内でも触れていますように、単独で商品としても売られているものです。
      国内のショップでも普通に、それほど高くはない値段で売られていますので、お買いになってはいかがでしょうか。
      一応、タネだけ知って出来るマジックでもなく、商品についてくるカードが必要でもありますので。

        • ピエロ
        • 2014年 11月 23日

        そのカードは何と言うカードでどこで売っていますか?

        • また出張で、大変返事が遅れてすみません。
          そのままの名前で、アルティメット・スリーカード・モンテか、”Michael Skinner’s Ultimate Three Card Monte”として説明書付で売っています。
          説明書無しでも構わなければ、ギャフデックとかアソートメント・デック、ファコ・デックなどといった名称の、色々なギャフカードを組み合わせたデックの中に、これに必要なカードが含まれていることも結構あります。

    • 峯崎浩一
    • 2014年 12月 29日

    先日マイケル・アマーがレクチャーでこれを演じてくれました。
    カードの置き方や反し方、見せ方の注意など大変参考になりました。
    また彼はZワレットにこれを仕込んでいて、最後にレギュラーと
    スイッチして客に改めさせるエンディング方法を紹介してくれました。

    • アマー参加されたんですね!うらやましいです。
      私は情報を知ったときには、とうに締め切り済みでした^^;

      そういえば私の記事中でアマーについて一言も触れていませんでしたが、氏はこの奇術を有名にした立役者の一人ですね。
      Zワレットは、テレビ出演時も使用されていた記憶があります。

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  • これだけテレビやモニター技術が発達しているが、ベゼル幅ゼロとか折りたたみ可能ディスプレイというのは、まだまだ実現できないものなのかな。
    about 1か月 ago

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