4エース・アセンブリのマジックはマジシャンの心を捕らえるものがあるようです。
Ponsinの4エーストリックが”Nouvelle Magie Blanche Devoilee”に発表されて以降、数多くのマジシャンがこのテーマの作品を創作してきました。
様々な4エースアセンブリの種別と系譜については、以前わたしがまとめたものが別サイトにありますので、興味のある方はそちらを参照してみてください。
Aces in Exelsisのプロット
今回ご紹介する”Aces in Exelsis”は、スローモーション・4エーセスというプロットに属するものです。
4枚のエースのうち1枚をリーダーとし、他3枚のエースがリーダーの位置に見えない飛行をするのですが、これを1枚ずつ見せてゆきます。
そもそもスローモーション・4エーセスのプロット自体、ダイ・バーノンの創案になるもので、名著「スターズ・オブ・マジック」に発表されました。
スターズオブマジックに発表された手順は、この本の中ではマニアックなほうで、大御所Jean Hugardから奇術としての良さを殺しているマニアックな作品だと批判を受けたぐらいです。
確かにマニアックかも知れませんが、スターズオブマジックに発表されたものは、手法の面ではまだ合理的というか無理が無く、一般客相手に見せることも想定された手順です。
しかしこのAces in Exelsisは違います。
スローモーション・4エーセスを知っているマジシャンを引っ掛けるための作品で、そのための工夫が随所に見られます。
マジシャン・フーラーとしてのダイ・バーノン
ダイ・バーノンといえば、奇術史に残る名作傑作を数多く残しており、それらは独創的なアイデアや無駄のない技法など、まさに名作としての風格に満ち満ちたものです。
しかしバーノンは別の顔も持っており、奇術を知り尽くしたマジシャンを引っ掛けるための作品も、数多く発表しているのです。
その中でも、スローモーション・4エーセスに関してそういう趣向を徹底したものが、Aces in Exelsisです。
スターズ・オブ・マジックに発表されたダイ・バーノンのスローモーション・4エーセスは有名であり、カードマジックを本格的にやっている人なら誰でも知っていると言えるでしょう。
Aces in Exelsisはその手順を熟知した人を引っ掛けるためのもので、普通のスローモーション・4エーセスに使われている技法を、あえて強調した動作が多く含まれています。
たとえば、実際には4枚しかカードを持っていないのに、バックルカウントを行っているふりをしたりなど。
バーノンは普通のスローモーション・4エーセスの後に続けて、このAces in Exelsisを演じることもあったそうです。
私のAces in Exelsis
以前のサイトを運営していたときに、このAces in Exelsisの、明らかにマジシャンのみを対象としたような要素は省いた手順を演じて動画にしていました。
今回久しぶりにこの手順を追ってみて、多少異なるアイデアも浮かびましたので、新たに演技動画を撮ってみました。
今回の演技でも、明らかな対マジシャンのムーブは省いています。
しかし、それぞれのエースを全てダイレクトに技法を使って移動させるという点は、オリジナルのままです。
通常のスローモーション・4エーセスでは、最初にエースを並べる時点で1枚または2枚程度のエースを別のカードにすりかえて、後の移動の部分の負担を少なくしています。
しかしこのAces in Exelsisでは、演者の技術的負担を度外視して、最初にクリーンにエースを置くことが出来るのが特徴ですね。
困難な技法を、いかに技法の匂いを無くして実行するかというテーマにも挑んでるようで、技法の練習曲のような奇術でもあります。
まあ一般人相手にこの奇術を演じる意味はあまりないでしょう。
普通のスローモーション・4エーセスとの違いが分からないと思いますし、マジシャンの技術的負担が大きいですね。
まあ、その負担をあえて喜ぶマニア心を満たしてくれる作品ではありますが・・・
Aces in Exelsisを学ぶことの出来る本など
Aces in Exelsisは、”The Vernon Chronicles” Vol.1 に解説されています。
またこの本には、普通のスローモーション・4エーセスについても、”Stars of Magic”に発表されたものとは異なる、オリジナルのハンドリングが解説されています。
以前にこの記事で書いたように、Cutting the Acesについても”Stars of Magic”に発表される以前のオリジナルバージョンが載っています。
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