「カードマジック事典」より、ラリー・ジェニングスの”Tell Tale Aces”を紹介します。
「カードマジック事典」の目次での記載名は、「客のカードと入れ替わるA」です。
これはカードマジックの世界でホフジンサー・プロブレムと呼ばれるテーマのマジックで、他のマジシャンによる同じようなプロットの作品が多数存在します。
わたし自身もオリジナルバージョンをいくつか作っています。
カードマジック事典に掲載されているホフジンサー・プロブレムの作品は、この”Tell Tale Aces”だけのようです。
プロブレムとは
マジックの世界においてプロブレムとは、マジックの方法を示さずに客から見た現象だけを提示し、その解決法を他のマジシャンに求める、というものです。
カードマジックのプロブレムの中でも最も有名なのが、このホフジンサー・プロブレムで、Kurl Fulvesによって奇術雑誌「Epilogue」の誌上で提起されました。
ホフジンサーの名前が付いているのは、このプロブレムが元々、ウィーンの天才奇術師ホフジンサーのメモの中にあったからだと言われていましたが、どうも最近の調査ではホフジンサー自身のメモにはこのようなものは無かったとも言います。
しかしその来歴はともかくとして、現在でもなお、カーディシャンの心をとらえて離さないテーマのひとつであるのは確かです。
ホフジンサー・プロブレムとは
このプロブレムの骨子は、4枚のエースのうち、客の選んだカードと一致するマークのAだけが裏返り、さらに、客のカードそのものに変化するというものです。
カード当てのマジックに、意外な交換あるいは変化現象を組み込んだもので、シンプルな中にもドラマティックな意外性のある、優れた現象です。
ラリー・ジェニングスの”Tell Tale Aces”
それでは、”Tell Tale Aces”の動画を作成しましたので、こちらをご覧下さい。
いつものごとく、なるべくカードマジック事典に忠実であることを心がけた演技としています。
この作品の現象を正確に追うと、
1枚のAが裏返る→ジョーカーがAに変化→客のカードはAの間から
ということで、ホフジンサー・プロブレムの一般的な変化現象とも交換現象とも、微妙に異なる現象となっています。
この手順で一番独特なのは、エースをデックの角に突き出した状態で持って、1枚ずつ示してゆくムーブでしょう。
この操作は普通はアトファス・ムーブかその系統の技法が使われることが多いのですが、ここではあえて異なるムーブを用いています。
これはダイ・バーノンによる技法で、うまく行えばパケットの一部を入れ替えたことは気づかれない、優れたムーブだと思います。
また、なるべくカードマジック事典の通りに演じたと述べましたが、一番最後の「ジェニングスのリバース」の箇所では、自分のやり易さを優先して、Christ Twistと呼ばれるハーフパスの動作と同じような、デックの回転操作を入れています。
Tell Tale Acesを学ぶことのできる本など
ラリー・ジェニングスのTell Tale Acesは、「カードマジック事典」に解説されています。
172ページの「客のカードと入れかわるA」がそうです。
また、この奇術の解説の原典は「Dai Vernon’s Ultimate Secrets of Card Magic」という洋書に載っています。
この記事へのコメントはありません。