カードマジックにおいてコレクターという現象はメジャーなものですね。
数枚(基本的には4枚)のカードの間に、それぞれ1枚ずつのカードが挟まれて出現するというものです。
今回ご紹介するインターレースト・バニッシュは、その逆バージョンとも言うべき現象の作品です。
インターレースト・バニッシュが初めて発表されたのは、ハリー・ロレイン発行の奇術誌”Apocalypse”の創刊号です。
リセットやヴィザー・ツイストなどとともに、初期のポール・ハリスの評価を決定付けた代表作のひとつだと思います。
インターレースト・バニッシュの現象
”逆コレクター”と紹介しましたとおり、インターレースト・バニッシュの現象は、4枚の絵札の間に挟んだ3枚のエースが消失する、というものです。
動画を作成しましたので、よろしければご覧ください。
この作品の肝は、ファンにした絵札の間にエースを挟んでゆく部分の説得力と、絵札の間に裏向きのエースがあることを確認した直後の消失の鮮やかさでしょう。
原案では絵札をファンにして入れている箇所を、別のやり方で演じるバリエーションもありますが、やはり原案のファンにして入れるやり方が説得力が高いような気がしています。
また、オリジナル手順では4枚目の赤いエースがまったく別のところ、例えばカードケースの中などから出現するという形になっています。
Youtube上にこの作品の動画がいくつかありますが、そのやり方の演技が多いです。
しかし私のイメージとしては、これはリセットと対になる手順なのです^^;
わたしが最初にこの作品を知った「松田道弘のカードマジック」にもそういう形で書いてありましたし、20年ほど前に通っていたマジックショップのマジシャンにインターレーストバニッシュのことを尋ねたときも、「ああ、あれはリセットの後にやるマジックだね」とおっしゃっていました。
つまり最初から絵札4枚とエース4枚の8枚を出した状態から始めることとなり、そうするとカードケースの中から出すというのは自然に行うことが難しくなってしまうというわけですね^^;
私が演じたインターレースト・バニッシュについて
動画の演技は基本的に原案を踏襲していますが、多少わたしなりにアレンジした部分もあります。
それについて説明いたします。
最後のエースの取り出し
最後のエースを他の場所から出すことが難しいから、仕方なく動画のようなやり方で演じている、というわけでは必ずしもありません。
わたしの個人的な感覚としては、ラスト1枚を特別な場所から出さないほうがいいのではないかというのがあるのです。
この1枚がサインされたカードであれば、それはまた違った感覚になるかも知れません。
それであれば、この1枚だけが密閉された箱やサイフから出てきても不自然はないでしょう。
しかしとくにサインされたわけでも指定されたわけでもない、単なる4枚のうちの1枚だけが、特別な場所から出てきたからすごいでしょう!というのは、なんだかマジシャン側の都合を押し付けているような気がしてならないのです。
ケースや財布から出すのならば、エース4枚とも出したい。
それが難しいのならば、4枚とも普通にデックから出てくるのでいいじゃないか。
これがまあ、今のところの私の感覚です。
それと、このマジックの最大の見せ場はやはり挟んだエースの消失ですから、出現の部分をあまり仰々しくしたくないというのもあります。
同じ理由で、エースの出現部分には、あまりフラリッシュ的な出し方はあえて取り入れていません。
最後のエースの消失
それともうひとつ、原案と異なる点は、4枚目のエースの消失です。
原案では、このカードはエース以外のカードへの”変化”となっています。
エースだと思われていたカードが、エースではないカードに変化したのだから、エースは消えてしまった、という表現ですね。
わたしも長年これで演じていましたが、やはり消失は消失で統一させたい、と最近は思うようになってきました。
そういうわけで、この部分にテントバニッシュを使用してみましたが、いかがでしょうか^^
この方策によって、パケットとデックの持ち替えが少なくなったという副次的効果もあったかな、と思っています。
インターレースト・バニッシュの文献資料等
インターレースト・バニッシュのポール・ハリスによるオリジナルを解説した日本語の文献は、わたしの知る限りでは少なくとも2つあります。
この作品が最初に解説されたのはハリー・ロレインによるアポカリプスだと述べましたが、これの邦訳版が出ています。
ユニコン・エンタープライズという会社による出版で、わたしの手元には第12号までの翻訳版があります。
13号以降も翻訳されたのかどうかは分かりません。また、このユニコンという会社も今はもうないようですので、アポカリプスの邦訳版も今から入手はなかなか困難かも知れません。
もうひとつは、マジックランド社から出ていたポール・ハリスのレクチャーノートです。
これも、発行年が書いてないのでいつのものか分かりません。20年以上前のものなのは間違いないですが・・・
オリジナル手順ではない文献としては、松田道弘氏がいくつかバリエーションを発表されています。
ひとつは、「松田道弘のカードマジック」に掲載された”私のインターレースト・バニッシュ”、もうひとつは「松田道弘のシックなカードマジック」に掲載された”シンプリファイド・インターレースト・バニッシュ”です。
後者はシンプリファイドの名のとおりかなり単純化されて、別の奇術のような印象にさえなっています。
DVDでは、スターズ・オブ・マジックシリーズのポール・ハリス1巻に解説されています。
余談
いつもそのときの記事に合うようなイメージ画像をヘッダーに用いるために作成しているのですが、今回は意外に手間がかかりました^^;
4枚の絵札にはさまれた3枚の裏向きカードが、徐々に薄くなって消えゆくようなイメージを作ろうと決めて作業に取り掛かったのですが・・・
完成品はここにあるような画像なのですが、これがなかなかに強敵でして。
カード全体が薄くなるような画像なら簡単に作れますが、挟まれた3枚のカードだけが薄くなっているというのが意外と難しくてね。
4枚のクイーンの位置を一寸たりとも厳密に動かさずに、3枚のバックのカードがある画像とない画像を撮影できれば簡単なのですが、なかなか手作業ではクイーンの位置を厳密に固定することも出来ないわけで・・・
まあ具体的な作業手順は、写真のデジタル加工の専門的な話にもなってくるので詳しくは申しませんが、この画像だけでたぶん1時間近く時間かかったのではないかと思います。
デジタル加工の玄人なら簡単な話かも知れませんが、あくまで素人が適当な知識でやってるもので^^;
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