ダイ・バーノンによるカードマジックの古典、トライアンフは、現在でも多くのマジシャンに愛され、演じられ、バリエーションが作られています。
今回ご紹介の、ダローによる「ダブル・ダズリング・トライアンフ」も、数多あるトライアンフのバリエーションのひとつです。
手順によっては、かなり原案の形から離れている作品も多い中、「ダブル・ダズリング・トライアンフ」は比較的原案に近いハンドリングの作品です。
かつて故マーカ・テンドー師が、テレビスペシャルの中でこの作品を演じられていましたので、それを記憶されている方もいらしゃるでしょう。
この作品はダローの初期の代表作のひとつで、時期的には以前紹介したカードボード・カメレオンなどと同時期のものです。
彼が1978年のIBM大会で、1位を獲ったときのアクトを構成した演目のひとつです。
ダローの「ダブル・ダズリング・トライアンフ」
では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。
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一般にマジック大会でのコンテストアクトと言えば、入念に準備された2重3重のどんでん返しやクライマックスで盛り上げる、という構成が、ある種の特徴と言えます。以前にご紹介したポール・ガートナーの“That’s Ridiculous”などもその典型例のひとつでしょう。
この「ダブル・ダズリング・トライアンフ」のトリプル・クライマックスも、そのようなコンテスト向けの特徴が色濃く出た構成ではあります。
しかしこの作品は、日常演じるマジックとしては確かに豪華な部類ではあるものの、奇術的な意味での日常感覚からは逸脱していない印象があります。レギュラーデックで演じられる構成だからということもあるでしょうか。
上で述べたような、コンテストアクト特有の特徴というのは、ダローの時代よりも現代のほうが強く求められるようになってきているようにも思えます。言葉を変えて言えば、コンテストアクトにおける日常からの乖離が強くなっていると言いましょうか。
もちろん、マジックに関して「何が日常的マジックか」「何が新奇な要素か」と言った感覚も変遷してゆくものではあります。上で述べたようなことも、現在だから思うことであって、30年前には「ダブル・ダズリング・トライアンフ」も奇術的日常を超えていると見なされたのかも知れません。
閑話休題。
いずれにしても「ダブル・ダズリング・トライアンフ」は、少なくとも現代では、コンテストではない日常のシーンで演じるマジックとしても、十分適する良さがあると思います。
ただ、やっぱり元コンテストアクトというだけあって豪華な構成ですから、通常演じるマジックとしてはクライマックスに近い位置に持ってくるのが良いでしょう。少なくとも、これの後にまた別のカードマジックを演じるというのは似つかわしくない気がします。
デビリッシュ・ミラクルの記事でも書きましたが、2枚のカードを同時にドラマチックに当てる奇術というのは、そんなに多くはない印象です。この意味でも、この作品は私のお気に入りのひとつです。
技術的には、ダイ・バーノンのトライアンフ原案と同程度です。
最近ではトライアンフにZ-Shuffle(一部略した表現です)を用いる方も多いですが、そのやり方で「ダブル・ダズリング・トライアンフ」を演じることも出来ます。原案にしろバリエーションにしろ、トライアンフを演じている方であれば、すぐに演じることが出来ると思います。
ただ、少々準備が必要な作品ですので、借りたデック等ですぐに演じるというわけには行きません。
この作品の前段階の準備が自然に完了する作品、例えばホワン・タマリッツの”Neither Blind Nor Stupid”の後に演じるなどすれば、効果的かも知れません。
ダローの「ダブル・ダズリング・トライアンフ」を解説した文献等
この作品は日本語では、高木重朗著のレクチャーノート「だろーのカード奇術」に掲載されています。
日本語以外では、この作品のみの解説書がダローによって販売されているほか、元々はJeff Busbyによって刊行されていた「Epoptica」という雑誌に掲載されたようです。
映像では、Stevensの「Greater Magic Video Library Vol. 07 – Daryl」に、ダロー本人による演技・解説があります。
このトライアンフは、ボクが知ってるトライアンフのなかでも一番好きなトリックです。ただバラバラのカードが元に戻るだけでなくそのあとの展開に驚かされるからです。ボクはダローのマジックが大好きで、このトライアンフも前にshanlaさんが記載されている通り、そのビデオも見たことがあります。そこではダローのcoinmatrixなども見られました。しかしこのトライアンフはそのなかでも最高のものでした。またこれからも、ダローの記事を沢山載せて下さい。
コメントありがとうございます。
あのビデオは素晴らしいものでした。コインアセンブリも、ある意味で何の変哲もない?ような普通の手順でしたが、自然に出来て実用的なやり方でした。
でもあのビデオのジャケットでは、どう見てもカードボードカメレオンのセットを持っている写真が使われているのに、ビデオの内容には含まれて居なかったんですよね。
ダローは好きなマジシャンですので、今後も取り上げる機会はあると思います。