コインマジック

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「コンバージェンス」高木重朗 “Convergence” Shigeo Takagi 高木重朗氏の独特なコイン・アセンブリー

高木重朗氏によるコイン・アセンブリーの作品、「コンバージェンス」を紹介いたします。

 

高木重朗氏は日本奇術界の大功労者というべき人物で、現在の日本人マジシャンのほとんどが何らかの影響を受けていると言っても過言ではないでしょう。

 

残念なことに高木氏は1991年に61歳の若さで逝去されており、もはや没後20年になりますので、氏のことをあまり知らない方も多くなっているだろうとは思います。
そういう私自身も1991年時点ではまだマジックに本格的に漬かり始めて数年といったところでしたので、実際にお会いしたことはありません。
現在の若いマジシャンには、「カードマジック事典」の編纂者としての認識が先に来るかも知れませんね。

 

高木氏はクロースアップマジックからステージ・サロンまでオールラウンドにこなされた方ですが、私にとってはやはりクロースアップマジックの印象が強いですね。
中でもコイン・アセンブリーは、氏が「愛しいクロースアップ・マジック」を5つ選択された中の筆頭に挙げられています。(マジェイアさんのサイトの紹介記事参照

 

「コンバージェンス」を紹介します

高木重朗氏のコインアセンブリー、「コンバージェンス」は、この種の手順の中ではかなり独特な味わいを持つ佳品です。

 

まずはよろしければ私の実演動画をご覧ください。

 

4枚のコインを使う一般的なコイン・アセンブリーでは、少し前に紹介したマトリクスのようにカードを4枚使うものと、カードを2枚だけ使うものが多い印象です。

 

そしてカード4枚使用手順では、コインの移動現象を見せる際には単にカードを持ち上げて示す形が多く、あまりコインを拾い上げて手で握ったりはしません。
それに対してカード2枚のバージョンでは、一般的にはもう少し手先の技を見せる場面が多くなる傾向にあります。

 

しかしこの高木氏の手順では、カードを4枚使いながらも、一般的なカード2枚手順よりも手先で魅せる場面が多いですね。
さらに、カードは単にコインをカバーする役目だけではなく、コインを拾い上げる手段として、またお呪いの用具として、多くの役割を与えられています。
カードとコインと両手で織り成す、この細やかなハンドリングの妙こそが、この手順を際立たせている特徴だと思います。
その分、表現の仕方がなかなか難しい手順でもありますが。

 

この手順のバリエーションが、アール・ネルソンによって演じられたのをテレビ番組で観たことがあります。
ゆっくりと優雅な動きで、音楽に乗せて演じられたコイン・アセンブリーは、不思議さよりは美しさが前面に感じられるような演技でした。
アール・ネルソンの発表文献としてはこの手順を解説したものを知りませんが、間違いなく高木氏の手順のバリエーションだと思います。

 

アール・ネルソンの演技では最後の飛行の扱いが高木氏のオリジナルとは異なっており、上の私の動画では実際にはこちらの方法を採っています。

 

 

「コンバージェンス」を解説した書籍等

 

「コンバージェンス」はリチャード・カウフマン著”Amazing Miracles of Shigeo Takagi”に解説されました。
この本はアメリカでの出版後まもなく邦訳され、東京堂出版から「高木重朗 不思議の世界」と題して出版されました。
ただし現在は絶版ですので、現時点では古本を買い求めるしか入手手段はなさそうです。
高木重朗の不思議の世界(Amazon)

 

上記書籍とは多少異なるハンドリングの手順が、松田道弘著「夢のクロースアップマジック劇場」に解説されました。

こちらの本では、洋書版では”Convergence”であったものにiの字を1文字入れて、”Coinvergence”と題されています。

 

また、映像では「高木重朗 コイン」というDVDに、本人による演技と解説が収録されています。

その他、「European Coin Magic Symposium Vol.3」というDVDに、カードカレッジの著者ロベルト・ジョビによるこの手順のバリエーションが演技・解説されています。

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コメント

    • 峯崎浩一
    • 2012年 12月 30日 6:54pm

    「高木重朗の不思議の世界」は所持してますが、この作品は知りませんでした。
    (読み飛ばしたのか忘れたのか・・)後で本棚から出してみます。(^^;
    Shanlaさんのサイトは記憶の奥に忘れた物を思い出させてくれるので非常にありがたいです。

      • Shanla Type2
      • 2012年 12月 30日 7:55pm

      個人的に思い入れのあるマジックを、今まで知らなかった人に紹介するというのも当サイトの目的ですが、同時に忘れていたものを思い出させるというのも意図したところといいますか、そうあればいいなと思っております。
      ですから、実際にそのようにおっしゃっていただけるのは大変嬉しいです。
      「高木重朗の不思議の世界」からはゆくゆくは他にも色々紹介したいですねえ。
      ソリッドカップなどもやってみたいのですが、いかんせん道具がなくて・・・^^;

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