オープン・トラベラーとエアロダイナミック・エーセス “Open Traveler” and “Aerodynamic Aces”

オープン・トラベラーとエアロダイナミック・エーセス

ラリー・ジェニングスの代表作のひとつに、オープン・トラベラー”Open Traveler”という奇術があります。

 

エースのカードが1枚ずつ、見えない飛行をするという、4エースアセンブリのテーマのひとつですが、オープン・トラベラーでは使用するカードを見かけ上4枚のエースだけに絞って見せるという、いわばミニマル・エースアセンブリとも言うべきものとなっています。

 

マニアックなテーマではありますが、見た目は普通のエースアセンブリよりもクリーンで分かりやすく、一般観客にも受けやすいマジックだと思います。

 

オープン・トラベラーとは

通常の4エース・アセンブリでは、エースの上に何枚かのカードを配って、そのパケットの中でエースが消失したという表現が多いです。

 

しかしオープン・トラベラーでは、エース以外のカードを使わないため、パケットの中に埋没させて消すというやり方が基本的に使えません。

1枚のカードを、テクニックを使って文字通り消失させるということで、普通の4エース・アセンブリよりは難易度の高い手順となっています。

 

インビジブル・パーム

オープン・トラベラーでは、エースを消失させて、再びリーダーのエースの上で出現させるわけですが、その演出として「見えないパーム」という説明がされることが多いです。

元祖ラリー・ジェニングスもその演出でやっています。

 

この場合、エースが消えるのではなく、手の中に隠してみせる技法を説明するという見せ方です。

そして、隠した状態で手の裏表を見ても完全に見えない。

しかしちゃんと隠していたという証拠として、それをテーブルに置くと、また見えるようになるというわけです。

一般観客相手にも受ける、面白い演出だと思います。

 

この演出により、このマジック自体が「インビジブルパーム・エーセス」”Inbisible Palm Aces”と呼ばれることもあります。

ポール・ハリスなどがその名称のバリエーションを発表しています。

ラリー・ジェニングスによって発表された当初はオープン・トラベラーという名称でしたが、後年はジェニングス自身もインビジブルパーム・エーセスと呼ぶのを正式としていたようです。

 

私のオープン・トラベラー

では、わたしが演じているオープン・トラベラーをご覧下さい。

 

 

以前のホームページを運営していた頃にも、オープン・トラベラーの動画を公開していたのですが、そのときとは微妙に異なるハンドリングとなっています。

 

手順の最初にエキストラカードをアディションするところなどは、フランスのマジシャンであるArnaud Chevrier氏の方法を参考にしています。

 

また、最初に1枚を消した後の残り2枚のあらために、天海スプレッドを使ったのは、今回初めて取り入れてみたアイデアです。

ダミコ・スプレッドでもいいのですが、天海スプレッドのほうが片手で出来る分、クリーンに見えるような気がします。

いかがでしょうか。

 

ラスト1枚に関しては、ラリー・ジェニングスの原案ではここだけデックを取り上げるというやり方になっているのですが、恐らく多くのマジシャンが感じているとおり、それまで一切使っていなかったデックをいきなり取り上げる不自然さが、やはり嫌いです。

 

今回の動画では、フランスのBernard Billisのバニッシュを取り入れています。この部分は以前公開した動画でも同じでした。

 

囲まれたり横に人がいる状態では使えませんが、私の好きなオープン・トラベラーのラストのひとつです。

 

エアロダイナミック・エーセス(カードマジック事典版)

オープン・トラベラーは多くのマジシャンの創作意欲を刺激し、たくさんのバリエーションが発表されています。

その中でも日本でよく知られているのは、ブルース・サーボンのエアロダイナミック・エーセス”Aerodynamic Aces”でしょうか。

カードマジック事典に載っているので、よく知られているのかも知れません。

 

今回、エアロダイナミック・エーセスの動画も作成してみましたので、オープン・トラベラーと見比べてみてください。

 

 

オープン・トラベラーでは、パームなどの技法を駆使することにより、リーダーのパケットとまだ移動していないエースが近づかないように見えるように構成されています。

 

しかしその分難易度が上がるのも事実で、エアロダイナミック・エーセスは1回の移動ごとにパケットを合わせるハンドリングにより、技術的に少し易しくなっています。

 

この記事はカードマジック事典で学ぶ人の助けとなることも意図していますので、上の動画ではあえて自分のアレンジなどを入れずに、なるべくカードマジック事典の通りにやってみました。

 

ダミコ・スプレッドしたパケットをそのままテーブルに置くところが、なかなか難しいですね。

この部分は難しければ、ビドル・グリップなどに持ち替えて置いても構わないと思います。

 

その他のオープン・トラベラーのバリエーション

その他に有名なバリエーションと思われるものは、ポール・ハリスの”World Invisible Palm”などがあります。

 

最近邦訳されたラリー・ジェニングス作品集である「ラリー・ジェニングス カードマジック」(”Jennings ’67″の邦訳)には、何と6種類ものインビジブルパーム・エーセスのバリエーションが解説されています。

彼の思考や経年による趣向の変化などが見て取れる、面白い本です。

 

オープン・トラベラーを学ぶことの出来る本など

ラリー・ジェニングスのオープン・トラベラーの原案は、加藤英夫著「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」に解説されています。

 

またエアロダイナミック・エーセスについては、「カードマジック事典」に解説されています。

(4枚のA ④という題名)

 

ジェニングスによる多数のバリエーションが、「ラリー・ジェニングス カードマジック」に解説されています。

 

その他松田道弘氏によるバリエーションが、「松田道弘のカードマジック」、「トリックカード事典」、「現代カードマジックのアイディア」などに解説されています。

「現代カードマジックのアイディア」に載っているオープン・トラベラーズ・プラスはなかなかスマートで面白いです。

 

DVDでは、ラリー・ジェニングスの「Thought on Cards」に入っているオープン・トラベラーの演技が秀逸です。

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コメント

    • ハセタカ
    • 2013年 11月 17日

    先日、「ラリージェニングス カードマジック」を読んだのですが、
    オープントラベラーはエド・マーローの作品だと書いてあったのですが、
    みなさんなぜラリー・ジェニングスの作品だとおっしゃっているのですか?
    本には、「オープントラベラーズ」はジェニングスの作品だったような気がしたのですが。
    しかし、shanlaさんの手順からしてジェニングスの方の作品だと思われます。
    どちらが正しいのですか?
    あとマーローのオープントラベラーはどういうものなのですか?

    • お返事が遅れまして。
      雑誌「New Phoenix」は持っておりませんので、マーローのOpen Travelerを実際に確認することは出来ていません。
      しかし、「ラリージェニングス カードマジック」の記載を読む限りでは、ジェニングスがこのプロットを組み立てる際に、マーローのOpen Travelerの記憶を元にしたということらしいです。
      実際には中身はかなり異なる手順で、現在行われている形のこの手順、少なくとも「見えないパーム」の演出のものは、ジェニングスが起源と考えて良さそうです。

      しかし、少なくともOpen Travelerの名前を最初に使ったのはマーローであり、そのへんでジェニングスとマーローの間に確執があった。
      それにより、ジェニングス自身は最終的に自分のこのプロットを総称して、オープントラベラーではなくインビジブル・パーム・エーセスと呼びたいようです。
      しかしまあ、オープントラベラーという呼称も、これはこれで人口に膾炙しているので、我々がこのプロットをそう呼んでも間違いとは言えないでしょう。

      ちなみにマーローの手順は、ジェニングスのものとはかなり異なるようです。
      「ラリージェニングス カードマジック」から読み取った限りの印象では、ですけど。
      まず、”見えないパーム”の演出は使わない。
      それから、リーダーのところに置くエースは、1枚と見せかけてトリプルを置く。(←ここがかなり特殊な感じがします)
      ラストのエースの移動には、デックからのフラットパームを使用する。(ビル・マローンの手順にそんな感じのものがあるが、もしかするとここからのアイデアかも?)
      「余分なカードを使わない」というのは、見かけ上4枚だけとして演じるという意味なのか、それともエキストラ無しの正真正銘4枚だけということなのか、あの記述からだけではちょっと不明瞭な感じです。

      エキストラ無しだと、リーダー位置にトリプルを置いてしまうと、残り1枚しか無くなり無理があります。そう考えるとエキストラ有りのほうが可能性高そうですが。

      まあいずれにしても、現在演じられている所謂オープントラベラーというのは、マーローではなくジェニングスの作品と考えて間違いないと思います。(呼び方の問題はありますが)
      マーローのものは、それに多少の影響を与えた源流作品というところですかね。

      いずれ機会があれば、「New Phoenix」を入手して確認してみたいところです。
      ビル・ミーゼルの作品もこれに載っているらしいですしね。

    • ハセタカ
    • 2013年 12月 03日

    なるほど。
    ここまでのわかりやすくてすばらしい説明、
    ありがとうございました。

    • 峯崎浩一
    • 2014年 3月 07日

    マーローのOpen Travelerですが、日本語文献として
    麦谷眞里「実践カードマジック事典」に載ってますね。
    その他にもいろんな記述があって面白いです。

    • その本は持ってはいますがあまり読んでおらず、盲点でした。
      ご教示ありがとうございます。
      確かに麦谷さんの文章は、松田さんの本とはまた違った味のある記述で、面白いですね。

    • 2015年 5月 11日

    貴殿の動画を見て自分もやってみたくなり「カードマジック辞典」を見ながら挑戦しました。
    ちょっとわからなかったことも動画を見て理解できました。ありがとうございます。

    • ありがとうございます。
      拙い動画ですが、文章だけでは分かりにくいことを理解する助けに、多少なりとも役立てば幸いです。

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  • @WaterMalleable マジレスしますと、P, GertnerのSteel and silverは大好きな本です。お持ちかも知れませんし、DVD化もされてるので新味に欠けるかも知れませんが。結構、Effect is everything的な既知外さがあって好みです
    about 3週 ago
  • @WaterMalleable パラパラと流し読みしただけですが、私もパドルが一番気になって作ってみたいと思いました。作ってませんが。
    about 3週 ago
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    about 3週 ago

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