「スローモーション・4エーセス」ダイ・バーノン “Slow-Motion Four Aces” by Dai Vernon

slow motion four aces

スターズ・オブ・マジック掲載のダイ・バーノンのカードマジック作品のひとつ、スローモーション・フォア・エーセスです。

 

スローモーション4エーセスといえば、以前に”Aces in Exelsis“を紹介いたしましたが、今回の手順も見た目の現象は同じものです。

 

4枚のエースを使って、リーダーのAの位置に他の3枚が集合する、一般的なエース・アセンブリの現象ですが、スローモーションの名前のとおり、一枚移動するごとにリーダーパケットを確認して見せます。

 

“Aces in Exelsis”との違いは、あちらの手順が完全にマニア騙しを意図したもので、一般人相手には不要なムーブがてんこ盛りであるのに対して、今回ご紹介の手順はきちんと一般客に演じるマジックとして適正化されており、比較的無理のないものです。
“Aces in Exelsis”はむしろ今回の手順をベースとしており、この手順を知っている人を引っ掛けるために作られた手順と言えます。

 

 

スローモーション・4エーセスの内容

ではまず動画を作成しましたので、よろしければご覧ください。

>>動画リンク<<

 

このようにリーダーカードを演者側に置き、他3枚を前方に並べる形式は一般に「Tフォーメーション」と呼ばれており、このレイアウトのアイデアもダイ・バーノンの創案によるものです。
リーダーとそれ以外のパケットを明確に差別化出来、移動が明確になるレイアウトです。
今日では、スローモーションのみならずエース・アセンブリ全般において一般的に使われるレイアウトのひとつとなっています。

 

なお、冒頭でスターズ・オブ・マジック掲載の手順と書きましたが、動画で演じたのは正確に言いますと、それ以前に考案された初期バージョンというべきものです。
スターズ・オブ・マジックはどちらかと言えば初心者から中級者を対象とした位置づけの教材でした。
その方針に従って、ダイ・バーノンの作品ではオリジナルよりも幾分易しい手法に変えたものが解説してあるものが多いです。
以前に紹介したカッティング・ジ・エーセスがそうでしたが、スローモーション・フォア・エーセスについても同様の方針が採られています。

 

具体的には、最初にエースをレイアウトする部分の手順と、ラスト3枚目のエースの移動方法が異なっています。
とくに最初のレイアウト手順については、解説を読むと一見複雑な動きをしているような印象を受けますが、実際に手を動かしてみると、非常に繊細な配慮が行き渡った手順であると実感させられます。

 

ラスト3枚目の移動の手法は、”Aces in Exelsis”で採用されているものと同じ方法ですね。
これはバーノンのお気に入りの方法だったのだろうと思われます。

 

スローモーション・フォア・エーセスへの批判

さて、そもそもエース・アセンブリの分野にスローモーション・アセンブリという概念を持ち込んだのはバーノンであるとされています。
元々の形は、1枚移動するたびにその都度リーダーパケットを確認することはせず、まず子分の3枚のエースが順番に消えたことを示した後、最後にリーダーパケットを示すというものです。

 

これに公然と批判を加えたのが、”Expert Card Technique”などの名著で知られる奇術界の大御所、ジーン・ヒューガードです。
マジックの重要な価値のひとつに意外性が挙げられますが、スローモーション・フォア・エーセスはこれを毀損しているという主張です。

 

つまり、1枚目の移動を見せた後は、2枚目、3枚目が同じように移動するだろうというのは、通常の知性を持つ観客ならば誰でも予測できることです。
このように予定調和を見せるような形は、エース・アセンブリの本来の良さを殺しているということですね。

 

この種の批判に対応するような形で、スローモーション・フォア・エーセスからさらに発展した手順もいくつか発表されています。
主なところでは、ロジャー・スミスの”O’ Henry Four Aces”や、そこからさらに発展させたダーウィン・オーティスの”Hitchcock Aces”などがあります。
これらの手順は、スローモーション・フォア・エーセスのラスト3枚目の移動部分での予定調和を破ることで、意外なクライマックスに導くものとなっています。

 

しかし個人的には、予定調和で終わる普通のスローモーション・フォア・エーセスにも、独特の良さはあるように思えます。
もちろん演じる立場での喜びみたいなものもあるわけですが、それだけではなく観客から見た演目としての良さもあるように感じられるんですよね。
何というか、ある種の様式美を見せる芸能、とでも言うべきでしょうか。

 

ただやっぱり、受けや驚きといった要素で比較するならば、”O’ Henry Four Aces”や”Hitchcock Aces”のほうが上だろうとは思います。

 

 

スローモーション・フォア・エーセス解説文献

元々の手順はスターズ・オブ・マジックに掲載されました。
これはRRMCから日本語訳出版されましたが、部数限定でしたので今からの入手はなかなか困難と思われます。
英語版であれば、現在でもマジックショップ等で入手は可能です。

 

また今回ご紹介しました手順はスターズ・オブ・マジック掲載のものとは異なる、初期バージョンですが、これについては”The Vernon Chronicles vol.1″に掲載されています。

 

スローモーション・フォア・エーセス自体のその他関連作品としては、「カードマジック事典」にニック・トロストによる簡略化された手順が解説されています。

 

<12.30補足:峯崎浩一さんからの情報>
元々VIDEONICSから出ていたものをL&L Publishing社がリメイクしたDVD「バーノン・リベレーションズ」のVol.1&2において、このスローモーション・4エーセスが取り上げられているようです。
これは近年スクリプト・マヌーヴァ社により日本語化されています。
実演はカードの名手スティーブ・フリーマン、解説はダイ・バーノン自身ということで、現在日本語で入手しやすいこの手順の解説としては、これが一番学びやすいと思われます。
峯崎さんありがとうございました。

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コメント

    • 峯崎浩一
    • 2012年 12月 30日

    スローモーション・4エーセスはDVD「ヴァーノン・リベレーションズ1&2巻」の中で、スティーブ・フリーマンが演じ、それをバーノン自身が解説しております。
    日本語で理解できるものは書籍よりも、このDVDが最適かと思われます。

      • Shanla Type2
      • 2012年 12月 30日

      なるほど、そういえばリベレーションズが日本語になっていましたね。
      その巻は見ていませんが、リベレーションズで取り上げるからにはスターズ・オブ・マジック版ではなく初期バージョンなのでしょうね。
      確かに現在入手容易な日本語資料としては、それが最適でしょう。
      本文にも補足させていただきたいと思います。
      貴重な情報をありがとうございました。

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  • @KotouchiS また、件の見せ方自体を"Freeman Display"と呼ぶようでもありますね。 https://t.co/LvGvhyhdKo フリーマンのムーブ自体の正確な形が分からず、メンドーサのノート自体も持っていませんので、詳しいことは分かりませんが……
    about 5日 ago
  • @KotouchiS 調べてみると、確かにフリーマンという情報もありますね。 MagicCafeの下記ページでは、フリーマンの技法だけども、彼は発表しなかったとあります。 https://t.co/AhvfATlMkP
    about 5日 ago
  • @rouis_ymgs @KotouchiS @Seven_Magica ここの動画の冒頭で行われているプロダクションがそうではないでしょうか。 https://t.co/83hzgvDaf7
    about 5日 ago

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